FDK、水素貯蔵タンク用高容量AB2型水素吸蔵合金を開発

水素貯蔵量の体積効率が液体水素の約2倍、高圧水素ガスの約7倍

 FDK株式会社(本社:東京都港区、長野 良 代表取締役社長)は、水素エネルギー社会の実現に向けた水素貯蔵タンク用の新材料として、高容量AB2型水素吸蔵合金を新たに開発した。同社によれば、水素貯蔵量の体積効率が液体水素の約2倍、高圧水素ガスの約7倍となり、重量当たりの水素貯蔵量がAB5型比で約20%向上し、安定性に優れた水素放出圧力と使い勝手に配慮した活性化(*1)プロセスをもつとされる。また、日本の高圧ガス保安法適用外となる1MPa未満の低平衡圧(*2)仕様と海外向けの1MPa以上の高平衡圧仕様のどちらにも対応可能。

 現在、電池用途で主流のAB5型水素吸蔵合金は、活性化の容易性や反応速度の速さ、リサイクルの容易性に優れる反面、重量当たりの水素貯蔵量が少ないため、より多くの貯蔵量が望まれるタンク用途には適さなかった。さらに、AB5型以外の水素貯蔵量に優れる水素吸蔵合金は、使用中に水素放出圧力が大きく低下する(*3)ものや、活性化プロセスが煩雑なものなど、使い勝手に問題があった。

 開発した高容量AB2型水素吸蔵合金は、「貯蔵量の少なさ」や「活性化の煩雑さ」といった問題を解消できるため、水素ステーションや燃料電池、小型燃料電池モビリティなど幅広い用途の水素貯蔵タンクに対応が可能としている。2025年7月より一部需要家向けにサンプル提供を開始し、2025年10月以降の量産出荷を予定。

 FDKは1991年から34年にわたり、セキュリティ・車載・医療・家電など様々な用途向けに、「幅広い温度範囲で使用できる」、「充電して繰り返し使用できる」、「リサイクル性が高い(*4)」、「安全性が高い(*5)」特長を有するニッケル水素電池を製造・販売する。

*1:「活性化」とは、水素を効率的に吸蔵・放出させるために行なう処理のこと。水素吸蔵合金は合金の状態ではほとんど水素を吸蔵しないため、水素吸蔵合金は使用する前に、活性化処理が必要になる。
*2:「平衡圧」とは、水素吸蔵合金が水素を吸蔵または放出する反応において、平衡状態となる水素ガス圧力のこと。水素吸蔵合金は周囲の水素ガスの圧力が水素吸蔵圧力以上であれば合金内に水素を吸蔵し、水素放出圧力以下であれば合金内の水素を放出する特徴がある。
*3:水素放出圧力低下が起きると、水素の放出流速の低下を招き、機器の安定動作に必要な水素量を得られない可能性がある。
*4:ニッケル水素電池はリサイクル可能なニッケルを多く含んでおり、使用後はステンレス材料などに再利用される。
*5:電解液が水溶性のため。