富士電機と三菱ガス化学、水素燃料電池システムの共同実証で検討開始
「メタノール改質型水素燃料電池システム」の商用化に向けた実証
富士電機と三菱ガス化学は、燃料電池と、メタノールを原料とする水素生成器を統合した発電システムの共同実証に向けた検討を開始した。両社の強みを結集し、水素燃料電池を幅広い地域・施設に向けて提供することを目指す。

両社は、メタノールから水素を生成し発電するまでを効率的かつ低コストに行う「メタノール改質型水素燃料電池システム」の商用化に向けた実証(2026年度中に開始予定)の検討を始める。三菱ガス化学の環境循環型プラットフォーム「CarbopathTM」※1によるグリーンメタノールを利用することで、メタノール改質時に水素と共に発生するCO2をオフセットする。これによりクリーンエネルギーとして、データセンターや工場などにおける停電時のバックアップ電源やピークカットのための発電システム等、効果的な用途への適用に向けた市場開拓と創出を推し進める。
水素と酸素を化学反応させて電気を発生させる水素燃料電池は、CO2を排出しないクリーンな発電方式として期待されるが、燃料である水素の貯蔵や輸送に関する技術の確立やコスト面での制約が課題となっている。水素を別の状態や材料に変換して貯蔵・運搬する水素キャリアの一つであるメタノールは、国内で一般的に流通している圧縮水素(20 MPa)と比較して、同じ物流体積当たり約6倍量の水素分子を貯蔵・輸送できる(摂氏25度で計算)。また、メタノールは常温常圧下で液体であるため貯蔵・輸送が容易で、既存インフラの活用が可能であることから、メタノールを用いて消費地で水素を生成する手法は有力な選択肢とされる。
富士電機は、1998年に産業用燃料電池を製品化し、これまで庁舎や病院、大学など国内外で100台以上を納入、燃料電池システムとして20年以上の運転実績を有する。培ってきた燃料電池の製造技術やパワーエレクトロニクス技術を活かし、トヨタ自動車の燃料電池自動車「MIRAI」に搭載される水素燃料電池モジュールを使用した、低コストで高い応答性を実現する水素燃料電池システムの開発を進めている。
三菱ガス化学は、メタノールの製造から販売、用途開発までを一貫して行う世界でも屈指のメタノール総合メーカーで、近年ではCO2やバイオマス等から生成したグリーンメタノールを軸とした環境循環型プラットフォーム「CarbopathTM」の社会実装に向けた取り組みを進める。メタノール改質水素製造技術は40年にわたり自社で培っており、メタノール改質による水素利活用を加速するべく、Methanol Reformer社とElement 1®社との戦略的提携※2のもと、ユニット型水素生成器の国内実証を検討する。
※1 「CarbopathTM特設サイト開設のお知らせ」
※2 三菱ガス化学、Methanol Reformer社、Element 1社と戦略的提携を発表(2025年2月4日発表)