業界最高水準の高耐熱性能を有する汎用フッ素ゴム(FKM)製のOリング開発

 エア・ウォーター子会社で、Oリング等のシール材を製造・販売するエア・ウォーター・マッハ(本社:長野県松本市、代表取締役社長:都築 康彦)は、汎用フッ素ゴム(FKM)と、スーパーグロース法による日本ゼオン社製の単層カーボンナノチューブ「ZEONANO® SG101」(以下SG101)を複合化することで業界最高水準の高耐熱性能を有する汎用フッ素ゴム(FKM)製のOリングを開発することに成功した。製造・販売元となるエア・ウォーター・マッハが、2018年10月からサンプル供給を開始し、2019年1 月から量産を開始する。

 近年、化学プラントなどでは、工業プロセスにおける生産効率向上のため、プラント稼動温度の高温化が進んでおり、各部品にかかる耐熱性向上のニーズが高まっている。また、自動車のモーターや発電機のタービンなども小型化や高出力化に伴い、より高温の環境下で使用されるようになってきており、シール部材であるOリングにも高い耐熱性能が求められている。
 耐熱性能が求められるOリングの材料としては、150℃から 200℃までの温度域では、汎用フッ素ゴム(FKM)が利用され、200℃を超える高温域では、特殊なフッ素ゴムであるパーフルオロエラストマー(FFKM)が利用されるのが一般的だった。FFKMは、化学的に安定した構造であることで高い耐熱性や耐薬品性を有している一方、FKMに比べて非常に高価(FKMの100 倍以上)であることが欠点となる。
 こうした背景から、FKMの耐熱性能を向上させることで経済性と高耐熱性を両立したOリングを開発し、製品化することが市場から強く望まれていた。

 従来品である汎用フッ素ゴム(FKM)製Oリングの耐熱性能は200℃前後だが、今回の開発品は、250℃の使用環境下においてもOリングとしての基本特性である圧縮性能や力学的強度等を保持し、安定したシール性能を発揮する。
 また、従来品は、これらの温度域においてグリースなどを塗布できない使用環境下の場合には、金属製ハウジング部品との粘着・固着現象が発生することが大きな課題となっていた。粘着・固着現象は、Oリングの交換時の煩雑さ(固着破損ゴムの除去や掃除)に加え、特に、Oリングの開閉動作を伴う可動部のシール材として使用した場合には、粘着・固着現象の発生が開閉動作の不安定化や動作不良を招く原因となっていた。今回の開発品は、これら現象の発生を大幅に抑制する機能を有している。
 さらに、今回の開発品は、高い導電性能を有していることから、静電気が発生する使用環境下においても、静電気による異物付着を防止するとともに、静電気放電(ESD)による影響が低減される。

 今回開発したのは、化学的還元性能が高く、電気・熱導電性能などの単層ナノチューブが持つ優れた特性を最大限に活かすため、これをできる限り均一に汎用フッ素ゴム(FKM)に分散させる複合化・加工技術(混錬・シーティング・成形)となる。SG101 の持つ優れた酸化防止機能(ラジカルトラッピング効果)によって、フッ素ゴムの熱劣化(軟化劣化)を防ぐとともに、CNT繊維質が金属製ハウジング部品への粘着・固着性の低減に効果を発揮する。

【 Oリング】
 O型をしたゴム製の密封(シール)用機械部品。機械への油、水、空気、ガスなど多様な流体の進入を防止し、内部の流体が外に漏れないようにシールする目的で使用される。シール部分を運動用(パッキン)と固定用(ガスケット)に分類することもある。Oリングはそのどちらの目的にも用いられることがある汎用性の高いシール部品。市場に流通しているOリングは、サイズの違いも含めておよそ2 万種あり、この内、良く利用されているのは約8,000 種。Oリングの材料は、用途によって様々な材質のゴムが使用されるほか、金属や樹脂などとの複合製品も多数ある。

【スーパーグロース法】
 2004 年、産総研畠賢治博士らによって見出された単層カーボンナノチューブの合成手法。化学気相成長(CVD)法を用いた単層カーボンナノチューブ合成法であり、高温に加熱した加熱炉内で単層カーボンナノチューブを合成する際に、水分を極微量添加することにより、触媒の活性時間および活性度を大幅に改善した方法。従来の 500 倍の長さに達する高効率成長、従来の2,000 倍の高純度単層カーボンナノチューブを合成することが可能である。さらに、配向性も高く、マクロ構造体も作製できる。

【カーボンナノチューブ】
 カーボンナノチューブ(CNT)は、炭素原子だけで構成される直径が0.4~50 nm の一次元性のナノ炭素材料。その化学構造は、グラファイト層を丸めてつなぎ合わせたもので表され、層の数が 1 枚だけのものを単層カーボンナノチューブと呼び、グラファイト層の巻き方(らせん度)に依存して電子構造が金属的になったり半導体的になったりする。