世界初の超電導電力機器冷却用ターボ冷凍機の販売を開始

 大陽日酸はネオンガスを冷媒に使用し、超電導電力機器を-200℃以下まで冷却可能な「ターボ冷凍機」を開発し、販売を開始した。

 省エネルギー電力技術の切り札として期待されている超電導電力機器が実用化研究の段階に入り、超電導電力機器の冷却に適した冷凍機のニーズが高まっている。実用の超電導電力機器を冷却する為に用いられる冷凍機の運転温度域は-200℃近傍で、冷凍能力は 2 kW~10kW と考えられている。しかし、現在市販されている小型冷凍機は冷凍能力が1kW 以下であり、また摺動部を有するために定期的なメンテナンスが必要となる。
 大陽日酸では、空気分離装置や各種液化機をはじめとする低温関連機器の製作・運転により培った技術をもとに独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「イットリウム系超電導電力機器技術開発(平成 20~24 年度)」プロジェクトに参画し、超電導電力機器の冷却に適した長期間メンテナンスが不要となる 2kW 冷凍機を開発した。本冷凍機は上記プロジェクトにて世界初の 2MVA 級超電導変圧器の冷却に使用され、通電実験の成功にも貢献した。

 本装置はネオンガスと磁気軸受の採用により、効率と信頼性を向上させた冷凍機で、ネオンガスを冷媒とした世界初の超電導電力機器冷却用の冷凍機となる。特に冷凍機のメンテナンス性を考慮し、ターボブレイトンサイクルを採用した。
 今回、ヘリウムガスより重い分子量を持つネオンガスをターボ冷凍機の冷媒に採用することにより、回転機器の効率と信頼性を向上させた。また、本冷凍機の主な構成機器であるターボ圧縮機、膨張タービンには磁気軸受を採用。磁気軸受は電磁力にて回転軸を空中に浮上させる軸受であり、回転軸と軸受の機械的接触がないことにより、回転機器のメンテナンスフリーを実現している。
 さらに従来、冷凍能力の調節は冷凍機内に設置された電気ヒータの加熱により行われていたが、本冷凍機ではターボ圧縮機の回転数を制御することにより冷凍能力を調整できるようになった。これにより、減量運転時における効率が大きく向上した。

 超電導ケーブルをはじめとする超電導電力機器開発プロジェクトが世界的に活発化しており、今回の冷凍機を世界に先駆けて商品化することは、超電導電力機器の実用化を推し進めるうえで大きな意義がある。2013年度末には長距離送電用ケーブルの冷却に適した 10kW級ターボ冷凍機を開発し、商品ラインアップの充実を図る。

注)ターボブレイトンサイクル
 基本のブレイトンサイクルは、①断熱圧縮、②等圧冷却、③断熱膨張、④等圧加熱の4つの過程により寒冷を発生する。この過程①と過程③に回転機器(ターボ圧縮機、膨張タービン)を採用したサイクルがターボブレイトンサイクルとなる。
 ターボ圧縮機で圧縮されたネオンガスは圧縮熱を大気へ放散した後、膨張タービンにて断熱膨張を行い、ネオンガスの温度が低下する。その後、周囲の熱を吸収して、ターボ圧縮機の吸い込み口に還流される。実際の冷凍機には、ターボ圧縮機と膨張タービンの間に熱交換器が挿入され、膨張タービンで発生される冷熱を回収することにより、極低温を生成する。