自励振動現象を応用した酸素富化燃焼バーナ 「Innova-Jet ® Swing 」販売開始

 大陽日酸は、流体の自励振動現象を応用して火炎をスイングさせることにより、広い範囲を効率良く均一加熱できる革新的な酸素富化バーナ「Innova-Jet ®Swing 」を開発し、電炉製鋼プロセスにおけるタンディッシュ予熱向けに販売を開始した。

 酸素富化燃焼は、空気燃焼に対して高い火炎温度が得られるとともに排ガスによる熱損失を低減できるため、省エネルギーおよび炭酸ガス排出量の削減に貢献する技術として各種燃焼アプリケーションに用いられている。その一方で高い火炎温度により局所的に高温になりやすく、温度分布を均一にコントロールする高い技術が求められる。
 大陽日酸では自励振動現象を応用し、この課題を解決する全く新しいコンセプトの酸素富化燃焼バーナ「Innova-Jet®Swing」を開発したもの。

 自励振動現象とは、流体が附近の壁に沿って流れる「コアンダ効果」に、流体を壁から引きはがす力を励起する特殊なノズル構造を組み合わせる事で、外部からの操作なしに自発的に流体が振動する現象。この現象をバーナに応用することで火炎の向きを周期的に変化させ、火炎により加熱できる領域を拡大することができる。また本バーナでは機械的な駆動部を必要としないためシンプルなバーナ構造をとることができ、メンテナンス性にも優れる。
 大陽日酸では、安定した自励振動火炎を得るためにバーナ構造を最適化し、最大で 60°まで火炎をスイングすることができるバーナの設計技術を確立した。このことにより、火炎が直進する従来のバーナに比較しておよそ 2 倍程度の面積を効率よく均一加熱することが可能となった。

 「Innova-Jet® Swing」の適用対象の一例としては、製鋼プロセスにおけるタンディッシュの予熱が挙げられる。タンディッシュとは、連続鋳造工程(溶鋼を連続的に鋳型に流し込み、徐々に凝固させ成型する工程)において溶鋼を流し込む前に溜める容器のこと。タンディッシュは横長で底の浅い構造を持ち、通常、溶鋼を注ぐ前にバーナで 1000℃以上に予熱して使用する。
 火炎が直進する従来のバーナでは横長形状の炉を均一に加熱することが難しく、特に酸素富化燃焼バーナでは、火炎温度が高いためにバーナ直下の底面が局所的に高温となり、従来の空気燃焼バーナでは問題にならなかった炉壁の焼損による寿命の低下が課題だった。
 大陽日酸では、タンディッシュを模擬した試験設備を用いて、「Innova-Jet® Swing」の効果について検証試験を実施。タンディッシュを模した容器の底面の温度を測定した結果、従来のバーナでは比較的大きな温度分布が生じるのに対し、「Innova-Jet® Swing」では、火炎が広範囲にスイングするため温度がより均一となり、局所的な高温領域も解消されることが明らかとなった。

 大陽日酸ではこれまでに実機のタンディッシュにおいて複数の実証試験を行い、従来の空気燃焼バーナに比較して燃料使用量を 40%削減する結果を得ている。同時に燃料の使用量減少に伴う CO2 排出量の削減も実現した。
 この他にも、「Innova-Jet® Swing」は従来の酸素富化バーナでは対応できなかった広範囲の均一加熱を要求するアプリケーションでの使用を可能とし、省エネルギーや炭酸ガス排出量削減に貢献する技術として、鉄鋼、ガラス・セラミックス分野を中心に技術の展開を進める。