エア・ウォーター子会社のアエラスバイオ、歯髄幹細胞を用いた再生医療事業へ参入

 エア・ウォーターは、2018年8月に設立した歯髄関連事業を企画・推進するための子会社、アエラスバイオを中心に、2019年度より歯髄幹細胞を活用した歯髄再生治療の事業化に着手する。本事業化への取り組みは、「先端医療技術(再生医療・細胞治療等)の早期実現化」として、関西イノベーション国際戦略総合特区の認定プロジェクトに認定され、エア・ウォーターは2019年2月28日に神戸市から特定国際戦略事業者として「指定法人」の指定を受けている。

歯髄幹細胞を用いた再生医療事業の概念図
歯髄幹細胞を用いた再生医療事業の概念図

 細胞培養を利用した再生医療は、近年各方面での研究開発が進み、細胞を用いた肉体の部分損傷を回復する治療では、PRP(多血小板血漿)治療や軟骨細胞を培養した膝関節の軟骨再生治療が実用化されるなど、着実に成果を上げ、新しい医療分野として注目されている。

 エア・ウォーターの医療関連事業は、医療用ガスをはじめ、病院設備工事や医療機器、病院業務のアウトソーシング受託といった医療機関向けのビジネスを中心に成長してきたが、近年では、こうした高度医療分野にかかる事業基盤を強化する一方で、高齢化社会の進展に伴い今後成長が期待できるくらしの医療分野への事業領域の拡大にも注力している。

 2011年に歯科用機器、理化学機器の製造・販売を行う株式会社デンケン(現 デンケン・ハイデンタル株式会社)を子会社化して歯科事業に本格参入し、2016年には、歯科クリニック向け歯科診療用品の通信販売最大手の歯愛メディカル株式会社の株式40%を取得し、同社に資本参加した。さらに2018年には、グループの北海道エア・ウォーターが、道内中心に歯科技工全般、歯科医院に関する材料・金属・器具の販売を行う株式会社デンタル・ラボラトリーの親会社であるSDL・HD(札幌デンタルグループ)とも資本業務提携を行うなど、歯科事業の拡大を図ってきた。

 今回、医療関連事業のさらなる事業成長を目指し、歯髄幹細胞を用いた再生医療事業に参入する。

 歯髄幹細胞とは、歯の中心にある神経に含まれる細胞で、血管や神経を作るのに有利な幹細胞が多く含まれていることから、血管新生・神経再生・歯髄再生を促進することが期待される。歯髄再生治療は、自らの不要歯から歯髄を採取し、その中に含まれる歯髄幹細胞を培養増殖し、虫歯や歯髄炎などで神経を喪失した歯に移植することにより歯髄を再生する治療。

 エア・ウォーターは、2018年4月より歯髄幹細胞の取り扱いに関する共同研究を国立研究開発法人国立長寿医療研究センターと開始しており、2019年5月16日に開館する「国際くらしの医療館・神戸」内に、細胞培養を行うアエラスバイオの「特定細胞加工製造」設備と歯髄再生治療の臨床研究を行う歯科医院「再生歯科クリニック」を設置する。
 クリニックの院長には、歯髄再生研究の第一人者である元国立長寿医療研究センター研究所 幹細胞再生医療研究部長の中島美砂子氏を迎え、歯髄再生治療の臨床研究を実施し、歯髄再生治療の安全性、有効性の検証を進める。

 アエラスバイオでは、2021年に歯髄再生治療の事業を開始し、初年度の売上高は、約3億円を予定する。歯髄再生治療の事業化においては、グループのデンケン・ハイデンタルや歯愛メディカルが取り扱う機器や材料を活用するとともに、歯愛メディカルの顧客である国内6万施設の歯科医院や口腔外科とのネットワークを活用し歯髄再生治療法を広め、歯髄幹細胞の培養・加工・保存をアエラスバイオが受託することで事業拡大を目指す。

 将来的には、歯髄再生分野では、歯髄再生だけでなく、象牙質再生、完全に失った歯の再生治療まで事業分野を拡大するとともに、歯髄細胞培養の技術を核として、歯髄保存事業、医科(脳梗塞治療等)への適用拡大も視野に事業領域の拡大を目指す。

【アエラスバイオ株式会社 会社概要】

  • 会社名 :アエラスバイオ株式会社 (英語表記:Aeras Bio Inc.)※社名は、「エア」のラテン語「アエラス」に「生体=バイオ」を掛け合わせたものを意味する。
  • 所在地 :兵庫県神戸市中央区 港島南町1丁目6番地5
  • 代表者 :代表取締役社長 菊地 耕三
  • 事業内容:歯髄幹細胞加工製品(培養・保管・輸送等)事業、口腔ケア商品の開発・販売
  • 資本金 :14.28百万円 (エア・ウォーター 70%、歯愛メディカル 30%)
  • 設 立 :2018年8月1日(水)
  • 従業員数:15名