アクポニ、施設園芸のCO2供給向けにDAC(直接空気回収技術)機器「Wunderpumpe2」の販売を開始
「第15回農業WEEK」(2025年10月1日~3日、幕張メッセ)で一般公開
循環型農業「アクアポニックス」の専門企業である株式会社アクポニ(所在地:神奈川県横浜市、濱田健吾 代表取締役、以下アクポニ)は、スウェーデンのテクノロジー企業Direct Carbon社(以下、Direct Carbon)と提携し、施設園芸のCO2供給向けにDAC(Direct Air Capture:直接空気回収)機器の販売を開始した。同社のDACユニット「Wunderpumpe2(ウンダーパンプツー、以下、WP-2)」を、2025年10月1日〜3日に千葉・幕張メッセで開催される「第15回農業WEEK」で、国内で初めて一般公開する。アクポニはシンガポールのArianetech Pte Ltdと共同で、同社と日本における独占販売契約を締結した。

アクポニでは今後、WP2を用いてイチゴの栽培を対象とした実証実験を実施する予定。ここで得られる成果をもとに、アクアポニックスおよび施設園芸に最適化した導入モデルを構築する。また、カーボンニュートラル社会の実現に向け、次のような農業以外の分野でも活用を見込む。
- カーボンクレジット事業:DAC由来のCO2削減量をクレジット化
- 飲料業界:炭酸飲料やビール製造に必要な食品グレードCO2の安定確保
- データセンター:電力消費に伴うCO2排出削減とESG対応
- 自治体・公共施設:空港や環境拠点でのカーボンニュートラル推進
空気から直接CO2を回収、施設園芸の収量アップと脱炭素化を両立
施設園芸では、コスト効率に優れたCO2供給が求められる。研究によれば、温室内のCO2濃度を1,000〜1,200ppmに高めることで、トマトや葉物野菜の収量が最大40%向上すると報告されている(出典:CO2 Enrichment at Night Affects the Growth and Yield of Common Beans)が、化石燃料の使用や液体CO2の調達コスト、環境規制が課題となり、十分な普及には至っていない。こうした課題に対応するため、施設園芸に特化したDACユニットとして世界最小クラスのカーボンキャプチャーシステム「Wunderpumpe2」は開発された。
WP-2は空気中から直接CO2を回収し、濃縮して温室や植物工場に安定供給する。熱交換機能やCO2再循環機能を備え、省エネ設計を実現し、設定した濃度に応じて自動制御を行い、化石燃料や液体ガスに依存せずCO2を生成する。これによりランニングコストを削減し、環境負荷を抑えつつ植物の成長を最適化する。
従来のCO2施用(燃焼式やボンベ供給式)は、燃料費やガス供給コストがかさみ、年々負担が増大する。1,500平方メートルへ20kg/日のCO2を施用するケースでDACと従来方式を比較すると、DACは初期投資こそ大きいものの、運用コストが圧倒的に低いため、1年で従来方式を逆転し、5年間で約1,400万円のコスト削減効果を実現するとしている。


「Wunderpumpe2」の商品概要
- 名称:Wunderpumpe2(WP-2)
- CO2回収能力:約2kg/日
- サイズ:504×428×526(mm)
- 重量:31kg
- 消費電力:2.3kW(230V 単相 50Hz)
- 筐体:ステンレス製
モジュール式で低価格、拡張性も確保
WP2はモジュール式設計のため、あらゆる規模のビジネスニーズに対応可能。低コストで手軽に空気由来のCO2を導入できるため、初期投資を抑えて効果を確認できる。サイズは約1/8立方メートル、重量31kgというコンパクト設計で、設置やメンテナンスも容易で、研究施設やコンテナファーム、店舗などスペースの限られた環境にも導入可能。今後はWP-2に続き、より大規模な農場を対象とするWunderpumpeシリーズ「WP-20」「WP-50」「WP200」も順次発売を予定する。

世界トップクラスの表面積でCO2を回収、効率的に濃度を調整
ハニカム構造のローターと独自の固定吸収材により、世界トップクラスとなる100平方メートルの有効表面積を実現し、CO2を効率的に回収する。さらに、特許技術によるクローズドループ方式で熱を無駄なく再利用し、濃度を自動かつ効率的に制御。
高い評価とグローバル展開
「Wunderpumpe」シリーズは、EUおよびアジアの栽培環境でテスト済み。ヨーロッパを中心に導入が進んでおり、コンパクトさや使いやすさ、コスト削減効果が高く評価されている。また、カーボンニュートラル実現に向け、モジュール型ソリューションを用いた小規模実証を行う企業が増えており、実証試験と商業展開をつなぐ架け橋としても世界的に注目を集めている。
