家畜ふん尿由来の低炭素水素活用サプライチェーン実証事業が「土木学会環境賞」を受賞

エア・ウォーター、鹿島建設、日鉄P&E、日本エアープロダクツが共同実施

 エア・ウォーター株式会社(代表取締役会長・CEO:豊田 喜久夫)、鹿島建設株式会社(代表取締役社長:押味 至一)、日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社(代表取締役社長:元内 利文)、日本エアープロダクツ株式会社(代表取締役社長:ウィルバー・モック)の 4 社が共同で実施する環境省の委託事業「家畜ふん尿由来低炭素水素を活用した水素サプライチェーン実証事業」(以下「本事業」)が、「2019 年度の土木学会環境賞(Ⅱグループ)※1」を受賞した。

 本事業は、環境省の委託事業である「地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択され、2015 年度から実施されている。北海道河東郡鹿追町に家畜バイオマス由来の水素製造供給施設「しかおい水素ファームⓇ」を設置し、鹿追町ならびに帯広市において家畜ふん尿由来水素を活用した水素サプライチェーンを実証するもの。
 本事業を通じて、バイオガスの新たな用途として水素利用の有効性を具体的な実績とともに示し、家畜ふん尿に起因する環境汚染や廃棄物の課題解決、およびエネルギー使用に伴う CO2 排出の削減に寄与するなど、酪農地域におけるエネルギーとしての水素の適応性を明らかにしたことが評価され、今回の受賞となった。

 なお本事業は、今後水素サプライチェーンを他地域へ水平展開していくうえで重要となる地域内での水素運搬、貯蔵、更に災害時の活用など更なる課題の解決を図るため、当初 2019 年度までの実施予定となっていたが、期間を延長して実証を行うことになった。本事業を通じて、地域の再生可能エネルギーや未利用エネルギーを活用した一貫した水素サプライチェーンの構築を目指すとともに、地球温暖化対策に資する低炭素水素を寒冷地において本格利用するための課題を明らかにし、地産地消の水素エネルギー社会の実現に向けて、引き続き貢献する。

※1:土木学会環境賞とは、1999 年度に公益社団法人土木学会により設立されたもので、この内「Ⅱグループ」は同学会の表彰規定により「土木技術・システムを開発・運用し、環境の保全・創造に貢献した画期的なプロジェクト」に授与されるもの。

簡易型水素充填車(左)と当事業関係車両3両と水素ステーション(右)
受賞した実証事業の概要

(1)事業概要
・事業名称:家畜ふん尿由来水素を活用した水素サプライチェーン実証事業(環境省 地域連携・低炭素水素技術実証事業)
・事業者:代表事業者 エア・ウォーター株式会社、共同事業者 鹿島建設株式会社、日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社、日本エアープロダクツ株式会社
・事業期間:2015 年度~2019 年度(当初は 5 年間、その後 2021 年度(予定)まで延長)
・事業地域:北海道河東郡鹿追町および帯広市
・事業内容:家畜ふん尿のメタン発酵施設である鹿追町環境保全センター中鹿追バイオガスプラントからバイオガスの供給を受け、センター敷地内に水素の製造・供給施設である「しかおい水素ファームⓇ」を設置し、水素ガスを製造。製造した水素は、環境保全センター内に定置型水素ステーションを設置し、燃料電池自動車・燃料電池フォークリフトの燃料として利用しているほか、純水素型燃料電池用のエネルギーとして環境保全センター内のチョウザメ飼育施設のエアレーション電源・水温保持のための熱源としても利用しており、2019 年9月までは畜産農家や帯広市内の観光施設にも水素を運搬し、電気と温水を供給した。
 当初事業期間は 2015 年度から 2019 年度の5年間だったが、水素の利用拡大の検討を深めるため 2021 年度までの 2 年間延長(予定)となった。
・備考:本事業は、環境省からの委託事業により実施しているため、事業の内容については変更される可能性がある。

(2)「しかおい水素ファームⓇ」概要
・所在地:北海道河東郡鹿追町鹿追北4線5 鹿追町環境保全センター内
・運営者:エア・ウォーター株式会社
・設備概要:水素製造設備 能力・・・約 70Nm3/h、水素出荷設備 圧力・・・19.6MPa(カードル充填)、水素ステーション 圧力・・・70MPa(燃料電池自動車用)、35MPa(燃料電池フォークリフト用)

今後の事業展開

 帯広市内・鹿追町内の農業倉庫にて FC フォークリフトへの水素供給を行うほか、帯広市内においては、寒冷地での水素利用設備の導入を目指し、非常時の電力ニーズにも対応した水素吸蔵合金・燃料電池利用システムの実証を行う予定。これらの取り組みを通じて、水素の普及展開への貢献を図る。

共同事業者の概要

(1)エア・ウォーター株式会社(代表事業者)
 エア・ウォーター株式会社は、産業ガスメーカーが製造する国内の水素市場の約 12%を担う産業ガスメーカー。国内 9 ヵ所の圧縮水素製造拠点と 6 ヵ所のオンサイト供給拠点を所有する。産業ガスとしての水素ガス事業は、社内のガスプロセス技術やエンジニアリング技術により、製造から精製・貯蔵・輸送・供給といった一連のサプライチェーンにおいて確立された事業となる。エア・ウォーター株式会社は、この産業ガスで培った技術を核として、将来の水素社会の実現に貢献する。

(2)鹿島建設株式会社(共同事業者)
 鹿島建設株式会社は、1986 年頃からメタン発酵バイオガス化技術に関する研究開発を開始し、バイオガスプラントの設計・建設・維持管理および事業の実績を有する。特に「固定床式メタン発酵技術」を開発し、芋焼酎粕や生ごみなどをメタン発酵しバイオガス化を行う施設を国内に 10 ヵ所以上建設した。また、北海道砂川クリーンプラザ等では、グループ会社の鹿島環境エンジニアリング株式会社が維持管理運営を行う。本事業を通じて、バイオガス化から水素の製造・貯蔵・輸送・供給・利用という一貫したバイオマスエネルギーの地域自立型モデルの構築を経験することで、地域の未利用エネルギーを有効利用した地産地消型エネルギーコミュニティの効果的な形成に積極的に取り組む。

(3)日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社(共同事業者)
 日鉄パイプライン&エンジニアリング株式会社(以下「日鉄 P&E」)は、日本製鉄株式会社のセグメント会社である日鉄エンジニアリング株式会社の 100%子会社として、各種パイプライン分野および天然ガス・LNG 等のエネルギー関連プラント分野においてエンジニアリング事業を展開する。水素ステーション事業においては、水素供給の世界的企業である米国エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社との協業により、水素ステーションの設計・建設・メンテナンスを行っている。2019 年 3 月に運転を開始した東邦ガス株式会社セントレア水素ステーションでは、しかおい水素ファームⓇでの実証成果に基づき TYPE2 複合蓄圧器を採用する等の先進的な技術を採用し、国内初の燃料電池バス対応のオンサイト型差圧充填式水素ステーションを実現した。
 日鉄 P&E は、50 年以上にわたって国内の主要な天然ガス・都市ガス輸送パイプラインの建設に携わるとともに、LNG サテライト設備や出荷・受入施設等のプラント類を提供し、エネルギー・インフラの整備に貢献する。

(4)日本エアープロダクツ株式会社(共同事業者)
 日本エアープロダクツ株式会社は、米国エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社の 100%子会社。米国エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ社は、工業ガス・特殊ガスや各種ガス関連の機器設備、またこれらに関連する技術などの提供を通じて、70 年以上にわたって顧客の生産性・エネルギー効率、そして持続可能性の向上に貢献している。現在、50 か国以上において約 17,000 人の従業員が、エネルギーや環境の切り口から効率的なソリューションを提供しており、新興市場の開拓にも積極的に取り組む。さらに、水素精製・石炭ガス化・天然ガス液化など広範囲にわたって事業を展開。2013 年度には全世界で売上高 102 億ドルを計上した。エアープロダクツは 60 年以上の水素事業を経験しており、本事業ではバイオガスを精製する分離膜技術とともに、水素ステーション技術を提供する。