次世代高圧ガス容器「CubiTan」のアトミスがインドネシア国立研究革新庁、八千代エンジとMOU締結

インドネシアでの多孔性配位高分子(PCP/MOF)技術開発を3者で推進

左からBRIN長官 ラクサナ・トリ・ハンドコ氏、Atomis社 CEO 浅利大介氏、八千代エンジニヤリング 代表取締役社長執行役員 高橋努氏、BRINナノテクノロジー・マテリアル分野研究部門長 ラトノ・ヌルヤディ氏、駐インドネシア大使 金杉憲治氏

 多孔性配位高分子(PCP/MOF)を活用した次世代高圧ガス容器「CubiTan」を開発するAtomis社(本社:兵庫県神戸市、浅利 大介 代表取締役CEO)は、インドネシア国立研究革新庁(通称:BRIN、ラクサナ・トリ・ハンドコ 長官、以下「BRIN」)、および八千代エンジニヤリング株式会社(本店:東京都台東区、高橋 努 代表取締役社長執行役員、以下「YEC」)との3者において、2023年10月13日(金)にジャカルタのBRIN本省でインドネシアでのPCP/MOFの利活用を含めた技術開発に関するMOUを締結した。

 本MOUは、BRINのラクサナ・トリ・ハンドコ長官、駐インドネシア共和国特命全権大使 金杉憲治氏の立ち合いのもと、BRINのナノテクノロジー・マテリアル分野の研究部門長 ラトノ・ヌルヤディ氏、八千代エンジニヤリング代表取締役社長執行役員の高橋 努氏、Atomis代表取締役CEOの浅利大介氏によって調印された。

 ラトノ・ヌリヤディ氏は、MOFは金属材料と有機材料の間のエンジニアリングプロセスであり、これらを特定のナノメートルサイズの多孔質材料にパッケージ化すると説明し、「この協力により、科学的観点とインドネシアでの応用の両方の観点から共同研究を発展させることができることを期待している」と述べた。

 アトミス社CEOの浅利大介氏は、MOFをガス吸着剤として用いてナノレベルでガスを制御する、次世代のインテリジェント高圧ガス容器「CubiTan」によるスマートガスネットワーク構想の開発を進めていると述べた。

次世代高圧ガス容器「CubiTan」

 「CubiTan」は、軽量・小型・IoT機能を備えた立方体形状の高圧ガス容器。浅利CEOは「CubiTanがうまく活用されれば、現在高圧ガスシリンダーを使用しているガス供給のデジタル変革に貢献し、天然ガスやバイオガスの効率的な利用にも貢献することが期待されます」と述べ、「今回の連携により、MOFがさまざまな分野で広く活用されるとともに、多くの社会問題に適切に対処できるよう取り組みを強化することを期待している」とした。 

 一方、YECの代表取締役社長執行役員の高橋 努氏は、YECは総合建設・開発コンサルタントとしてインドネシアを含む国内外の社会インフラ整備を中心とした技術サービスを提供する会社であると説明した。

 同氏は、新技術を探求するためにさまざまな関係者との協力関係を発展させることの重要性を強調し、その一つがインドネシアで実施されるアトミスのMOF技術導入プログラムであるとした。そして、現在はBRINテクノロジーサービスセンターと連携し、インドネシアの高圧ガス容器に関する法規制への適合性検証、ガス貯蔵性能に関する技術検証、事業展開検証などの活動を行っていると説明した。

 「具体的には、私たちの目標はメタンガスなどのクリーンエネルギーの利用を拡大し、社会全体にとってメタンガスの利用可能性の多様性を高めることです」と高橋氏は強調した。

 「このスマートガスネットワーク構想により、インドネシアは大小多くの島々で構成されているため、これまでパイプの設置が困難であった地域への天然ガスやメタンガスの供給が可能になります。また、この活動がエネルギーの地産地消を促進し、エネルギーセキュリティを維持するとともに、グリーンエネルギーへの転換による脱炭素社会の実現に貢献し、ひいては社会に新たなソリューションを提供できることを願っています」と語った。

インドネシアのG20イベントで次世代高圧ガス容器「CubiTan(キュビタン)」を展示

パイプラインによらないガスのスマートグリッド構築を実現

 株式会社Atomisと八千代エンジニヤリング株式会社(本店:東京都台東区、高橋努 代表取締役社長執行役員)は、2022年10月27日~30日までインドネシアでG20科学技術イノベーション大臣会合のサイドイベントとして開催された「InaRI Expo 2022(Indonesia Resarch and Innovation Expo 2022)」の日本政府ブースで、Atomis社が開発している次世代高圧ガス容器「CubiTan(キュビタン)」を使った新たなガス流通システム構想の展示を行った。

次世代高圧ガス容器「CubiTan」(右)

 本構想は、より快適な暮らしを創るため、スマートガスネットワークを構築するもの。

 一般家庭で使用されるガスは、パイプラインを通じて気体のガスを供給する「都市ガス(メタンが主成分)」と、圧縮したガスをボンベに詰めて事業者が配送する「プロパンガス(プロパン・ブタンが主成分)」が用いられるが、日本でも都市部を除いた多くが後者の「プロパンガス」を使用している。

 メタンガスの液化はプロパンガスに比べて非常に難易度が高く、ガスの配送には重く大きいガスボンベを利用する必要があり、その方式は約100年間変わっていない。

 Atomis社が開発している次世代高圧ガス容器CubiTanは多孔性配位高分子(PCP/MOF)を使用して、今まで圧縮が難しかったメタンガスをナノレベルでコントロールすることが可能とされる。これにより、今まで非常に重く大きいガスボンベの小型化・軽量化というイノベーションが実現する。

 本構想では、八千代エンジニヤリングとAtomis社の共創により、「配送の最適・省資源化」や「残容量把握による利用者の利便性向上」によるパイプラインによらないガスのスマートグリッド構築を実現するとしている。

スマートガスネットワーク構想

 八千代エンジニヤリングは、国内トップクラスの総合建設コンサルタントとして、国土交通省をはじめ官公庁から公共事業を受託し、社会インフラや環境保全に関する技術コンサルティングサービスを設立より約60年にわたって提供している。近年は、これまで培った技術ノウハウを民間企業へも提供しビジネスの領域を広げている。

多孔性配位高分子(PCP/MOF)

 多孔性配位高分子(PCP)は金属有機構造体(MOF)と呼ばれ、京都大学高等研究院iCeMS北川進特別教授が1997年に世界に先駆けて開発したもの。金属と有機化合物が規則性を持ち連続的に三次元構造体を形成し、ナノレベルに制御された多孔性を有する物質の総称となる。この分子はマルチファンクションを持つのが特徴で、この機能を利用し、幅広い産業での活躍が期待されている。

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