欧州域で開発が進む二酸化炭素回収貯留(CCS)プロジェクトで協業
川崎汽船のロンドンを拠点とする子会社“K” LINE ENERGY SHIPPING (UK) LIMITED(KLES)と海洋サービス事業者であるYinson Production(Yinson注1)は、浮体式液化CO2貯蔵・圧入ユニット(FSIU注2)および液化CO2輸送船を共同開発し、主に欧州域で開発が進められている二酸化炭素回収貯留(CCS)プロジェクトに関し共同で案件を推進していくことを目的に、覚書を締結した。

CCSプロジェクトにおいて、陸上CO2受入基地の用地確保が難しい場合や、受入基地から貯留地迄の距離が長くパイプラインの延長が必要な場合等に、洋上にて液化CO2を貯蔵・圧入することが可能であるFSIUは有望な選択肢であり、Yinsonが参画するノルウェーの“Havstjerne”CCSプロジェクトをはじめ、複数のプロジェクトにおいて導入検討が進められている。Yinson傘下のStella Maris CCS社は、‟Havstjerune”CCSプロジェクト権益の40%を保有する。
Yinsonは、浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO注3)および浮体式石油・ガス貯蔵積出設備(FSO注4)を運営しており、オフショアエネルギー分野におけるエンジニアリング、設計、運用において幅広い専門知識を有する。また、川崎汽船グループは、液化ガス輸送船の保有、運航および管理において長い歴史と多様な実績を有しており、2024年以降、KLESは世界初の本格的なCCSプロジェクトに従事する液化CO2輸送船2隻の船舶管理を行う。
2018年以降、川崎汽船とYinsonはFPSO事業で協業を開始し、現在は2隻を共同保有。FPSOとFSIUはどちらも浮体式で共通点が多く、それぞれの豊富な実績と知見を活用し、共同で欧州顧客に対しFSIUを用いた液化CO2輸送を提案していくことで合意に至った。陸上で回収されたCO2を液化CO2輸送船でFSIUまで輸送し、FSIUから海底の地下貯留層に圧入する。CCSプロジェクトにおけるバリューチェーンのうち液化CO2の輸送と圧入を一体化してソリューションを提供することで、脱炭素化社会の実現への大きな貢献を目指す。
(注1)Yinsonは、FPSOを世界規模で保有・運営するリーディングカンパニー。現在10隻のFPSOを保有し、2048年までに190億ドルを超える受注残を誇り、世界10か国に拠点を展開する。
(注2)Floating Storage and Injection Unitの略。洋上で液化CO2を貯蔵・圧入する設備。液化CO2を海底の地下貯留層に圧入し、長期貯留する。
(注3)Floating Production, Storage and Offloadingの略。洋上で原油・ガスを生産し、生産した原油をタンクに貯蔵し、直接タンカーへ積み出しを行う設備。
(注4)Floating Storage and Offloadingの略。洋上で原油を貯蔵し、直接タンカーへ積み出しを行う設備。FPSOと異なり、生産設備は持たない。