岩谷産業が東京電力(富津火力発電所)からLNG供給を受け、首都圏・北関東を中心に年内販売開始

 岩谷産業は、東日本でのLNG(液化天然ガス)の販売を開始する。東京電力(株)よりLNGの供給を受けることで既に合意しており、販売先との最終調整を経て年内には富津火力発電所から、岩谷産業のLNGローリーによるサテライト供給(※1)を開始する予定。

 岩谷産業のLNG販売はこれまで西日本に重点を置き、電力各社との合弁により販売基盤の拡大と供給ノウハウの蓄積をはかってきた。今回は岩谷産業単独での販売となり、東京電力(株)よりLNGの供給を受け、今後は東日本での販売基盤の確立をはかる。


【事業展開について】

 東京電力からのLNG供給に伴い、東部では既にリンテック(株)(千葉工場)、東京製綱(株)(土浦工場)等複数の企業と供給に向けた交渉を進めており、既に数千トンの契約を締結した。年内には販売を開始する予定で、2008年度には年間で合計10,000トン程度の供給を目指す。

 岩谷産業(合弁会社含む)のLNG販売数量は、西日本エリアにて既に年間約20万トンに上る。今回のエリア拡大によって供給エリアは従来の愛知・北陸以西に加え、首都圏、更に静岡から北関東までが視野に入る。

 

【岩谷産業のLNGローリー供給事業への取り組みと位置づけ】

 日本国内のエネルギー供給は、規制緩和を背景とした法改正により電力・都市ガスといった競合業界からの相互参入が可能となりつつあり、それに伴い使用者のエネルギー選択の自由度が拡大している。

 このような環境の下、岩谷産業ではクリーンエネルギー供給の観点で、顧客に最適な提案をはかるため、従来のLPガス事業に加え、LPガスと同様にCO2排出量の少ないLNGの拡充に努めてきた。

 LNG供給はこれまで、都市ガス事業者主導による導管での供給が一般的だが、岩谷産業を含めた他業界からの参入により、LNGをローリーで直接需要家へ供給するという、より効率的な供給方法が新たに確立されている。

 岩谷産業では、既に数年前より電力会社他との合弁により、LNGをローリーによってサテライト供給する会社を3社(※2)設立しており、いずれも順調に実績を伸ばしている。また、本年5月31日には、天然ガス供給会社「甲賀エナジー(株)」(※3)が稼動した。

 今回の東日本への進出は、岩谷産業が目指すエネルギーのトータルサプライヤー「総合エネルギー企業」へ向かっての大きな一歩となる。


【低温ガスの輸送、貯蔵、供給、保安をグループ内で完結】

 LNGローリー供給事業における岩谷産業ならではの強みとして、産業ガス事業で培った低温ガス輸送・貯蔵・保安技術に関するノウハウを有している点がある。LNG輸送はマイナス162度のLNGを扱うため、低温ガス輸送のノウハウが欠かせない。

 岩谷産業は、空気を深冷分離した、液化酸素・液化窒素・液化アルゴンやヘリウム他を輸送してきた実績を生かし、他社に先駆けローリーによるLNG供給を行っており、既に専属の物流子会社にてLNGローリーを数十台保有している。

 また、グループ内に低温貯槽製造事業(※4)も持ち、サテライト供給先へのLNG貯槽の設置工事も担う。加えてこれらサテライト設備の検査保守においても、グループ内に国の「指定保安検査機関」としての資格を有する会社を持ち、LNG供給において国内でも希な、調達から輸送、貯蔵、供給、保安をすべてグループ内で完結できるネットワークを確立している。

 

■参考
※1 サテライト供給
使用者の供給地区内にローリーで輸送されるLNGの受入、貯蔵、気化のできる設備を設置し、供給を行う方法。

※2 LNG販売会社の概要
(1)エル・エナジー株式会社
関西電力(株)との合弁(2000年設立)
事業内容:LNGの直接供給

(2)株式会社エル・エヌ・ジー中部
中部電力(株)、コスモ石油(株)との合弁(2000年設立)
事業内容:LNGの直接供給

(3)北陸エルネス株式会社
北陸電力(株)、中部電力(株)、新日本石油(株)との合弁(2001年設立)
事業内容:LNGの直接供給
 
※3 甲賀エナジー株式会社
関西電力(株)、甲賀協同ガス(株)との合弁(2005年設立)
事業内容:LNGの直接供給 1.2万トン/年(見込み)
       LNGの卸供給   0.3万トン/年(見込み)

※4 低温機器製造事業の概要
2005年、ジャパン・エア・ガシズ(株)の関係会社であるエーテック(株)と、岩谷産業のグループ会社で同事業を行っていた岩谷瓦斯(株)香川工場を統合し、新会社を設立。事業内容は低温液化ガス用貯槽、低温液化ガス用ローリー、低温容器等の製造および関連サービス。