大陽日酸、低温焼結可能な高純度銅ナノ粒子を開発

 大陽日酸は、低温で焼結可能な高純度銅ナノ粒子の開発に成功した。銅ナノ粒子は、プリンテッドエレクトロニクス技術を応用した微細配線向けや、パワーデバイス等の半導体接合用途でのニーズが高まっている。従来は銀粒子が用いられていたが、コストダウンを目的に銅への代替検討が活発化しており、200℃以下の低温下で焼結し、高い導電性を得ることができる銅ナノ粒子が求められていた。

 一般的な銅ナノ粒子は、湿式法で合成されており、粒子表面が有機膜で保護された分散液で販売されている。この有機保護膜により、銅ナノ粒子の酸化を防止できるが、焼結が阻害されるため、高い導電性を得るためには保護膜を加熱・除去する必要がある。
 有機保護膜を除去し、焼結させるためには 300℃以上に加熱する必要があり、同じ用途で亜酸化銅ナノ粒子も販売されている。亜酸化銅ナノ粒子は、酸化物であるために大気中で安定だが、高い導電性を得るためには粒子内部まで還元する必要があり、従来の焼成設備では短時間で安定的に焼結させるのは困難だった。

 大陽日酸は、独自開発した酸素燃焼による金属ナノ粒子の合成技術を有しており、この技術は、バーナを用いて LNG などの燃料を酸素不足の状態で燃焼させ、還元雰囲気に制御した火炎を発生、その中に 10μm 程度の金属酸化物などの粉体を投入し、加熱・還元・蒸発・再凝集させることで金属ナノ粒子を合成する、世界で初の技術となる。
 火炎中を還元雰囲気に制御し、金属酸化物の還元反応を利用することで金属の蒸発を促進し、さらに、酸化を抑制した金属ナノ粒子を効率的に連続合成することができる。また、バーナの燃焼条件を変えることで、金属粒子のサイズを 30nm~150nm まで精密にコントロールすることができ、従来のナノ粒子合成技術と比較して、極めてシンプルな全乾式合成プロセスで大量のナノ粒子を低コストで合成することができる。
 大陽日酸の合成プロセスで製造した銅ナノ粒子は、酸素濃度が2%程度で、表層に5nm 程度の亜酸化銅被膜を有する粒子(乾粉)で、大気中で比較的安定にハンドリング可能な高純度銅ナノ粒子となる。この銅ナノ粒子は、窒素をベースに水素が2~3%の濃度の雰囲気で焼成することで、表面の亜酸化銅が還元され、150~200℃の温度で 10 分間程度の加熱により、良好に焼結を行うことができる。これにより、従来の銅ナノ粒子あるいは亜酸化銅ナノ粒子と比較して、低温下での安定した焼結が可能になった。

 大陽日酸は、山梨研究所内に銅ナノ粒子専用製造ライン(生産量:数百 g/時)を設置し、サンプル供給体制を構築済みで、一部顧客ではサンプル評価が進んでいる。銅ナノ粒子の実用化を促進すべく、今後も要望に応じたサンプルの試作・提供を行い、銅ナノ粒子の本格的な事業化を進めていく。