日豪間での大規模なグリーン液化水素サプライチェーン構築に向けた事業化調査の実施
岩谷産業、川崎重工、関西電力、丸紅とオーストラリアのエネルギー・インフラ企業2社
岩谷産業、川崎重工業、関西電力、丸紅の日本企業 4 社は、豪州を拠点としたエネルギー・インフラ企業である Stanwell Corporation Limited(CEO:Adam Aspinall、以下「Stanwell」)、APT Management Services Pty Ltd.,(CEO:Robert Wheals、以下「APA」)の 2 社とともに、豪州クイーンズランド州グラッドストン地区において再生可能エネルギー由来の水素を大規模に製造・液化して日本へ輸出するプロジェクト(Central Queensland Hydrogen Project、以下「本事業」)について、事業化調査を共同で実施することに合意し、6 社で覚書を締結した。
ゼロカーボン社会の実現に向けて、水素は必要不可欠なエネルギー資源と期待されているため、海外からの輸送も視野に入れた水素サプライチェーンを構築する必要があると考えられている。しかし、化石燃料を原料として確立している現在の水素製造技術では、製造過程で CO2 が排出されるため、ゼロカーボン社会の実現を見据えると、将来的には CO2 回収・貯留技術との組合せや再生可能エネルギー等を活用した CO2 フリー水素の製造が求められる。CO2 フリー水素源の獲得競争は世界的に激しさを増しており、日本のエネルギーセキュリティーの観点からも、安価な再生可能エネルギー電源と輸出港の確保が重要になる。
また、豪州クイーンズランド州は、年間 300 日以上晴天が続く気候で再生可能エネルギーのポテンシャルが非常に高い地域であることから、州政府の指針として化石燃料から再生可能エネルギー・水素へのエネルギートランジションを打ち出している。同州政府が所有する電力公社である Stanwell 社も、この目標を達成する重要な役割を担っている。
こうした背景から、岩谷産業および Stanwell 社は 2019 年から大規模なグリーン液化水素の製造および日本への輸出に向けた調査を行ってきたが、この調査結果を踏まえ、事業化に向けた検討を本格的に実施すべく、今回、日豪 6 社で事業化調査を進めることを決定した。事業化調査の実施にあたっては日豪両国政府(豪州:再生可能エネルギー庁(ARENA)、日本:経済産業省)から支援を受ける予定。
本事業は、長期安定的かつ安価な水素製造および供給を行うことを目指しており、2026 年頃に 100t/日規模以上、2031 年以降に 800t/日以上の水素生産規模を想定する。
現在の日本の液化水素生産量は最大 30t/日であり、2031 年以降、800t/日以上の生産規模は現在の日本における約 26 倍の生産規模となる。
事業想定開始時期 | 水素製造規模 | 想定再エネ必要量 |
2026 年~ | 100t/日以上 | 1GW 程度 |
2031 年~ | 800t/日以上 | 7GW 以上 |
Stanwell 社が先立ってグラッドストン地区のアルドガ地域に水素製造拠点として確保している土地(約 235 ヘクタール)や、水素液化・積荷拠点として確保予定のフィッシャーマンズランディングの土地(約 100 ヘクタール)を活用することも検討する。また、日本への輸出用だけではなく豪州国内の需要先に向けてもグリーン水素の供給を検討する予定。
事業化調査では、主にグリーン水素の製造技術や、水素を液化するプラントの建設、運搬船建造、それに伴うファイナンスおよび環境アセスメントの検討ならびに商用化モデルの検討を進める。各社は本事業の活動を通じて日豪両国政府が掲げる 2 国間の大規模水素サプライチェーンの構築に向けて尽力するとともに、ゼロカーボン社会の実現に貢献する。
【事業化検討における各社役割】
- 岩谷産業:・日本企業の取り纏め・液化水素プラントの運営、ノウハウの提供・水素製造プラントの検討サポート
- 川崎重工:・水素液化・積荷基地、液化水素運搬船に関する技術・コスト面での検討
- 関西電力:・水素の潜在的な利活用に関する情報の提供(火力発電所での発電用燃料や熱需要に対応する顧客の利用等)
- 丸紅:・商用化モデル検討・現地ネットワークを駆使した各種情報の取り纏め・オフテイカー情報の提供
- Stanwell:・豪州企業の取り纏め・水素製造プラントの検討(水素発生装置、再エネ電源、水資源の検討)・プロジェクト開発全体の取り纏め
- APA:・豪州側の検討に関する全般的な助言(水素製造プラント、電気・水等のインフラ全般)・水素パイプラインの敷設に関する助言・豪州でのプラント管理・オペレーションに関する助言