再エネを利用した世界最大級の水素製造施設「FH2R」が完成

 NEDO、東芝エネルギーシステムズ(株)、東北電力(株)、岩谷産業(株)が、2018年から福島 県浪江町で建設を進めてきた、再生可能エネルギーを利用した世界最大級となる10MWの水素製造装置を備えた水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field (FH2R))」が2月末に完成し、稼働を開始した。

 本施設は再生可能エネルギーなどから毎時1,200Nm3 (定格運転時)の水素を製造する能力 を持ち、電力系統に対する需給調整を行うことで、出力変動の大きい再生可能エネルギーの電力を最大限利用するとともに、クリーンで低コストな水素製造技術の確立を目指す。また、製造された水素は、定置型燃料電池向けの発電用途、燃料電池車や燃料電池バス向けのモビリティ用途などに使用される予定。完成に伴い、3月7日、施設の敷地内で開所式を開催した。

完成した福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)

完成した福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)

1.実証事業の概要

 水素は電力を大量に長期で貯蔵することができ、長距離輸送が可能で、燃料電池によるコジェネレーション(熱電併給)や、燃料電池車など、さまざまな用途に利用できる。将来的には、再生可能 エネルギー由来の水素を活用し、製造から利用に至るまで一貫して二酸化炭素(CO2)フリーの水素供 給システムの確立が望まれている。また、政府が2017年12月に公表した「水素基本戦略」では、再生可能エネルギーの導入拡大や出力制御量の増加に伴い、大規模で長期間の貯蔵を可能とする水素を用いたエネルギー貯蔵・利用 (Power-to-Gas)が必要とされている。

 この水素を用いたエネルギー貯蔵・利用には、出力変動の大き い再生可能エネルギーを最大限活用するための電力系統需給バランス調整機能(ディマンドリスポンス) だけでなく、水素需給予測に基づいたシステムの最適運用機能の確立が必要となる。こうした背景のもと、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東芝エネ ルギーシステムズ株式会社、東北電力株式会社、岩谷産業株式会社は、再生可能エネルギーの導入拡大を見据え、ディマンドリスポンスとしての水素活用事業モデルと水素販売事業モデルの確立を目指 した技術開発事業に取り組んでいる。

 2018年7月から福島県浪江町(同町大字棚 塩地区 棚塩産業団地内)で建設を進めていた、太陽光発電を利用した世界最大級となる10MWの水素 製造装置を備えた水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(Fukushima Hydrogen Energy Research Field (FH2R))」が2月末に完成し、稼働を開始した。 本施設では、電力系統に対する需給調整を行うことで、蓄電池を使わずに出力変動の大きい再生可能エネルギーの電力を最大限利用するとともに、クリーンで低コストな水素製造技術の確立を目指す。また、製造された水素は、定置型燃料電池向けの発電用途、燃料電池車や燃料電池バス向けのモビ リティ用途などに使われる予定。

2.「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」の概要

 FH2Rでは、18万m2 の敷地内に設置した20MWの太陽光発電の電力を用いて、世界最大級となる 10MWの水素製造装置で水の電気分解を行い、毎時1,200Nm3 (定格運転時)の水素を製造し、貯蔵・ 供給する。水素の製造・貯蔵は、水素需要予測システムによる市場の水素需要予測に基づいて行われ、 電力系統側制御システムによる電力系統の調整ニーズにあわせて、水素製造装置の水素製造量を調節することにより、電力系統の需給バランス調整を行う。

 この水素の製造・貯蔵と電力系統の需給 バランス調整の最適な組み合わせを、蓄電池を用いることなく水素エネルギー運用システムにより実現することが今回の実証運用の最大の課題となる。 このため、FH2Rでは、今後、実証運用を行い、それぞれの運転周期の異なる装置で、電力系統のディマンドリスポンス対応と水素需給対応を組み合わせた最適な運転制御技術を検証する。なお、FH2Rで製造した水素は、主に圧縮水素トレーラーやカードルを使って輸送し、福島県や東京都 などの需要先へ供給する予定。

(参考)各社の役割分担
  • 東芝エネルギーシステムズ(株) プロジェクト全体の取り纏めおよび水素エネルギーシステム全体
  • 東北電力(株) 電力系統側制御システムおよび電力系統関連
  • 岩谷産業(株) 水素需要予測システムおよび水素貯蔵・供給関連