産業ガスのグリーントランスフォーメーション


日本ガスライン、液化CO₂をタンク間で移送する「船上CO₂ハンドリング実証」を実施


-50℃、0.6MPaGの液化CO₂を最終的に配管流速4m/s以上で移送

 日本ガスラインは、液化 CO₂の配管流速を上昇させた際の影響を評価するための検討として、船上に設置された 2 基のタンクを用いて、液化 CO₂をタンク間で移送する船上CO₂ハンドリング実証を実施した。-50℃、0.6MPaG 程度の液化 CO₂を移送したところ、局所的な温度・圧力の上昇・低下や特異な振動は観測されず、カーゴポンプからの入熱も想定通りとなった。ドライアイスによる配管閉塞もなく、配管流速 2m/s から徐々に流速を上昇させ、最終的に 4m/s 以上で移送した。

 No2 タンクに積載した低温低圧の液化 CO₂を、カーゴポンプを用いて No1 タンクに 2m/s→2.5m/s→3m/s→4m/s と段階的に流速を上昇させて移送。液体の移送と同時に気体を返送することにより、それぞれのタンクの圧力をコントロールした。この際に、各種センサーにより、配管内やタンク内の液化 CO₂の温度・圧力を監視し、配管の曲部などで振動を計測し、船陸荷役と比較して短い時間であるが、安定的に4m/s の流速で低温低圧の液化 CO₂を移送できることを確認した。

 この実証試験は、船上で実施しており、タンク間の配管距離が短く高低差が少ないため、液化 CO₂が流れやすくなることから、一部のバルブ開度を調整し、一定の抵抗を設けて船陸荷役の環境に近づけた条件で実施している。

 日本ガスラインは1962 年の創業以来、長年に亘り培ってきた内航ガス船の運航ノウハウを活用し、安全な液化 CO₂の大量・長距離船舶一貫輸送技術の開発を目指した NEDO※1 事業※2 の共同受託者の 1 者として、液化 CO₂輸送実証試験船「えくすくぅる」の運航・管理と共に同船を使った液化 CO₂の輸送実証試験を担っている。

 液化 CO₂の大量輸送が伴うCCUS の社会実装において、輸送コストの抑制は大きな課題であり、その解決の一つの手法として、配管流速の上昇による荷役時間の短縮が挙げられる。船上 CO₂ハンドリング実証では、片方のタンクに積載された低温低圧の液化 CO₂をカーゴポンプでもう一方のタンクへ繰り返し移送し、船上配管に設置された数十か所におよぶ温度・圧力・流量等の各種センサーで計測した数値から、液化 CO₂のコンディションの変化を確認した。今後は液化 CO₂の温度・圧力などの条件や船の設備設定等を変化させ、計測箇所を増加し、船上での CO₂ハンドリング実証試験を複数回実施する予定。

*1 NEDO:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
*2 NEDO 事業:CCUS 研究開発・実証関連事業/苫小牧における CCUS 大規模実証試験/CO2輸送に関する実証試験/CO2船舶輸送に関する技術開発および実証試験


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