高圧ガス工業が日本テクノと、CO2排出量ほぼゼロの新ガス浸炭法「常圧スマート浸炭」を開発

アセチレンガスと窒素ガスで鋼材表面に直接浸炭、既存の浸炭炉を活用可能

 高圧ガス工業と株式会社日本テクノ(本社:埼玉県蓮田市、代表者:椛澤均)は、浸炭ガスとしてアセチレンガスを用いた新ガス浸炭法により、従来法と比較して、浸炭品質を維持したまま CO2 排出量をほぼゼロにできる新技術(名称は「常圧スマート浸炭」)を開発した。

 浸炭とは、鋼材を 850℃~950℃ 程度まで加熱して、低炭素の鋼などの鋼材表面に炭素を浸入させることで表面近傍の硬さを増加させ、耐摩耗性や疲労強度の向上を図る表面硬化法。自動車関係や機械関係等多くの部品に適用されている。

 一般的なガス浸炭法は、原料ガスとして、メタン、プロパンなどと空気を 1,050℃ 程度の変成炉中で触媒と反応させた変成ガス(一酸化炭素・水素・窒素)を用いて浸炭を行なう処理法で、浸炭反応および排ガス燃焼反応による CO2 が排出される。

 一方、常圧スマート浸炭は、アセチレンガスと窒素ガスを用いて鋼材表面に直接浸炭を行なう処理法で、CO2 発生源である変成炉を一切使用しない画期的な浸炭方法。そのため、本技術では、変成炉の使用により発生していた CO2 の直接排出量をほぼゼロにすることができる。また、現在使用している浸炭炉がそのまま活用できるため、使用するガスの種類を変更するだけで、大幅なガス炉改造をすることなく、ランニングコストの低減も見込める。

 本技術開発は、ガス浸炭炉メーカーである株式会社日本テクノ等と約 8 年前から共同研究を実施してきた。今回、炉内のアセチレンガス濃度の計測、制御法を確立したことにより、高品質な環境対応型ガス浸炭法を実現した。(共同特許出願中)

浸炭炉

 政府は「2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を宣言し、2030 年度における国内の温室効果ガス排出量を 2013 年度比で 46%削減する目標を掲げている。熱処理分野においてもカーボンニュートラルに向けた製造プロセス変革が必要とされることから、高圧ガス工業では今後も、常圧スマート浸炭などの取組みを通して 2050 年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す。

 ※本件は 2023 年 5 月 23 日に(一社)日本熱処理技術協会 春季講演大会で発表済み。

高圧ガス工業の「常圧スマート浸炭」研究開発(ウェブページ)

https://www.koatsugas.co.jp/rd/gas-carburizing/

会社概要

高圧ガス工業株式会社

  • 本社所在地: 大阪市北区中崎西 2 丁目 4 番 12 号 梅田センタービル 28 階
  • 設立: 1958 年 6 月
  • 代表者: 代表取締役社長 黒木 幹也
  • 事業内容: 溶解アセチレン・一般高圧ガスの製造販売、接着剤等の製造販売
  • 資本金: 28 億 8,500 万円
  • URL: https://www.koatsugas.co.jp/

株式会社日本テクノ

  • 本社所在地: 埼玉県蓮田市大字閏戸 3968 番地
  • 設立: 1985 年 3 月
  • 代表者: 代表取締役社長 椛澤 均
  • 事業内容: 熱処理設備の製造販売、熱処理受託加工、試作及び研究
  • 資本金: 6,000 万円
  • URL: http://www.nihon-techno.co.jp/

大陽日酸、省エネ型酸素燃焼式高濃度ガス変成炉の販売を開始

 大陽日酸は、酸素ガスを使用し、省エネで高濃度の変成ガスを生成できる「省エネ型酸素燃焼式高濃度ガス変成炉」を開発し、販売を開始した。

 代表的な鋼の表面硬化処理である浸炭処理においては、熱処理炉の雰囲気ガスを製造するためのガス変成炉が必要になる。浸炭処理の中でも特に、大規模生産に適し広く利用されているガス浸炭法では、吸熱型ガス変成炉を用い LP ガスなど炭化水素系のガスを Ni(ニッケル)触媒による吸熱反応によって変成するが、電気を使って Ni 触媒を 1000℃以上の高温に加熱する必要がある。
 大陽日酸では、長年培ってきた酸素燃焼技術と、ガスコントロールによる熱処理雰囲気の最適化技術を融合し、酸素バーナを使用することで電気による加熱が必要な吸熱型ガス変成炉を使わずに雰囲気ガスを生成できる省エネ型の高濃度ガス変成炉を開発した。

 本装置は、吸熱型ガス変成炉の代替装置であり、電気加熱を酸素燃焼に変更することで、熱処理工場の電気使用量削減に大きく貢献する。また、従来の吸熱型ガス変成炉は LP ガスと空気の改質により 20%程度の CO(一酸化炭素)と 30%程度の H2(水素)を含む変成ガスを生成するのに対し、本装置では、LP ガスと酸素を使用して、40%以上の CO と 50%以上の H2 を含む変成ガスが生成できる。これにより従来よりも浸炭能力が高まり、浸炭時間の短縮が可能となり、熱処理工程におけるランニングコスト削減にも大きく貢献する。

 今後、金属部品の小型・軽量化が進み、熱処理による強度の確保や表面処理の需要はますます高まってくると予想され、電気を使用しない新しい酸素燃焼式高濃度ガス変成炉は熱処理分野への貢献が大きく期待される。4年後の 2016年度には累計売上高 6.4 億円を計画し、これによる4年後の酸素需要は年間約 2 億円が見込まれる。

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