JFEエンジ、国内初となる船舶・発電向け大型アンモニア混焼エンジンの販売開始
混焼率50%超、ディーゼル専焼時と同等の熱効率
JFEエンジニアリングは、カーボンニュートラル燃料であるアンモニアと重油との大型中速混焼エンジンの開発に国内で初めて*¹成功し、販売を開始した。同社は、船舶用機器、発電設備で多数実績を有するEverllence France社*²(旧MAN Energy Solutions France社)4ストロークPCシリーズの最新機種であるS.E.M.T Pielstick PC2.6B CRディーゼルエンジン*³をベースにアンモニア混焼技術の開発を進め、3気筒試験機による重油とのアンモニア混焼実証試験を経て、社会実装において現実的なアンモニア50%混焼率(熱量比)を可能とした7MW超*⁴の大型中速混焼エンジンを商品化した。

本機はレトロフィット*⁵対応を開発コンセプトとしており、重油専焼機*⁶として導入した場合でも、最小限の改造でアンモニア混焼機に転換することができる。この開発コンセプトにより、納入時は重油専焼機として稼働させ、アンモニアの安定供給が可能となった時点でアンモニア混焼機に仕様転換が可能。またデュアルフューエルエンジンとして状況に合わせ運転モードをアンモニア混焼、重油専焼に切り替えることができるため、より柔軟な運用が可能となる。
アンモニア燃料は、直接燃焼によりCO₂削減が可能だが、難燃性であるため未燃アンモニア(NH₃)の低減、燃焼特性として生成する温暖化係数の高い一酸化窒素(N₂O)の抑制、また燃料中に窒素に起因して発生する有害物質である窒素酸化物(NOx)の抑制、熱効率の向上が技術課題になる。JFEエンジニアリングでは数値解析によるアンモニア燃焼研究を実施し、実証試験でその研究成果を反映させ、これらの課題を解決した。また排ガス処理触媒を併用することにより、未燃アンモニアをほぼ排出させることなく、N₂O、NOxも極小に抑えることに成功した。さらに出力はディーゼル専焼時比で85%を実現し、ディーゼル専焼時と同等の熱効率を得た。

JFEエンジニアリングでは、当初は脱炭素化の手法が限られる離島発電所などの発電装置としての販売を行い、市場動向に合わせて舶用エンジンに必要な船級取得を計画し、船舶用・発電用両面での販売を予定する。また今後も更にアンモニア混焼率を上げる実証試験を市場要望にあわせ実施し、混焼率80%での商用化を視野に入れる。
*1 当社調べ 2025年11月時点
*2 2025年6月にMAN Energy SolutionsよりEverllenceに社名変更(本社:ドイツ アウグスブルグ)。仏Everllence France社は独Everllence SE社の一部門
*3 製品紹介 JFEディーゼルエンジン PC2.6 B / PC2.6 B CR。PC2.6B CRはJFEがEverllence France社と共同開発を行ったライセンスエンジン
*4 出力は7.7MW~11.5MWまでカバー
*5 既存の機器を新しい技術や部品で更新・改良することを指す用語
*6 PC2.6B CR コモンレール電子噴射燃料噴射仕様機をレトロフィット対応


