世界で初めて熱可塑性ふっ素樹脂(PCTFE)への導電性付与を実現

 大陽日酸とダイキン工業のグループ会社の東邦化成は、大陽日酸が持つ「長尺カーボンナノチューブ(CNT-uni®)/以下、CNT」、「ふっ素樹脂への CNT 均一複合化技術」と、東邦化成が持つ「ふっ素樹脂の成形加工・応用技術」を持ち寄り、これまで機能性付与が困難であったふっ素樹脂(PCTFE/ポリクロロトリフルオロエチレン)に対して、世界で初めて安定的な導電性と優れた耐薬品性・クリーン性を付与した高機能ふっ素樹脂(トーフロン®PCTFE(帯電防止・導電性グレード))を共同で開発した。
 高洗浄度・高耐薬品性が求められる半導体製造装置関連や薬液供給関連をはじめとした最先端分野に対して、本製品を用いた帯電防止・導電性部品(加工品)の受注対応を2017 年 12 月より開始する。

 従来のカーボン材料(カーボンブラックや炭素繊維)を添加した複合樹脂材料は、半導体部品、自動車部品など多くの産業分野での利用が期待されているが、帯電防止や熱伝導性の向上のため、カーボンブラックの場合 5~30 重量%程度添加する必要があった。このため成形体の加工不良や割れ、樹脂本来のしなやかさが損なわれるだけでなく、半導体分野においてはカーボン材料の脱離等による異物混入に加えて、機械的特性・耐薬品性の低下に対する懸念があり、半導体洗浄装置分野への採用に対しては課題が多かった。
 大陽日酸は高アスペクト比、高純度、高結晶、高電気伝導性を備えた高配向多層 CNT及び CNT 分散液の製造を行っており、さらに各種樹脂材料に対して極めて低い CNT 添加量を均一に分散させることで安定的に導電性を付与する技術を有している。
 東邦化成はふっ素樹脂全般の成形・加工では、成形が困難とされる PCTFE 樹脂の取扱いを 1956 年の創業当初から行っており、成形加工に対して様々な応用技術と経験を持っている。
 今回、東邦化成が得意とする PCTFE 樹脂成形技術に、大陽日酸の CNT 及び CNT 均一分散技術を掛け合せることで、半導体製造装置市場をはじめとする従来の帯電防止・導電性ふっ素樹脂で課題であった「高機械的特性」「高清浄度(クリーン度)」「高耐薬品性」を実現した材料および成形体の開発に成功した。


 2020 年度 50ton/年を目標に、CNT と PCTFE の複合材である高機能ふっ素樹脂と半導体製造装置部品向け成形・加工の製造体制の整備を行うと同時に、様々なふっ素樹脂に対して高機能性を付与する技術・用途開発を共同で進め、半導体の更なる高性能化(微細化、三次元化)に伴う課題を解決し、半導体産業の発展に取り組む。