岩谷産業と東邦ガス、愛知県豊田市に商用実証水素ステーションをオープン

 岩谷産業は、参画する水素供給・利用技術研究組合※1(略称:HySUT)と独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究(地域水素供給インフラ技術・社会実証 技術・社会実証研究)の一環として、愛知県豊田市に充填圧力70MPaの水素ステーションを東邦ガスとともに建設し運用開始した。

 今回の「とよたエコフルタウン※2水素ステーション」は、HySUTの組合員である岩谷産業と東邦ガスが、両社のこれまでの技術開発成果と運用の知見を活用して建設した。同ステーションには、国内最大級となる直充填方式*3の大流量圧縮機が組み込まれたドイツ・Linde製パッケージ型水素ステーションを導入することで、利便性向上・省スペース・低コスト化を図り、燃料電池自動車(以下、「FCV」)と燃料電池バス(以下、「FCバス」)への充填を通じて、今後の商用水素ステーション整備に向けた総合的な実証を行う。

 岩谷産業は同ステーションにおいて、大流量圧縮機、冷却装置など主要機器を組み込んだパッケージ本体、高圧水素ガスを貯蔵する蓄圧器など高圧ガス設備、保安関連設備、および充填制御などを担当する。工業用圧縮水素・液化水素については製造から供給・保安まで一貫した全国供給ネットワークを築いており、水素ステーションについても東京・大阪・福岡に続き、今回で4大都市圏の全ての地域で運営に携わることになる。

 「とよたエコフルタウン水素ステーション」は、環境モデル都市・豊田市にて燃料電池自動車普及の先進的モデルとして、環境のまち、くるまのまち、における低炭素社会のまちづくりに貢献するとともに、2015年の水素ステーションと燃料電池自動車普及開始に向けて大きな役割を果たす。

とよたエコフルタウン水素ステーション

※1:岩谷産業を含む民間企業・団体により、水素ビジネスの事業化に向けた供給安定性、経済合理性、環境性等の検証を目的に設立された技術研究組合

※2:豊田市では、最先端の環境技術開発に取り組む企業や市民と連携し、活力ある低炭素社会に向けた取り組みを推進。低炭素社会のモデル地区である「とよたエコフルタウン」は、最新の環境技術や次世代交通技術、スマートエネルギー体験などの取り組みを「見える化」する施設として2012年5月18日にオープンした。今回の水素ステーションは、「とよたエコフルタウン」の新施設としてオープンしたもの。

※3:直充填方式とは、水素圧縮機からFCVへ直接圧縮水素ガスを送り込む方式

【概要】
 2015年頃からのFCVの一般ユーザー向け発売開始に向け、岩谷産業を含むエネルギー会社各社は、2011年1月に共同声明を行い、2013年度から4大都市圏を中心に全国約100ヶ所のステーション整備を発表した。本水素ステーションは、この先行整備に先立ち、代表的な商用仕様水素ステーションのモデルの一つとして、コスト低減の見通しの把握や開発技術の性能評価等を行う。また、豊田市が実施する低炭素社会への取り組みと連携し、市内を走行するFCバス等への充填を行うなど、理解促進活動も進める。

【主な実証項目】
①パッケージ型ステーションによる設置面積縮小化・短工期・低コスト化
②FCVおよびFCバス向けの大容量・直充填技術の評価
③普及に向けた理解促進活動

【設置場所】
 愛知県豊田市元城町3丁目11番地(とよたEcoful Town内)

【設備フローと主な仕様】
 都市ガスから水素を製造し、充填装置(大流量圧縮機)、ディスペンサを経て、FCVおよびFCバスに水素を充填する。

主な仕様

原料・供給方式都市ガス・オンサイト方式
充填圧力・充填方式70/35MPa、直充填方式
圧縮機能力最大2,000Nm3/h
特徴

・FCVおよびFCバス向け直充填方式

 ・パッケージ型水素ステーション