大陽日酸、2020年3月期連結決算(国際財務報告基準)

 大陽日酸の2020年3月期(2019年4月~2020年3月)の連結決算は、売上高8502億3900万円(前年同期比14.8%増)、コア営業利益903億3700万円(同37.2%増)、営業利益939億2100万円(同40.5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益533億4000万円(同29.2%増)だった。期末配当は14円とし、年間配当金は28円(前期比3円の増配)。

 当期のグループの事業環境は、米中貿易摩擦などの影響を受け、国内では主要関連業界を中心に生産活動が弱まった。エレクトロニクス関連においては、電子材料ガスの出荷が国内では前期並みだったが海外では減少。一方、米国では製造業の生産活動は底堅く、セパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷は前期並みに推移した。
 しかし、当第4四半期連結会計期間後半から、新型コロナウイルス感染症が世界規模で拡大し、グループにおいても欧州ガス事業とサーモス事業の業績に影響が出た。

セグメント別概況

  1. 【国内ガス事業】産業ガス関連では、主力製品であるセパレートガスの売上収益は、主要関連業界である鉄鋼・非鉄・金属加工・輸送機器及び化学向けを中心に前期に比べ減少した。また、エレクトロニクス関連での電子材料ガスの売上収益は、前期並みとなった。機器・工事では、2018年10月に買収した医療機器販売会社アイ・エム・アイ(株)が収益に貢献した。売上収益は3561億4500万円(前年同期比 2.1%減)、セグメント利益は287億3700万円(同 3.6%減)。
  2. 【米国ガス事業】産業ガス関連では、製造業での生産は堅調であり、バルクガスを中心に売上収益は増加した。オンサイトでは、化学メーカー向け等の新規案件の稼動が開始したことに加え、2019年2月に買収したHyCO事業※の貢献もあり、増収となった。機器・工事では、エレクトロニクス関連での売上収益は減少した。売上収益は1988億6900万円(同 6.2%増)、セグメント利益は、222億6300万円(同 42.4%増)。※天然ガス等から水蒸気改質装置などで分離される水素(H2)・一酸化炭素(CO)を、石油精製・石油化学産業などにパイプラインを通じて大規模供給する事業。
  3. 【欧州ガス事業】スペインではオンサイトのガスが前年を下回ったが、ドイツ、ベネルクス、北欧などでバルクガスを中心に前期の売上収益を上回った。新型コロナウイルス感染症の拡大により、スペイン、イタリアなどでは3月の売上収益が前年同月比で減収となった。売上収益は1655億6400万円、セグメント利益は248億5400万円。なお、2018年12月に米国Praxair, Inc.から買収した欧州事業を前第3四半期連結会計期間より当セグメントで開示。
  4. 【アジア・オセアニアガス事業】産業ガス関連では、バルクガスの売上収益は、主に中国で減少したことに加え、フィリピン、タイでも減収となった。LPガスは、豪州での出荷は堅調。エレクトロニクス関連では、電子材料ガスの出荷は前期を下回ったが、機器・工事が大きく増加し、売上収益は増加した。売上収益は1045億4100万円(同 1.5%減)、セグメント利益は99億5200万円(同 8.8%増)。
  5. 【サーモス事業】国内で前期より新たに投入したフライパンの販売に注力し、売上収益に貢献したが、長梅雨や暖冬などの天候不順の影響により、主力のスポーツボトルや保温弁当箱の販売が低迷し、売上収益は前期を下回った。海外でも、日韓問題、香港でのデモ、米中貿易摩擦などによる景気減退の影響により、工場出荷は前期を下回った。また、当第4四半期連結会計期間の後半には新型コロナウイルス感染症の拡大により、海外の生産工場の稼働停止に加え、国内でのインバウンド需要も縮小し、販売数量が減少した。売上収益は251億1800万円(同 9.6%減)、セグメント利益は72億2400万円(同 21.4%減)。

今後の見通し

 2021年3月期(2020年4月~2021年3月)の連結業績予想は、売上収益8300億円(前年同期比2.4%減)、コア営業利益820億円(同9.2%減)、営業利益820億円(同12.7%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益440億円(同17.5%減)を見込む。配当予想は年間配当28円を維持した。

 新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済の悪化は、第1四半期連結会計期間までは現在の状況が続くものの、第2四半期連結会計期間からは徐々に回復が進み、第3四半期連結会計期間以降はほぼ正常化するものと仮定。新型コロナウイルス感染症の拡大の収束時期が見えない中で、足元の状況などから売上収益の減少リスクを織り込んで作成しているが、実際の業績等は今後の感染症拡大の状況などにより大きく異なる可能性があるとしている。業績予想の前提為替レートは、対米ドルは108円、対ユーロは120円を予想。

 産業ガスおよびハードグッズの売上収益は、第1四半期連結会計期間では前年同期比15%程度の減少、第2四半期連結会計期間では前年同期比10%程度の減少、第3四半期連結会計期間以降は前年同期並みになるものと想定し、コア営業利益への影響額は地域ごとの利益率を勘案して算出した。
 エレクトロニクス関連の顧客の稼働については、現時点においては直接的な影響は大きくないことから、当初の想定どおり、国内などで増収による増益を見込む。
 サーモス事業では、主に国内、中国、韓国で第1四半期連結会計期間を中心に新型コロナウイルス感染症の拡大による業績への影響があるものと想定した。