北良とソフトバンク、WOTAが水問題の解決に向けて東京都利島村と合意書を締結

新たな水供給システムの構築に向けてオフグリッド化された住環境を検証

 ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)、WOTA株式会社(以下「WOTA」)および北良株式会社(以下「北良」)は、東京都利島村を含む4者で、利島村の水問題の解決に向けて、新たな水供給システムの構築に向けてオフグリッド化※1された住環境の検証(以下「本検証」)に係る合意書を締結した。

 周囲を海に囲まれた利島村は、高額な給水原価※2に伴う水道事業の財政圧迫、淡水化装置の故障による断水、川や大型貯水施設がなく限られた取水源への依存による渇水リスクおよび施設の管理者不足など、水に関するさまざまな課題を抱えている。また、住民や移住希望者向けの住宅を新たに建築する際には、島外から資材や人材を調達する必要があり、高額な建築費や工期の長期化が課題となっている。

 そこで、WOTAが開発する「小規模分散型水循環システム※3」を搭載した居住モジュール※4(以下「オフグリッド居住モジュール」)を用いて、水道インフラの整備にかかる費用や工期を省略するオフグリッド化された住環境を整備することで、利島村における水や住環境に関する課題解決を目指すことについて、利島村と3社の間で合意した。

オフグリッド居住モジュール 10フィートモデル
利島村に設置予定のオフグリッド居住モジュール 10フィートモデルのイメージ

 北良が開発するオフグリッド居住モジュール本体は、既存のインフラに接続しなくても電力を自立供給できるオフグリッドシステムを備えており、WOTAの「小規模分散型水循環システム」に加えてソフトバンクの通信機器(モバイルWi-Fiルーターなど)を搭載することで、インフラに縛られない住環境の整備を可能にする。

 3社は、離島で特に深刻化する高額な給水原価や不安定な水供給、住環境整備における難しさなどの利島村が抱える課題解決を実現するとともに、同様の課題を抱える全国各地の離島をはじめとした地域にとってのモデルケースの構築を目指す。

 本検証では、オフグリッド居住モジュールを村の職員や希望する住民に一定期間提供し、島での利用に適した仕様や運用方法、可用性などを検証。また、検証の結果を踏まえて、利島村の既存の公共施設および住宅への「小規模分散型水循環システム」の実装や、住宅未開発エリアへの拡大などを検討し、利島村の課題解決を目指していく。

  • ※1 水道・電気・通信(有線ネットワーク)などのインフラから独立していること
  • ※2 水道水を1立方メートル作るのに必要な経費
  • ※3 WOTAが現在製品化に向けて開発中のシステム
  • ※4 住宅用地を確保すれば簡単に設置・移動できるコンテナ型の居住施設

各社の役割

  • ソフトバンク:本検証の全体統括、通信環境の提供、用途ごとの水利用測定機器の提供
  • WOTA:「小規模分散型水循環システム」の提供および運用・管理、関連データの収集・分析
  • 北良:居住モジュールの提供および運用・管理、関連データの収集・分析

WOTAの「小規模分散型水循環システム」について

 「小規模分散型水循環システム」とは、WOTAが開発する世界最小規模の水再生システム。排水を欠かさず回収し、膜処理・生物処理・殺菌処理などにより再生し、安全に循環利用することができるシステムになる。独自開発の「水処理自律制御システム」を用い、生活排水の変動に対し水処理を柔軟に制御することによって、大規模処理場レベルの高度管理を実現し、WHO基準の細菌・ウイルス除去率での水安全を維持した上で、さまざまな生活排水の再生に対応している

  • ※ WOTAの実験環境下での評価

北良のオフグリッド居住モジュールについて

 東日本大震災における災害支援の経験から、在宅医療患者など災害弱者とされる被災者を安全で快適に収容するために開発した、簡単に設置・移動が可能な断熱性の高いキューブ型の居住施設。既存のインフラに接続しなくても電力を自立供給できるオフグリッドシステムを備えている。インフラシステムのスペースと居住スペースが一体になった40フィートモデルと、10フィート単位の各スペースを設置場所で連結して一つの居住施設を構築する10フィートモデルがあり、設置場所の土地や道路などの状況に合わせて最適な選択が可能。