大陽日酸 市原裕史郎社長 CEO 2019年 年頭の辞

新年明けましておめでとうございます。

昨年の当社をとりまく環境を振り返りますと、年初から前半にかけての経済環境は比較的良好で、国内企業の設備投資も堅調に推移しましたが、年の後半に入ると、国内では豪雨・台風・地震などの自然災害により経済にもマイナスの影響が出ました。海外では、米国経済は好調を維持していますが、米中の貿易問題によるグローバル経済への影響が懸念されています。また、好調だった半導体産業にも減速感が出てきました。こうした世界経済の不透明感はしばらく解消されない可能性がありますが、IoTの普及やAIによる技術革新が経済成長の牽引役として期待され、省力化・効率化を促進するための設備投資などは底堅く続くと見ています。

当社は、昨年12月3日に米国Praxairの欧州事業買収を完了しました。未参入地域であった欧州で一定規模の高収益な事業を獲得し、日本、米国、アジア・オセアニア、欧州というグローバルな4極体制が整いました。この買収により、当社はグローバルで3位の企業とほぼ肩を並べる規模となり、世界のトップ4としてグローバルメジャーの仲間入りを果たしました。今後は、グローバル企業としての規模とネットワークを活用して、連結業績の更なる拡大を目指していきます。

2018年3月期から開始した中期経営計画「Ortus Stage 2」では、今回の買収により事業規模が大きく拡大するため、数値目標を変更する予定です。ただし、計画の基本方針や重点戦略に変更はなく、今期も着々と進めています。国内では、グループ連携強化によりお客さまの課題を解決するという「Total TNSC」のコンセプトが浸透してきており、国内ガス事業の拡大に取り組んでいます。メディカル事業では買収による事業基盤の強化・事業領域の拡充を進め、生産・物流部門では、生産工場での操業最適化やロジスティクスの合理化により、コスト低減の成果をあげています。

海外でも投資による事業密度の向上、事業領域の拡大を進めています。米国では新規に獲得したオンサイトでのガス供給を開始しています。さらに、昨年12月13日に公表のとおり、Lindeの米国におけるHyCO事業の一部と関連資産を買収する契約を締結しており、HyCO事業に本格的に参入していきます。アジア地域では、中国・韓国で電子材料ガスの生産能力増強を進めており、東アジアの半導体産業での需要を獲得していきます。

また、「ガスを売ることは、安全を売ること」の精神に則り、技術力・保安力の向上、産業事故防止と技術伝承の推進を目指し、昨年6月、新たな技術教育の拠点「テクニカルアカデミー」を開設しました。保安に関する意識や知識、リスクへの感性を高め、グループ全体の技術力向上と安全文化の醸成を進めていきます。