水素への変換効率で優位性、排熱を利用することで産業分野で最も効率的なグリーン水素製造技術へ
セラミック基盤技術を有する日本特殊陶業(本社:愛知県名古屋市)と、モビリティテクノロジーのリーディングカンパニーであるAVL(本社:オーストリア・グラーツ)は、革新的な水素製造技術であるSOEC(固体酸化物形電解装置)技術の共同開発に合意した。本協業は、2025年5月21日にオーストリア貿易使節団「Composing the Future – Together(未来の共創)」の一環として、オーストリア連邦大統領のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン博士の立ち会いのもと発表された。

(左から)キャサリン・リスト AVL文化財団CEO、ヘルムット・リスト AVL CEO、
アレクサンダー・ファン・デア・ベレン オーストリア共和国連邦大統領、ドリス・シュミダウアー氏、
鈴木啓司 日本特殊陶業 上席執行役員、森茂樹 日本特殊陶業 エネルギー事業本部 本部長
SOEC技術は、アルカリ型、PEM型、AEM型といった他の水素製造技術と比較して、電気エネルギーから水素への変換におけるエネルギー効率の面で革新的な優位性を持つ。この高い効率性は、製鉄、石油精製、化学品製造、合成燃料の生産など、排熱を利用できるプロセスと組み合わせた場合に一段と発揮され、両社はこのSOEC技術が産業分野における最も効率的なグリーン水素製造技術としての導入が期待されるとし、SOEC技術の開発、スケールアップ、および産業化に注力する。
共同開発では、日本特殊陶業が長年培ってきた固体酸化物セルおよびスタックに関する経験と、電気化学技術および製造における専門知識と、AVLが持つ、スタックをモジュールや電解装置全体のシステムへと統合する技術における高い専門性、そして市場で実証されたシステム設計力を結集する。
日本特殊陶業の上席執行役員である鈴木啓司氏は、「日本特殊陶業が長年培ってきた電気化学材料技術の知見と、市場で実証されたAVLのシステム設計力との連携により、カーボンニュートラルな産業の実現に向けた産業規模での展開が大きく前進している」と述べた。
また、AVLのCEO兼会長であるヘルムット・リスト教授は、「SOECはその高い効率性により、グリーン水素の製造においてますます重要な役割を担いつつある。日本特殊陶業との協業は、この重要な技術のスケーリングを加速させるうえで大きな一歩である」とし、「産業界のCO₂排出量を持続的に削減し、気候に優しいエネルギー社会への移行を積極的に推進することを明確な目標に据えている」とコメントしている。
日本特殊陶業は、スパークプラグや酸素センサーなど、セラミックを基盤とした自動車部品の大手メーカー。一方、AVLは自動車業界をはじめ、鉄道、船舶、エネルギーなどの分野における開発とシミュレーション、試験を行うモビリティテクノロジーの分野で国際的なパートナーや顧客の持続可能なデジタル変革を支援する。