エア・ウォーター炭酸とエア・ウォーター・ハイドロが合併

新商号「エア・ウォーター・グリーンデザイン株式会社」

 エア・ウォーターは、脱炭素ソリューションやクリーンエネルギーにかかわる新たなビジネスモデルの構築を進めるため、2024年4月1日付をもって、子会社で炭酸ガス及びドライアイスの製造・販売を行う「エア・ウォーター炭酸」が、水素の製造・販売を行う「エア・ウォーター・ハイドロ」を吸収合併し両社を統合する。統合後の新商号は「エア・ウォーター・グリーンデザイン株式会社」。

 エア・ウォーターは、社会のカーボンニュートラル化を今後の大きな成長機会と捉え、グループの多様な事業と技術の融合を進めることで、脱炭素ソリューションやクリーンエネルギーにかかわる新たなビジネスモデルの構築に挑んでいる。

 こうした中、CO2の低減化に直結する製品ともいえる炭酸ガス・水素の事業インフラと関連技術を結集することで、グループシナジーを活かしたイノベーションを通じて、需要の拡大が見込まれるカーボンニュートラル市場に向けた事業展開を加速する。

 統合後の新会社では、今後、既存事業における製品の安定供給化と効率化の両立に取り組むとともに、低炭素水素の製造・供給やCO2の回収・利活用といった成長領域に経営資源を重点配分し、先行して技術や事業ノウハウを蓄積することで、中長期的な事業成長と社会のカーボンニュートラル化への貢献を目指す。

炭酸ガス事業と水素事業の特長

 エア・ウォーターグループは、祖業である産業ガスを基軸に、長年にわたり培ってきたCO2回収、水素製造、エネルギー供給など、社会の脱炭素化に貢献する豊富な技術や事業基盤を有する。

 炭酸ガス事業では、国内10カ所の製造工場で化学コンビナートや製油所から副生される炭酸ガスを回収・精製することによって社会に有用な炭酸ガス製品に転換し、全国の販売ネットワークを通じて溶接や飲料分野をはじめとする様々な顧客に供給しており、ドライアイスでは国内トップ※1

 また、低濃度のCO2排ガスから低コストでCO2を分離回収する技術※2を有するほか、回収したCO2を利活用し、化学原料や燃料となる合成メタン(e-methane)などに再利用する「カーボンリサイクル」技術の開発にも注力する。さらに、今後は、化石燃料ではなく木質チップや生物資源由来のCO2を原料とした「グリーン炭酸」の製造を検討しており、より環境負荷を低減した資源循環型のビジネスモデル構築を目指す。

 水素事業では、現在、国内14カ所のオンサイト水素ガス供給拠点と11カ所の圧縮水素製造拠点を持ち、世界最高水準の発生効率を誇る水素ガス発生装置「VHR」を全国に配備しながら国内における水素ガスサプライチェーンを拡充している。

 また、水素ガスの製造、貯蔵、運搬から使用方法に至る豊富な知見を活かし、CO2を排出しない水素製造技術の開発※3に注力するとともに、北海道鹿追町の「しかおい水素ファーム」では、家畜糞尿由来のバイオガスからカーボンニュートラルな水素を製造し、FCV(燃料電池自動車)に供給するなどの革新的な事業モデルの構築に取り組んでいる。

※1 ガスレビュー「ガスジオラマ2024」を参照
※2 2022年に小型CO2回収・利活用装置「ReCO2STATION」を開発したほか、さらに低コストで回収する技術開発をNEDO「グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」において進める。
※3 NEDO「水素社会構築技術開発事業」において、天然ガスやバイオガス等の主成分であるメタン原料から、高活性鉄系触媒を用いたメタン直接改質法により、CO2フリーの水素を高効率に製造する水素製造プロセスおよびシステムを開発。

統合新会社の概要

  1. 社名:エア・ウォーター・グリーンデザイン株式会社
  2. 統合方法:2024年4月1日付をもって、エア・ウォーター炭酸株式会社がエア・ウォーター・ハイドロ株式会社を吸収合併する方法により両社を統合。
  3. 資本金:480百万円
  4. 本社所在地:東京都港区虎ノ門
  5. 代表者:道志 年章
  6. 社員数:189名
  7. 株主:エア・ウォーター株式会社(出資比率:100%)
  8. 売上収益:約240億円(2022年度実績 合併前2社の合算値)

エア・ウォーター・ハイドロが甲信越地区・水素ガス製造拠点をリニューアル、生産能力増強

新潟県上越市の二本木工場に「VHR」設置

 エア・ウォーターグループにおいて、水素ガスの製造・販売を行うエア・ウォーター・ハイドロ株式会社(宮野 聡 代表取締役社長、以下:エア・ウォーター・ハイドロ)は、甲信越地区における水素ガスの安定供給体制を確立するとともに、生産能力を増強するため、同社の二本木工場(新潟県上越市)にエア・ウォーターが開発した世界最高水準の効率で天然ガスから水素ガスを発生させることができる水素ガス発生装置「VHR」を設置することを決定し、2021年8 月1 日にリニューアル工事に着手した。新工場の稼働開始は2022 年4 月の予定。

 エア・ウォーターグループは国内11カ所の圧縮水素製造拠点と、9カ所のオンサイト水素ガス供給拠点を有する国内屈指の水素メーカー。顧客の工場敷地内に発生装置を設置するオンサイト供給のほか、トレーラーやシリンダーによる供給など使用量や立地に応じた最適な供給形態で水素ガスを安定供給する。

 エア・ウォーター・ハイドロは、グループにおける水素ガス事業の中核会社であり、半導体・化学・ガラス・光ファイバー・造船・自動車・エネルギー・食品など幅広い産業分野のユーザーに水素ガスを供給し、全国各地で水素ガスの製造から輸送・販売までを一貫して手掛けている。

 今回、エア・ウォーター・ハイドロは2019 年にエア・ウォーターが開発した水素ガス発生装置「VHR」を二本木工場に設置し、生産プラントのリニューアルを実施する。これまで、二本木工場では、隣接する化学工場より水素ガス精製の原料ガスの供給を受けていたが、天然ガスを水蒸気改質して水素ガスを発生させる「VHR」を導入し、都市ガスの配管供給を受けることで、コスト合理化とともに、原料ガスの供給量に左右されない、自社単独での安定的な水素ガスの生産が可能となる。また、リニューアル後の生産能力は従来比1.3倍を計画しており、既存ユーザーにおける水素ガス需要の増加に対応するとともに、甲信越地区における販売を拡大する。

 エア・ウォーターグループでは、大口ユーザーを対象に「VHR」の導入を進めながら、水素ガス生産拠点の新設や既存拠点における生産能力の増強を図り、国内における水素ガスサプライチェーンの強靭化に取り組む。また、こうした水素ガスの製造・供給インフラと合わせて、長年にわたり産業用の水素ガス事業で培ったガス精製やガスハンドリングなどの技術を基軸に、今後エネルギー用途での水素ガス需要の拡大が見込まれる中、水素ステーション向けの供給システムや移動式水素ステーションの製作等を通じて、水素社会の実現に貢献する。

設備概要

  1. 所在地 :新潟県上越市中郷区藤沢 1241 番 2 (エア・ウォーター・ハイドロ㈱二本木工場)
  2. 設備能力 :水素ガス300N ㎥/h (「VHR-300」1 機設置)
  3. 水素ガス純度:99.999%以上
  4. 稼働開始 :2022 年4 月(予定)

エア・ウォーターグループの水素オンサイト・製造充填拠点

 エア・ウォーターグループは国内11カ所の圧縮水素製造拠点と、9カ所のオンサイト水素ガス供給拠点(自社拠点5拠点)を有し、最適な供給形態で水素ガスを安定供給している。

産業用水素の用途

 産業用の水素ガスは、半導体や液晶パネル製造における原料ガスの希釈や雰囲気用途、光ファイバー・ガラス製造時における燃焼ガス用途、ステンレス鋼などの金属熱処理の雰囲気用途などで使用されており、この多くは産業ガスメーカーが各工場へ水素ガスを供給する。このほか、製油所や石油化学工場では、原油から硫黄分を取り除く脱硫用途のほか、原料油脂を固める硬化剤やプラスチックなどの樹脂生成時の添加剤として使用しており、各工場内で水素を製造し自家消費されている。

水素ガス発生装置「VHR」

水素ガス発生装置「VHR」

 水素ガスの製造方法としては、アンモニアや苛性ソーダ、石油化学、製鉄などの大規模工場で副次的に発生する水素を精製する方法のほか、天然ガス(メタン)・メタノールの水蒸気改質、水電解などがある。 「VHR」は、世界最高水準の効率で天然ガスから水素ガスを発生させることができる自社開発装置であり、原料の天然ガスや稼動電力の低減にもつながる環境対応型のプラント。2019 年5 月よりエア・ウォーターの尼崎ガスセンターにおいて稼動を開始したのを皮切りに、同社の他拠点および顧客の工場にオンサイト方式で設置しており、今年度中に国内で計5 基が稼働予定。また、エア・ウォーターでは今後も「VHR」による供給拠点網を構築することで、安定供給に努める。

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