岩谷産業、ハノイ市に駐在員事務所を開設。ベトナムで情報収集、事業チャンスの拡大

 岩谷産業は、7月中旬を目処に、ベトナム・ハノイ市に駐在員事務所を開設し、現地での合弁・独資事業など、新規事業の発掘並びに既存商権拡大などを目指した活動を開始する。正式名称は、「ハノイ駐在員事務所」。事務所はハノイ市内に設置予定で、現在選定中。今後の予定は、6月初旬に政府への開設申請を行い、許可後の7月中旬にはすみやかに事務所開設を目指す。

 岩谷産業は、日本国内95拠点のみならず、シンガポールに支社を、北京、マニラ、ジャカルタ、パース、プラハに駐在員事務所を開設しているほか、現地法人を中国、香港、台湾、韓国、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、米国、ドイツ、オーストラリア等の国・地域に展開するなど、ガス&エネルギーを中心にマテリアルまで広範な事業領域を世界規模で展開する。中でもベトナムに隣接する中国では、40年以上の取引関係があり、産業ガス分野始めケミカル、金属製品、食品に至るまで、様々な事業活動で中国全土に関連会社含め37拠点を有する。
 
【ベトナム・ハノイ市進出に当たっての理由】
 ベトナム全体が、同社の中核事業である産業ガス事業で、市場的に大きな潜在力を秘めていると認識し、駐在員事務所を起点として、岩谷産業ならではのオーガナイズ機能を発揮し、多くのビジネスに結びつける。なお、ハノイ市は行政機構の中枢が集積し、許可等の取得並びに情報収集面において有利であるなどの理由により、駐在員事務所を開設することにした。
 
【ベトナム・ハノイ市進出の背景】
1.ベトナムへの海外投資の高まり
 今回、ベトナムに進出し、ハノイ市に駐在員事務所を開設するにあたって、その背景の一つに、近年鮮明になったベトナムへの海外からの直接投資の拡大が上げられる。同国では、2007年1月に11年以上の期間を経て、悲願のWTOへ正式加盟が果たされ、経済活動がより活発化することが予想される。また、このWTO加盟に向けて、昨年は国際基準に準じた国内法が整備、多くの法改正が行われた事も特筆される。これまでの外国投資法、国内投資奨励法に代わり、共通投資法、統一企業法が施行されたことは、外資企業にとって国内企業と同じ法律の下で事業展開が可能となる事と理解でき、手続きの簡素化、投資の自由化が大幅に進む。現実に昨年は、アメリカのインテル社始め、韓国製鋼最大手のポスコなどの大型投資が相次ぎ新規投資・拡大投資合計で113億ドルと過去最高水準となり、日本からも大手メーカー進出の後を追う形で、部品メーカーの進出も拡大傾向にある。

2.日系企業の海外事業展開先としての高評価
 特に日系企業の傾向として、以前はホーチミンを中心とした南部地域の進出が多かったものが、05年以降はハノイ市を中心とした北部地域への進出が60〜70%を占め、今後もこの傾向は続くと考えられるため、ガスや副資材並びに生産機械等をビジネスとする岩谷産業としては、商権拡大が期待できること。2006年度・国際協力銀行の調査でも、日系企業は事業展開先としてベトナムに対し、他のアジア各国に比して「安価な労働力」「優れた人材」「政治・社会情勢が安定」という項目に高い評価を与えている。特にベトナムの中心都市であるハノイ市、ホーチミン市の一般工クラスの月別賃金は、識字率が9割と高いにもかかわらず、他のアジア主要都市と比較しても、2005年時点で最低水準にあり、高い質と低いコストを両立した優れた労働力を持つと考えられる。

3.物流インフラの改善と、カントリーリスク分散の担い手
 また、北部は中国広西壮族(チワン)自治区と隣接している上、広東省にも近く、物流面においても岩谷産業中国内グループ会社と有機的連携の図れる事業展開が期待できることも挙げられる。ここで、同国が投資先として度々課題だと言われてきたインフラの未整備も、昨年12月にチワン自治区省都・南寧とベトナム国境・友誼関の間の高速道路が全線開通したことで、インドシナ半島を横断する物流動脈が誕生し、広州市-ハノイ市が約12時間で結ばれるなど大きく改善されてきている。このことからも、中国からの部品の調達や輸出増加の可能性、「他国のリスク分散の受け皿」としての役割もにわかに現実的になっている。

 

■事務所概要
事務所名   岩谷産業株式会社 ハノイ駐在員事務所
         (Iwatani International Corporation, Hanoi Representative Office)
所在地        ハノイ市内を予定
社員       事務所長(岩谷産業駐在員)  1名
       現地スタッフ          3名
       合計               4名


■会社概要
商号      岩谷産業株式会社
英文 社名   Iwatani International Corporation
設立     1945(昭和20)年2月2日
創業     1930(昭和5)年5月5日
代表者    代表取締役社長 牧野 明次
本社所在地  大阪府大阪市中央区本町3丁目4番8号
資本金    200億96百万円(2006年5月31日現在)
売上高    4979億20百万円(単独業績:2005年度実績)
         6400億73百万円(連結業績:  〃    )
事業内容  LPガスを中心にLNG、水素まで、エネルギーの輸入・製造・販売を行うと共に、空気分離ガス等の産業ガス・ガス設備の製造及び販売、機械プラント・FA、各種マテリアルの輸出入・販売も行う、ガス&エネルギー企業