岩谷産業 2023年3月期第2四半期連結決算

通期業績予想を上方修正、産業ガス・機械事業で特殊ガスの販売が堅調に推移

 岩谷産業の2023年3月期第2四半期連結決算は、売上高4132億1800万円(前年同期比39.1%増)、営業利益144億9700万円(同6.0%増)、経常利益184億8300万円(同11.6%増)、親会社株主に帰属する純利益123億0100万円(同19.5%増)だった。

 グループは中期経営計画「PLAN23」の基本方針である「脱炭素社会に向けた戦略投資の強化」と「デジタル化の推進」に取り組んだ。

 脱炭素社会の実現に向けて、グリーンイノベーション基金事業に採択された「液化水素サプライチェーンの商用化実証」の推進主体となる、日本水素エネルギー株式会社への出資を決定した。液化水素運搬船や基地設備の建設に向けて、出資各社と連携し、詳細な事業性調査を進めていく。

 総合エネルギー事業では、国のJ-クレジット制度により、顧客の燃料転換によるCO2排出削減をJ-クレジットとして価値化する取り組みを進めており、これを活用したカーボンオフセットLPガス・LNGの販売を開始した。LPガスのグリーン化に向けた取り組みとしては、社会実装の推進に向けて、一般社団法人日本グリーンLPガス推進協議会を中心とする官民協議に参画した。また、CO2排出量の算定・可視化の一環として、「イワタニカセットガス」のCO2排出量を算定する取り組みを開始した。

 産業ガス事業では、陸上養殖分野での事業拡大を図ることを目的に、リージョナルフィッシュ株式会社へ出資した。岩谷産業は長年培ったガス技術を活用し、同社と陸上養殖効率化に向けた共同実証に取り組む。今後、更なる関係強化により、成長分野である陸上養殖に関する幅広いノウハウを蓄積し、海洋資源保全による持続可能な社会にも貢献する。

 マテリアル事業では、豪州において、ミネラルサンドの新鉱区を確保したことに加え、カーボンクレジットの創出に向けて、所有地での植林事業を行うことを決定した。

 セグメント別の経営成績は次の通り。

【総合エネルギー事業】

 LPガス輸入価格が高値で推移したことや、民生用・工業用LPガスの販売増加に加え、新規連結の影響もあり、増収となった。一方で、LPガスの市況要因が前年同期比でマイナス(前年同期比16億69百万円の減益)となったことに加え、前年の大型設備案件による反動減が発生し、減益となった。

 売上高は1,689億5百万円(同443億16百万円の増収)、営業利益は39億 80百万円(同14億99百万円の減益)。

【産業ガス・機械事業】

 エアセパレートガスについては、中国のロックダウン等の影響により自動車関連業界向けを中心に販売数量が減少したことに加え、電力料金の上昇により製造コストが増加した。水素事業は、液化水素の販売は伸長したが、水素ステーションの増設に伴う運営費用が増加した。ヘリウムについては世界的な需給ひっ迫により市況が上昇する中、安定供給に努めた。また、機械設備は半導体関連機器が堅調に推移。

 売上高は1,079億1百万円(前年同期比195億80百万円の増収)、営業利益は65億78百万円(同5億32百万円の増益)。

【マテリアル事業】

 ミネラルサンドについてはサプライチェーンの混乱により市況が高騰する中、安定供給に努めたことで増収となった。また、次世代自動車向け二次電池材料や低環境負荷PET樹脂等の環境商品が堅調に推移し、ステンレスは新規顧客への販売が伸長した。

 売上高は1,190億47百万円(前年同期比491億4百万円の増収)、営業利益は57億28百万円(同27億94百万円の増益)。

【自然産業事業】

 業務用や一般消費者向けの冷凍食品の販売が増加したものの、仕入コストや物流費等が増加した。また、農業設備の販売は低調に推移し、種豚は飼料価格の高騰により収益性が低下した。

 売上高は143億97百万円(前年同期比26億61百万円の増収)、営業利益 は1億62百万円(同4億7百万円の減益)。

【その他】

 売上高は29億66百万円(前年同期比5億49百万円の増収)、営業利益は6億40百万円(同9百万円の減益)。

業績予想の修正

 第2四半期までの決算状況を踏まえ、2022 年5月 13 日に公表した 2023 年3月期通期(2022 年4月1日~ 2023 年3月 31 日)の業績予想を修正し、売上高8400億円(前回予想からの増減額370億円)、営業利益400億円(同50億円増)、経常利益465億円(同55億円増)、親会社株主に帰属する当期純利益300億円(同35億円増)とした。

 業績予想修正の理由として、ウクライナ情勢の長期化、電力や原材料の価格上昇など、先行き不透明な状況が続くと想定し、マテリアル事業において、鉱物資源事業を中心に堅調に推移するとした。また、総合エネルギー事業においては、主力商品であるLPガスの業務用需要の回復や小売分野での収益の改善、産業ガス・機械事業においては特殊ガスの販売が堅調に推移する見通し。