シーメンス・エナジーの電解装置が日本のグリーン水素プロジェクトに採用
福島県田村市で半導体産業向け石英ガラス製造工程を脱炭素化
シーメンス・エナジーは2025年7月3日、同社の電解システムが日本国内の重要なグリーン水素プロジェクトに採用されたことを発表した。本プロジェクトは福島県田村市で実施され、半導体産業向け石英ガラスの製造工程の脱炭素化を図るとともに、地域の水素経済発展の基盤づくりに貢献する。今回の導入により、シーメンス・エナジーは日本の水素市場への参入を果たし、クリーンエネルギーソリューションの推進に対する同社のコミットメントを示す。
本プロジェクトは、株式会社巴商会、ヒメジ理化株式会社、山梨県企業局、株式会社やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)が共同で進める取り組みであり、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けている。日本国内で発電された再生可能エネルギーを使用し、地域に根ざした水素エコシステムの構築を目指す。また、グリーン水素の産業利用を通じて、経済産業省が掲げる産業界の脱炭素化および地域エネルギーレジリエンスの強化を後押しする。
シーメンス・エナジーのプロトン交換膜(PEM)電解装置は、柔軟な制御性、高速な応答時間、コンパクトな設置面積を備えており、再生可能エネルギーとの統合に最適な技術とされる。このPEM電解装置は、太陽光や風力などの再生可能エネルギー由来の電力を用いて、水を水素と酸素に分解。迅速な起動と柔軟な運用が可能な設計であり、再生可能エネルギーの高い変動性に対応しながら産業利用を進めるうえで、系統対応力や省スペース性が求められる日本のような環境に特に適している。
本システムは年間最大1,900トンのグリーン水素を生産可能で、ガソリン車4,000台超の排出削減に相当する。生産されたグリーン水素は酸素とともに、田村市にあるヒメジ理化の工場にて石英ガラスの製造に活用され、日本の半導体産業に不可欠な部品の、よりクリーンな製造プロセスを実現する。さらに、余剰分の水素は近隣の需要家に供給され、地域における水素供給ネットワークの基盤としても機能する。
シーメンス・エナジー株式会社のラッセル・ケイト代表取締役社長兼CEOは「日本はエネルギーの未来に向けて大胆なビジョンを掲げており、私たちはそれを支援できることを光栄に思います。日本市場への参入は、グリーン水素分野における日本の可能性に対する確信と、世界水準の電解装置ソリューションを通じて、半導体のような持続可能なハイテク産業の発展を支援するという当社のコミットメントを示すものです」と述べている。