日機装、水素航空機向け液化水素ポンプで2次試作の実液試験に成功
高速回転技術を進化、水素航空機の実用化へ一歩前進
日機装は、水素航空機向け液化水素ポンプの2次試作の実液試験に成功した。本ポンプはモータ一体型で、液化水素(-253℃)により満たされた極低温の状態(浸漬状態)で運転する。1次試作の試験では、世界で初めて浸漬状態の小型電動モータによる高速回転を実現した設計で、液化水素を送り出すことに成功した。今回の2次試作の試験では、30,000rpmの高速回転を維持しつつ、吸い込み性能を約2倍に向上し、流量を1.2倍、吐出圧力を1.4倍に増加させることに成功。水素航空機の実用化に向けて、性能向上を達成した。

 燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素を燃料とする水素航空機は、航空分野の脱炭素に向けた次世代の航空機として有力視されており、水素は液化すると気体の800分の1まで体積を圧縮できるため、液化水素を燃料に採用する。
 川崎重工業は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」に「水素航空機向けコア技術開発」を提案し、2021年11月に採択され、水素航空機の研究開発を進めている。日機装は川崎重工業から再委託を受け、液化水素ポンプの開発を担当する。
 日機装は、燃料タンクから水素燃料を昇圧してエンジンポンプへ送液するブースタポンプを開発するが、航空機用ポンプには小型・軽量化が求められるうえ、水素は低密度で昇圧が困難という課題があった。2023年6月に実液試験を実施した1次試作では、小型・軽量化のため、従来のポンプよりも高速回転が可能な電動モータを開発。そのうえで、熱収縮率の異なる金属で構成されるポンプを、極低温の液化水素環境下で高速回転させるという技術的課題をクリアしている。
 今回の2次試作では、ポンプ吸い込み部で液体の流れを整えるインデューサを新設計し、インペラ(羽根車)の多段化も実施した。この改良により、高速回転を維持しつつ、実用化に近づく仕様へと発展させている。
試験の成果と今後の展開
試験は、JAXA能代ロケット実験場(秋田県能代市)で2025年6月に実施し、ポンプの分解点検や測定データの詳細な分析などを経て、良好な試験結果を得たことが確認された。今回の試験で得られた技術的な知見を生かし、さらなる改良を行うことで、最終的に供試体ポンプを製作する。供試体ポンプは、2026年3月までに川崎重工業に納品され、その後の燃料供給システム検証に活用される予定。

