歯髄再生治療のアエラスバイオ、歯髄幹細胞バンクを開設。2023年度に年間売上高10億円規模目指す
不用歯から採取した歯髄幹細胞を培養し長期間保管
エア・ウォーターのグループ会社で、歯髄再生治療事業を展開するアエラスバイオ株式会社(代表取締役 菊地 耕三、以下、アエラスバイオ社)は、不用歯から採取した歯髄幹細胞を培養し、長期間保管を行う「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」を9 月2 日より開始した。
事業の拠点は、アエラスバイオ歯髄細胞培養センターの1ヵ所(神戸市)と提携歯科医院の 3 ヵ所(神戸市、愛知県大府市、東京都府中市)。※大府市、府中市の医院は、現状においては不用歯の抜歯のみ。
本事業の立ち上げにより、将来、虫歯などで歯の神経を抜くことになった際に、保管していた歯髄幹細胞を用いて、歯髄を再生させる治療を行うことができるようになり、歯科分野の再生医療が本格化するとしている。
エア・ウォーターは、2018 年にアエラスバイオ社を設立し、歯髄幹細胞を用いた歯髄再生治療の事業化に着手、同社と連携する「RD 歯科クリニック」において、今年 6 月に歯髄幹細胞を用いた歯髄再生治療を世界で初めて実用化した。
今回、アエラスバイオ社では、乳歯や親知らずなどの不用歯から歯髄幹細胞を取り出し、培養したうえで長期凍結保管を行う「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」を新たに開始する。「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」事業によって、乳歯が抜ける時など不用歯が発生するタイミングで歯髄幹細胞を採取し、長期間保管しておくことで、将来、虫歯や歯髄炎などが原因で歯の神経を抜くこととなった際に、その歯髄再生治療に用いることができる。
また、歯髄幹細胞は血管や神経組織を誘導する能力が高いため、将来的には、骨や血管、臓器の再生など、医科分野の再生医療に広がる可能性を秘めている。アエラスバイオ社では、不用歯を“未来を守る備え”として保管することで、人々の健やかなくらしに貢献する。
歯髄再生治療における適用範囲の拡大
今年 6 月より実用化された歯髄再生治療は、不可逆性歯髄炎(虫歯により神経が元に戻らず、抜髄が必要な症状)によって歯の神経を抜いた直後のみを治療の対象としている、2021 年4 月には過去に抜髄治療済みの歯に対しても治療の適用範囲を拡大する計画。抜髄治療者のうち治療対象となる患者は国内で約1,200 万人いると推計されており、今後、より多くの方が歯髄再生治療の対象となる。また、2024 年を目途に、2 親等以内の親族の歯から採取した歯髄幹細胞による治療を実現すべく、研究開発を進めている。
アエラスバイオ社は、歯髄再生治療が有する社会的意義を踏まえ、歯髄再生治療を待ち望む多くの期待に応えることができるよう、不用歯を活用した再生治療をいつでも広く受けてもらえるシステムを構築することで、虫歯による歯喪失リスクの低減やQOL(生活の質)の向上に貢献するとしている。
今後、アエラスバイオ社は、連携する「RD 歯科クリニック」と共に、歯髄再生治療の更なる普及を進める。10 月より全国の歯科医院を対象とした歯髄再生治療導入のセミナーを定期的に開催し、治療に関する認知度の向上を図る。また、歯髄再生治療の導入を希望する歯科医院へ講習会を開催し、技術指導等を行うことにより、全国各地で歯髄再生治療が受けられる体制を構築する。
エア・ウォーターの関連会社で歯科医院向けの通信販売事業最大手の株式会社歯愛メディカルの顧客ネットワークも活用し、2023 年度を目標に歯髄再生治療を導入する歯科医院を300 ヵ所まで拡大する。その後は、全国各地区に技術指導や導入支援を行う提携歯科医院を設置し、歯髄再生治療を導入する歯科医院数を飛躍的に伸ばす。
これらの施策により、本バンク事業は、歯髄再生治療などの関連事業も含め 2023 年度において年間売上高10 億円規模を目指す。
細胞保管施設について
アエラスバイオ社は、グループが保有する「国際くらしの医療館・神戸」内に、歯髄幹細胞を採取・培養・加工するための歯髄細胞培養センターを有している。培養した歯髄幹細胞は、小型の保存容器に小分けし、厳重に温度管理した液体窒素保存容器に入れて冷凍保管される。容器には液体窒素が充填されており、-150℃以下の超低温で細胞が劣化することなく高品質な状態を保ったまま保管しておくことができる。
歯髄幹細胞バンク利用の流れ
- アエラスバイオ社に資料請求を行い、必要事項を記入したうえで、契約書を締結。
- 金融機関で保管料の支払い。
- アエラスバイオ社が認定した提携歯科医院において、不用歯を抜歯。(保険適用)
- 歯科医院で抜歯した歯を専用容器で歯髄細胞培養センターへ冷凍輸送。
- 歯髄細胞培養センターにて歯髄を取り出し、歯髄幹細胞を培養し、長期冷凍保管を行う。
- 歯髄幹細胞保管証書を契約住所に郵送。
- 将来、治療に幹細胞が必要になった際には、所定の書類を提出し、指定された歯科医院へ培養した歯髄幹細胞を送付する。
保管期間と利用料金
歯髄幹細胞の保管期間は 10 年で、10 年ごとに契約更新を行うか解約するかを選択。採取保管料は30 万円(税別)、10 年後の更新保管料は6 万円(税別)。なお、不用歯の抜歯にかかる費用は、提携歯科医院で支払う(保険適用)。また、保管した歯髄幹細胞を用いた将来の治療費は含まれていない。
エア・ウォーターグループの医療関連事業(参考)
エア・ウォーターは、高度化する先端医療の現場である最新の病院設備、医療用ガス供給、病院内の物品物流管理や医療器具の洗浄・滅菌等の病院業務のアウトソーシング受託、設備機器のメンテナンス業務といった高度医療分野から、デンタルや衛生材料、注射針といった地域のクリニックや在宅医療などのくらしの医療に至るまで、多岐にわたる製品・サービスを提供。2019 年度売上収益は1,879 億円で、エア・ウォーターの売上収益(8,091 億円)の23%を占める。
https://www.awi.co.jp/business/medical/