カイロス、8K手術用ビデオ顕微鏡システム「マイクロ エイト」を開発

 エア・ウォーターのグループ会社で、高精細な8K 映像技術を応用した医療機器を製造・販売するカイロス株式会社(代表取締役社長・CEO 中辻 博、以下:カイロス)は、新技術を搭載した8K 手術用ビデオ顕微鏡システム「マイクロ エイト」を開発し、2019 年9 月2 日(月)より販売を開始する。

8K手術用ビデオ顕微鏡システム「マイクロ エイト」
8K手術用ビデオ顕微鏡システム「マイクロ エイト」

 エア・ウォーターの医療関連事業は、手術室やICU 等の高度医療設備工事に加え、その周辺機器、医療サービス等を総合的に提案することで、周術期(※1)医療分野での事業拡大に取り組んでいる。8K 映像技術を応用し、世界に先駆けて 8K 硬性内視鏡カメラを製品化したカイロスと 2018 年 2 月に資本業務提携を行い、同年7 月より子会社とし、周術期医療事業の強化・拡大を図ってきた。

 「手術用顕微鏡」は、微小な血管や神経、リンパ管の吻合(※2)等の微小外科手術(マイクロサージャリー)に不可欠な医療機器として、その市場は今日まで世界的に拡大している。そして近年、がんの手術などで切断されたより微小なリンパ管等を吻合する超微小外科手術(スーパーマイクロサージャリー)が行われ始めている。

 こうした中、カイロスは 8K 映像技術を応用するとともに、新開発の技術により 3D を使用することなく自然な立体視を実現し、70 インチ8K 大型モニターと組み合わせることにより、頭を上げたままの姿勢で手術を行うことができる、8K 手術用ビデオ顕微鏡システム「マイクロ エイト」を開発。形成外科、脳神経外科、心臓外科等に対応する医療機関を中心に販売を開始する。

 また、8K 高精細顕微鏡の技術は、手術以外にも病理検査や再生医学など幅広い応用が見込まれており、さらには、医療分野に留まらず、製品の品質・精密検査等の用途として産業分野でも多岐にわたる需要が期待されている。

 カイロスでは、8K 高精細顕微鏡の技術を応用し、将来は、医療分野だけでなく、産業分野での活用も視野に入れ事業展開を図る。

※1 周術期:入院、麻酔、手術、回復といった患者の術中だけでなく前後の期間を含めた一連の期間 ※2 吻合(ふんごう):分離している血管や神経をつなぎ合わせること

製品の主な特長

  1. ミクロンの世界を可視化
     ハイビジョン(2K)の16 倍の情報量を持つ高精細な8K 映像技術により、毛髪(70μm)の1/10 の大きさの被写体を可視化。これにより、細胞レベルまで精細に観察することが可能となり、微小血管やリンパ管の吻合など、難易度の高い手術や治療がより安全にできるようになる。また、焦点距離の異なるレンズを術式に合わせて交換することで、より高精細な画像で超微小外科手術(スーパーマイクロサージャリー)が可能になる。さらに、こうしたことにより、これまで優先されがちだった「確実な治療」と同等に、「術後のQOL(生活の質)」もより高められることが期待される。
  2. 新規開発の技術による立体視と深い焦点深度
     8K カメラと被写体との距離・角度・光源を、緻密に計算された適正な位置に調整し、単眼ながら8K 高精細画像の立体視を実現した。8K 高精細画像が持つ「臨場感・実物感」の特長を活かし、意図的に影を作り立体感を創出し(ドロップシャドー効果)、3D メガネを使用せずに自然な立体視が可能。また、高精細で浅くなりがちな焦点深度も、軸を一定角度に傾斜させることにより深度を深めることに成功した。
  3. 大画面を見ながら、頭を上げたままの姿勢で手術が可能
     執刀医は、大型モニターを見ながら、頭を上げたままの姿勢で手術を行える。接眼レンズを長時間覗く姿勢を強いられないため、首や肩・腕など身体への負担が軽減され、手術の質を確保できる。さらに、執刀医と医療スタッフ等が、大画面を共有することで、術中の細かい注意点を視覚的に学ぶことが可能になり、研修医や学生に対してより効果的な教育も行うことが可能となる。

製品概要

  1. 製品名称:マイクロ エイト※商標出願中
  2. 一般的名称:可搬型手術用顕微鏡
  3. 販売名: 高精細手術顕微鏡 V1
    ※2と3は「医療機器製造販売届出書」記載の名称
  4. 医療機器届出番号:13B2X10311000003
  5. 販売目標:3 年間で100 台(レンタル含む)

臨床医のコメント

(1)光嶋 勲氏(広島大学病院 国際リンパ浮腫治療センター センター長)

 「再建外科領域のマイクロサージャリーは、1965 年、世界に先駆け日本で直径1mm 以下の血管吻合で切断された指の生着(元通りに戻す)に成功したことから始まりました。90 年代には直径0.3mmほどのリンパ管や神経の繊維を繋ぐことが可能となり、リンパ浮腫や神経麻痺の劇的な回復が得られるようになりました。
 8K 手術用顕微鏡は、非常に鮮明な画像が得られ、まさに我々がこれまで行ってきた再建外科領域のマイクロサージャリー、血管吻合、神経縫合、リンパ管吻合を支え、今後のマイクロサージャリー手技の飛躍的進歩に貢献すると思われます。また、従来の顕微鏡手術は、同じ姿勢で長時間顕微鏡を覗くために、術者の首や腕に障害が発生し、ある程度の年齢で手術を断念せざるを得ないという問題がありました。しかし、大画面モニターを見ながら行うこの8K 手術は、多少訓練を要しますが、これからの若い微小外科医たちの首を守るための機器として、日本のみでなく、海外でも大変有用な手術道具になるだろうと確信しています」。

(2)小林 英司氏(慶応義塾大学医学部 臓器再生医学寄附講座 特任教授)

 「見えなかったものが見えるようになったら、縫えなかったものが縫えるようになる。すなわち、治らなかった病気が治せるようになるのではないか?「マイクロ エイト」は、そんな夢を乗せて、カイロスのスタッフと開発しました。同社が、内視鏡外科手術において世界に先駆け実用化していた8K 高画質システム画像の世界と、広く各診療科のエキスパート手術技術として使われてきたマイクロサージャリーの医療技術の世界を産学連携で実現化させました」。

カイロス株式会社の概要

  1. 会社名 :カイロス株式会社
  2. 設立 :2016 年2 月
  3. 所在地 :東京都港区芝2 丁目13 番4 号
  4. 代表者 :代表取締役社長・CEO 中辻 博
  5. 事業内容 :8K 硬性内視鏡カメラ・8K 画像機器及び関連システムの研究開発、製造及び販売
  6. 資本金 :2.5 億円(2019 年3 月末)
  7. 株主構成 :エア・ウォーター株式会社 88.7% その他 11.3%
  8. 従業員数 :30 人

エア・ウォーター株式会社 医療関連事業の概要

 高度化する先端医療の現場である最新の病院設備、医療用ガス供給、病院業務のアウトソーシング受託、設備機器のメンテナンス業務の「高度医療」分野から、デンタルや衛生材料、注射針といった地域のクリニックや在宅医療など生活者により近い「くらしの医療」分野まで、多岐にわたる製品・サービスを提供。2018 年度売上高は1,767 億円で、エア・ウォーターの売上高(8,015 億円)の22%を占める。