エア・ウォーター 2021年3月期第2四半期連結決算(IFRS)

通期の業績予想を上方修正、40億円プラスの営業利益500億円を見込む

 エア・ウォーターの2021年3月期第2四半期連結決算は、売上収益3744億2300万円(前年同期比2.8%減)、営業利益195億6100万円(同11.6%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益107億1000万円(同12.2%減)となった。

 通期の連結業績予想について、衛生材料など感染管理製品の需要拡大に加え、産業ガス関連や農業・食品関連をはじめとした事業全般において、今年5月に公表した想定よりも早期の回復が見込まるとした。加えて、テレワークをはじめとした働き方改革などによる費用低減効果も継続するとし、前回予想を上方修正した。

 2021年3月期の通期連結業績予想は、売上収益8200億円(前年同期比1.3%増、前回予想比100億円増)、営業利益500億円(同1.2%減、同40億円増)、親会社の所有者に帰属する当期利益290億円(同4.7%減、同20億円増)とした。

 エア・ウォーターグループの業績は、鉄鋼や自動車など幅広い業種で生産活動が停滞した産業ガス関連事業、病院設備工事案件の遅延や延期が発生した医療関連事業、海外での感染拡大防止策により活動制限を受けた海外エンジニアリング事業などで新型コロナによる影響を受けた。その一方で、事業構造改革が進展したケミカル関連事業に加え、エネルギー関連事業や物流関連事業でも増益を確保するなど、グループの最大の強みである産業系と生活系事業の最適バランスによる事業ポートフォリオの安定性が、新型コロナという未曾有の状況下にあっても底力として発揮された。

セグメント別業績

産業ガス関連事業

 売上収益は855億2000万円(前年同期比94.3%)、営業利益は前年同期に土地売却益などを計上した反動減もあり、80億1100万円(同90.1%)。
 ガス事業において、国内の鉄鋼向けオンサイトガス供給は、主要顧客の高炉停止などの影響を受け、販売数量が減少し、厳しい状況が続いた。エレクトロニクス向けガス供給は、国内半導体メーカーの増設・増産に対応するガス供給を段階的に進め、堅調に推移した。ローリー・シリンダーによるガス供給は、春先の国内製造業における生産調整により需要が急減したが、第2四半期以降は自動車産業の復調による持ち直しの動きがみられ、販売数量は緩やかな回復基調で推移した。炭酸ガス・ドライアイスは、製油所などの稼働低下に伴う原料ガスの減少により供給コストが大幅に上昇した影響を受けた。
 機器・工事事業は、顧客工場における設備投資の一部先送り等の影響を受けたが、半導体製造装置向け高精度加熱冷却部品やエレクトロニクス向け特殊材料供給装置などの販売が拡大し、利益面では堅調に推移した。
 海外事業は、主力のインド事業が当初の想定を上回る水準で推移した。3月からロックダウン(都市封鎖)があったが、鉄鋼向けオンサイトガス供給は、旺盛な粗鋼生産に連動し高稼働を維持したほか、7月以降はローリー・シリンダーによるガス供給においても建設や自動車向けなどの需要が急回復するとともに、医療用酸素の需要も高まり、順調に推移した。

ケミカル関連事業

 売上収益は146億9900万円(前年同期比136.8%)、営業利益は5億7600万円(前年同期は6800万円の営業損失)となった。
 機能化学品事業は、ディスプレイ向けに新規用途が拡大したことなどにより電子材料の拡販が進展した。また、データセンターにおけるハードディスクドライブの需要拡大を背景に精密研磨パッドの販売が堅調だった㈱FILWEL、および酢酸ナトリウムの国内トップメーカーである大東化学㈱の新規連結効果が大きく寄与した。
 川崎化成工業㈱は、無水フタル酸の市況下落と販売減少により売上面において影響を受けたが、ナフトキノンの販売回復と入浴剤向けコハク酸の販売拡大により、利益面では堅調に推移した。

医療関連事業

 売上収益は856億0600万円(前年同期比94.6%)、営業利益は30億5900万円(同79.2%)となった。
 設備事業は、遠隔医療支援システムや簡易陰圧装置などの販売に注力し、感染リスクを低減した医療供給体制の整備に取り組んでいるものの、手術室など病院設備工事および保守点検の延期や見直しによる影響を受けた。また、シンガポールでも政府の感染対策により工事停止期間があった影響を受け、前年同期を大きく下回った。医療ガス事業は、6月以降、需要が回復傾向にあるものの、受診控えや手術件数の減少による影響が残り、販売数量は減少した。医療サービス事業においても、同様の理由によりSPD(院内物品物流管理)の取扱量が減少した。医療機器事業は、紫外線照射殺菌装置など感染管理製品の販売が増加、在宅医療事業は、院内感染回避のため在宅療養を選択する新規患者数が増加し、堅調に推移した。
 衛生材料事業は、感染管理製品の需要の高まりに対応し、医療機関、大手量販店やドラッグストアなど幅広い顧客向けに、マスクや手指消毒剤等の販売が拡大し、好調に推移した。その他の事業では、持分法適用会社である㈱歯愛メディカルが歯科医院向け通信販売を中心に、感染管理製品の販売が増加し、好調に推移した。

エネルギー関連事業

 売上収益は207億9700万円(前年同期比97.8%)、営業利益は10億7900万円(同128.2%)。
 LPガス事業は、飲食店やホテルなどの業務用や工業用の需要が減少したことで総販売量は減少した。また、輸入価格に連動して販売価格が低位で推移したため、売上面で影響を受けた。一方、民生用において、巣ごもり需要を受けて1世帯当たりの消費量が増加したことに加え、増客活動や販売店の商権買収により直売比率が高まり、利益面では順調に推移した。機器・工事は、展示即売会などのイベントを中止したことで、機器販売が減少した。また、前連結会計年度にM&Aを実施したベトナムでの卸売事業は堅調に推移した。
 天然ガス関連事業は、低炭素社会への移行を見据えた環境意識の高まりを背景に、LNG輸送・供給機器の販売が堅調に推移した。

農業・食品関連事業

 売上収益は667億6700万円(前年同期比94.7%)、営業利益は17億5600万円(同81.6%)となった。
 農産・加工品事業は、第1四半期は、外出自粛の影響を受け外食・ホテル・学校給食向けなどの需要が急減した影響を受けた。その後、業務用食品の需要は回復傾向にあるものの、前年同期の水準までには至っていない。
 ハム・デリカ分野においては、外出を控えるライフスタイルの変化に対応し、テイクアウトや宅配向け商品の開発に加え、家庭用の調理品や冷凍野菜の販売に注力することで、業務需要の落ち込み影響を最小限に留めた。農産・加工分野は、前年度に豊作だった農作物の在庫処理や業務用需要の減少により一時的に工場操業を停止したことから厳しい状況となった。スイーツ分野は、生産面での改善が進展し、巣ごもり需要を取り込んだことで堅調に推移した。
 飲料事業は、外出自粛の影響により茶系飲料などの受託生産量が大幅に減少したが、健康志向の高まりから野菜系飲料や植物性ミルク飲料が伸長し、その影響の一部を補った。
 その他の事業は、青果小売分野において店舗の時短営業や休業による影響を受けましたが、店舗運営の収益改善を進め、利益面ではその影響を補った。一方、農業機械分野においては、前年同期に消費増税前の特需があった反動減による影響を受けた。

物流関連事業

 売上収益は263億1200万円(前年同期比104.4%)、営業利益は13億9000万円(同110.3%)となった。
 運送事業は、経済活動の停滞により自動車や建材関連を中心に荷扱量が減少したが、軽油価格の低下に伴うコスト改善が寄与し、その影響を補った。また、西日本地区を中心に運送・倉庫業を展開する㈱桂通商をM&Aによって取得し新規連結した。
 食品物流を中心とする3PL事業は、外出自粛を背景にスーパーマーケット向けの荷扱量が増加したことに加え、低温物流センターの稼働率向上が寄与したほか、人件費の上昇による影響を受託料金の適正化によって補い、順調に推移した。
 トラック・ボディの設計・架装を行う車体事業は、修理や整備の需要を取り込み、堅調に推移した。

海水関連事業

 売上収益は176億2900万円(前年同期比97.0%)、営業利益は8億0600万円(同68.4%)だった。
 塩事業は、外食・食品加工向けの業務用塩の需要が減少したことに加え、讃岐工場における大型定期修理の実施により減益となった。環境事業は、排煙脱硫に使用される水酸化マグネシウムの販売減少を水処理用リード吸着剤の販売が補い、前年並みとなった。また、地方自治体向けの水処理設備や下水管更生の受注が増加した。発電事業は、持分法適用会社であるサミット小名浜エスパワー㈱の小名浜発電所において隔年実施の定期修繕に伴う稼働日数の低下による影響を受けた。
 マグネシア事業は、粗鋼生産の減少と中国産原料の価格低下により、耐火物用途の窯業用マグネシアの売上が減少した。また、方向性電磁鋼板用マグネシアが前年並みとなったほか、ヒーター用電融マグネシアの原料価格が低下したことにより収益改善が進展し、利益面では堅調に推移した。

その他の事業

 売上収益は570億8900万円(前年同期比97.9%)、営業利益は17億8400万円(同59.5%)となった。
 エアゾール事業は、化粧品のOEM受託が減少したものの、感染予防対策として需要が高まったアルコール除菌剤の受託生産が拡大したことにより、堅調に推移した。
 情報電子材料事業は、国内・海外共に自動車向けの車載部材販売が低調に推移し、前年同期を下回った。
 海外エンジニアリング事業は、産業ガス関連機器分野では、主要市場である米国の需要は回復基調にあるものの、マレーシアにおいて政府の感染対策によって工場の稼働率が低下した影響を受けた。高出力UPS(無停電電源装置)分野では、シンガポールや欧州をはじめとした各国において経済活動が停滞した影響を受け、顧客の投資計画や実行中のプロジェクトが遅延し、厳しい状況となった。
 その他の事業では、電力事業において木質バイオマス・石炭混焼発電所(山口県防府市)の安定操業が継続したが、定期検査に伴う計画停止があったため、利益面では前年同期を下回った。北九州で建設・土木工事を行う松尾ホールディングス㈱は、工事案件が減少した影響を受けた。