外部水素の調達不要で水とCO2からe-メタンを製造、合成時の排熱を有効活用しエネルギー変換効率約85~90%を目指す
大阪ガスは、産総研とともに採択された、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業*1/CO2等を用いた燃料製造技術開発プロジェクト」の「SOECメタネーション技術革新事業」で、SOEC*2メタネーションのベンチスケール試験施設が完成、2025年6月3日に竣工式を行った。


大阪ガスが社会実装を目指すSOECメタネーションは、SOEC電解装置において再生可能エネルギー等を用いて水やCO2を電気分解し、生成した水素や一酸化炭素からメタン合成反応装置において触媒反応を用いてe-methane (e-メタン)を合成する技術。

この技術の特徴として、原料として外部水素の調達が不要で水とCO2から一気通貫でe-メタンを製造する。また、高温(約700~800℃)で電気分解することにより、必要な再エネ電力等を削減できる。さらにメタン合成時の排熱を有効活用できるため、従来のサバティエ反応メタネーション(約55~60%)を大幅に上回る、約85~90%というエネルギー変換効率*3を実現できる可能性がある。これにより、再エネ電力が大きな割合を占めるe-メタン製造コストの大幅な低減が期待できる。
大阪ガスは、2024年度からラボスケール(一般家庭2戸相当)での試験を開始。本施設で実施するベンチスケール(同約200戸相当)試験では、まず、SOEC水蒸気電解装置*4と大阪ガス開発の触媒を充填したメタン合成装置を組み合わせて、装置の性能確認を行うとともに、プロセス全体の運転データの取得を行い、高いエネルギー変換効率を達成するための検証を進める。その後、更なる高効率化に向けて、開発を進めるSOEC共電解装置*5を新たに設置し、試験を行う。
2028年度~2030年度にはパイロットスケール試験を進め、2030年度に世界最高レベルのエネルギー変換効率(約85~90%)を実現するe-メタン製造技術の確立を目指す。将来的には、2031年度以降の実証フェーズを経て、2030年代後半から2040年頃の実用化を見込む。
*1:2050年カーボンニュートラルを実現するべく、エネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションの大幅な加速を目指して造成された約2兆8,000億円規模の基金事業。政府の「グリーン成長戦略」で実行計画を策定している重点分野において、政策効果が大きく、社会実装までを見据えて長期間の継続支援が必要な領域に重点化して支援されるもの
*2:Solid Oxide Electrolysis Cell の略、固体酸化物を用いた電気分解素子。水蒸気やCO2を高温で電気分解するもの
*3:投入した電力エネルギー量に対し得られる燃料のエネルギー量の割合
*4:水蒸気を電気分解し、水素を生成する高温電解装置。再委託先である東芝エネルギーシステムズ株式会社にて製造
*5:水蒸気と共にCO2を電気分解し、水素とCOを生成する高温電解装置
グリーンイノベーション基金の採択事業の概要
事業名 | SOECメタネーション技術実証事業 |
実施体制 | 〇NEDOから委託:大阪ガス株式会社(幹事企業)国立研究開発法人産業技術総合研究所(共同実施者)〇当社から委託 :東芝エネルギーシステムズ株式会社(SOEC電解装置の開発の一部を担当)〇産総研から委託:国立大学法人京都大学、国立大学法人群馬大学学校法人関西学院 関西学院大学、独立行政法人国立高等専門学校機構長岡工業高等専門学校 |
事業内容 | (1)革新的要素技術の開発①SOEC高温電解セルスタック・電解装置の開発②ガス合成反応制御技術の開発③システム構成最適化・熱有効利用技術の開発(2)システム技術開発・検証(SOECメタネーション技術の小規模試験)①2022~24年度:ラボスケール②2025~27年度:ベンチスケール③2028~30年度:パイロットスケール |
