エア・ウォーター 2021年3月期第1四半期連結決算(IFRS)

新型コロナの影響は5月に底打ち、6月以降回復基調

 エア・ウォーターの2021年3月期第1四半期連結決算は、売上収益1802億5900万円(前年同期比1.7%減)、営業利益87億1900万円(同20.5%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益44億5100万円(同37.7%減)となった。

 エア・ウォーターグループは、新型コロナウイルス感染拡大防止策を徹底し、産業ガスや医療用ガスをはじめとした諸製品の安定供給体制を継続した。また、コロナ禍における市場ニーズの変化に対応するため、次世代通信規格(5G)やIoTを背景に需要が拡大しているエレトクロニクス関連向けの機器・材料や、医療関連事業における感染症対策分野を中心に、高付加価値製品の開発や新たな市場開拓の取り組みを進めた。

 さらに、デジタル化を基軸とした働き方改革や営業改革を進めるなど、コロナショックを契機とする「新常態(ニューノーマル)」に対応すべく、業務改革や企業風土の革新に取り組んでいる。

 また、国内8地域事業会社の業績は、新型コロナの影響を打ち返して着実に成長し、グループの強みである安定性が地域事業の底力として発揮される結果となった。なお、今後の国内における収益力の向上と持続的な成長を牽引する強力な事業基盤を構築するため、本年10月1日付をもって現状の地域事業会社8社を統合し、新生3社とする経営改革を実施する。

セグメント別業績

産業ガス関連事業

 売上収益は406億2千6百万円(前年同期比94.7%)、営業利益は前年同期に土地売却益などを計上した反動減もあり、39億2千8百万円(同82.6%)となった。
 ガス事業において、鉄鋼向けオンサイトガス供給は、主要顧客の高炉停止などの影響を受け、販売数量が減少し、厳しい状況が続いた。一方、エレクトロニクス向けガス供給は、データセンターや5G関連の需要拡大による国内半導体メーカーの増設・増産に対応するガスプラントの設置を段階的に進め、販売数量は堅調に推移した。ローリー・シリンダーによるガス供給は、地域のガス需要が減少した影響を受けたが、充填所の新設や地域の有力なガスディーラーとの連携強化を着実に進め、シェアの拡大を図った。本年6月には、新たに山形県において19号機目となる高効率小型液化酸素・窒素製造装置「VSU」が営業運転を開始した。
 機器・工事事業は、顧客工場における設備投資の一部先送り等の影響を受けたが、半導体製造装置向け高精度加熱冷却部品やエレクトロニクス向け特殊材料供給装置などの販売が拡大し、堅調に推移した。
 海外事業は、前連結会計年度にPraxair India Private LimitedおよびLinde India Limitedから産業ガス事業をそれぞれ譲り受けたAir Water India Private Limitedの新規連結効果があった。なお、当第1四半期連結累計期間におけるインドでの産業ガス事業は、ロックダウン(都市封鎖)による影響があったものの、主力である高炉向けオンサイトガス供給は本年6月にはほぼ新型コロナ発生前のレベルに回復した。

ケミカル関連事業

 売上収益は69億7千8百万円(前年同期比147.1%)、営業利益は2億5千1百万円(前年同期は2千9百万円の営業損失)となった。
 機能化学品事業は、ディスプレイ向けに新規用途が拡大したことなどにより電子材料の拡販が進展した。また、データセンターにおけるハードディスクドライブの需要拡大を背景に精密研磨パッドの販売が拡大した㈱FILWELおよび酢酸ナトリウムの国内トップメーカーである大東化学㈱の新規連結効果が寄与した。
 川崎化成工業㈱は、無水フタル酸の販売が減少した影響を受けたが、ナフトキノンの販売回復と入浴剤向けコハク酸の販売拡大により、その影響を補った。

医療関連事業

 売上収益は405億5千2百万円(前年同期比97.0%)、営業利益は6億3千5百万円(同58.6%)となった。
 設備事業は、新型コロナ影響により、手術室を中心とした病院設備事業において工事の延期や遅延が発生したほか、シンガポールでの設備工事事業においても、感染拡大防止に向けた経済活動の制限による影響を受けた。加えて、周術期分野における医療支援システムや歯髄再生事業に関連した研究開発を進めたことで、先行費用が発生した。
 なお、医療従事者と患者の院内感染リスク低減にも寄与する機器として、本年5月より遠隔診療支援システム「NOALON(ノアロン)」の販売・レンタルを開始した。
 医療サービス事業および医療ガス事業は、手術件数の減少や外出自粛により通院患者数が減少した影響を受けた。一方、衛生材料事業は、医療従事者向け防護具や手指消毒剤などの感染管理製品の販売が拡大し、好調に推移した。また、在宅医療事業は、院内感染対策を背景とした入院患者の在宅療養への移行などにより新規患者数が増加し、堅調に推移した。

エネルギー関連事業

 売上収益は110億3千7百万円(前年同期比97.2%)、営業利益は7億6千1百万円(同119.3%)となった。
 LPガス事業は、飲食店舗や工場向けの需要が減少したほか、輸入価格に連動した販売単価の下落により売上面で影響を受けた。こうした中、民生用においては販売店の商権買収や増客活動の推進による顧客数増加に加えて、巣ごもり需要を受けて1世帯当たりの単位消費量も増加した。また、これらに加えて直売比率も高まり、利益面では堅調に推移した。灯油は前年並みの販売数量となったが、原油価格の下落により販売単価が低下した。機器・工事は新型コロナによる新規受注の減少や工事延期の影響を受けた。
 なお、前連結会計年度にM&Aを実施したベトナムのLPガス事業者であるPacific Petoroleum Import and Export Trading Joint Stock Companyを新規連結した。

農業・食品関連事業

 売上収益は315億8千8百万円(前年同期比91.6%)、営業利益は3億2千3百万円(同37.5%)となった。
 農産・加工事業は、外食・ホテル・給食向けを中心に業務用冷凍・加工食品の需要が急減し、厳しい状況になった。農産・加工分野においては、前年度に豊作だった農作物の在庫処理に伴う影響があった。一方、ハム・デリカ分野においては、業務用需要が減少したが、巣ごもり需要に対応した業務用宅配商材に注力し、その影響を補った。また、スイーツ分野においては、収益改善が進展し、回復基調に入った。
 飲料事業は、外出自粛や在宅勤務の広がりを受けイベントやオフィス向けの需要が減少し、受託生産量が大幅に落ち込んだ。なお、本年3月より北海道の生産工場において最新鋭のPETボトル充填ラインの稼働を開始し、今後の受注拡大に向けた生産体制の増強を図った。
 その他の事業は、青果小売分野において店舗の時短営業や休業の影響を受けたが、既存店舗の収益改善を進め、利益面では前年同期を上回った。また、農業機械分野においては、除草用農機等の販売が堅調に推移した。

物流関連事業

 売上収益は130億4千6百万円(前年同期比106.3%)、営業利益は6億6千2百万円(同112.7%)となった。
 運送事業は、経済活動の停滞により自動車や建材関連を中心に荷扱量が減少したが、飼料関連の荷扱量が堅調だったことに加え、軽油価格の下落に伴うコスト改善も寄与し、その影響を補った。また、当第1四半期連結累計期間にM&Aを実施した西日本を中心に運送、倉庫業を展開する㈱桂通商を新規連結した。
 食品物流を中心とする3PL事業は、外出自粛を背景にスーパーマーケット向けの荷扱量が増加したことに加え、低温物流センターの稼働率向上が寄与したほか、人件費上昇の影響を受託料金の適正化によって補い、順調に推移した。
 トラック・ボディの設計・架装を行う車体事業は、修理や整備の需要を取り込み、堅調に推移した。

海水関連事業

 売上収益は83億7千7百万円(前年同期比95.8%)、営業利益は2億3千6百万円(同46.5%)となった。
 塩事業は、外食・給食向けを中心とした業務用塩の販売量が減少したことに加え、讃岐工場における大型定期修繕の実施により、減益となった。環境事業は、顧客工場の稼働率低下に伴い、排煙脱硫に使用される水酸化マグネシウムの販売が低調となり、厳しい状況で推移した。下水管更生事業は、引き続き旺盛な需要が継続し、堅調に推移した。発電事業は、持分法適用会社であるサミット小名浜エスパワー㈱の小名浜発電所において隔年実施の定期修繕に伴う稼働日数の低下による影響を受けた。なお、本年10月稼働開始予定の赤穂第2バイオマス発電所の建設は計画通り順調に進捗した。
 マグネシア事業は、耐火煉瓦向けをはじめとした一般窯業用マグネシアの販売が減少しましたが、電磁鋼板用マグネシアの価格改定に加え、ヒーター用電融マグネシアの原料価格が低下したことにより収益改善が進展し、利益面では堅調に推移した。

その他の事業

 売上収益は280億5千2百万円(前年同期比104.0%)、営業利益は7億1千万円(同52.0%)となった。
 エアゾール事業は、化粧品のOEM受託が減少したものの、感染予防対策として需要が高まったアルコール除菌剤の受託が拡大したことにより、利益面では堅調に推移した。
 海外エンジニアリング事業は新型コロナの感染拡大により産業ガス関連機器分野ではマレーシアにおける工場の稼働制限による影響を受けたほか、高出力UPS(無停電電源装置)分野ではシンガポールや欧州において経済活動が停滞した影響を受けました。
 その他の事業では、電力事業において木質バイオマス・石炭混焼発電所(山口県防府市)の安定操業が継続した。なお、2021年4月稼働開始予定の福島県いわき市で進めている木質バイオマス専焼発電所の建設計画は計画通り順調に進捗した。
 また、機械用シール部品の製造・販売を行うOリング事業は、半導体製造装置向けの販売が増加し、堅調に推移した。

2021年3月期通期連結業績予想

 通期の連結決算は売上収益8100億円(前年比0.1%増)、営業利益460億円(同9.1%減)、親会社所有者に帰属する当期利益270億円(同11.3%減)を予想する。