川崎重工、低濃度CO₂分離回収技術の実証設備を神戸工場内に整備
国内最大級のDACとガスエンジン発電所の排ガスからCO2を回収するPCCの技術実証、吸収液法よりも低い温度(60℃)でCO2分離
川崎重工は、神戸工場(兵庫県神戸市)において、新たに開発した低濃度CO₂分離回収技術の実証設備の建設に着手した。2025年10月に竣工予定。

本設備は、独自のCO2回収技術であるKawasaki CO2 Capture(以下、KCC)を活用し、大気からのCO2回収を行うDirect Air Capture(以下、DAC)※1と神戸工場に設置している高効率のガスエンジン発電所の排ガスからCO2を回収するPost-Combustion Capture(以下、PCC)の技術実証を行うもの。実証においては、新開発の低濃度CO2を吸収する固体吸収剤を使用するとともに、CO2を脱離するための蒸気生成にはガスエンジン排ガス等の未利用熱を利用する。
KCCは、川崎重工が長年培ってきた潜水艦や宇宙ステーション等の閉鎖空間における呼気由来のCO2を除去する技術を応用する。また、川崎重工が独自に開発した固体吸収剤を用いることで、従来の吸収液法よりも低い温度(60℃)でCO2を分離することが出来るため、CO2分離回収におけるエネルギー消費が削減できる。
今回の神戸工場での実証設備は、川崎重工の日本国内※3および米国※4の事業用発電所におけるKCCの実証成果を活かしたものとなる。PCCは、川崎重工の分散型発電設備の排ガスからのCO2回収に初めて適用した。DACは、将来の大型化に対応可能なモジュール構成を初めて採用し、今回整備する設備は国内最大級となる。これら2つの設備を用いて、今後の大規模展開に向けた技術的検証を行い、設備の改良や吸収剤開発を自社で実施し、より迅速かつ確実な開発・製品化を進める。
主な仕様
KCC型式 | DAC | PCC |
回収元 | 大気 | ガスエンジンからの排ガス |
回収量 | 100~200 ton-CO2/年/モジュール | 360 ton-CO2/年 |
脱離蒸気温度 | 60℃ |
※1 DAC:CO₂濃度の低い大気中からのCO₂分離回収技術。大気からのCO₂を回収して貯留や材料に固定化することでネガティブエミッションを実現する
※2 PCC:排ガスに含まれるCO₂の分離回収技術。
※3 NEDO事業:「国内初 石炭火力発電所の燃焼排ガスから固体吸収材を用いて二酸化炭素を分離・回収する省エネルギー型試験設備の運転を開始」(2023年10月3日付)
https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_231003-2.pdf
※4 環境省事業:「米国ワイオミング州で石炭火力発電所燃焼排ガスに対する環境影響評価試験のための CO2分離回収技術実証試験設備が竣工」(2023年10月11日付)
https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_231011-1.pdf
参考リンク
・川崎重工のCO2分離回収技術について:https://www.khi.co.jp/energy/co2sr