液化空気エネルギー貯蔵(LAES)商用実証で広島ガスと住友機械重工業が提携

廿日市工場のLNG冷熱を活用、環境負荷の低減とLAES知見集積

 広島ガスは、住友重機械工業とパートナーを組み、液化空気エネルギー貯蔵(LAES)商用実証の共同実施に関わる「業務提携契約」を締結した。広島ガス廿日市工場敷地内に、住友重機械工業が「LAES商用実証プラント」を設置し、実証運転を開始する。運転開始予定は2024年を予定。

LAES商用実証の概要
LAES商用実証の概要

 住友重機械工業が2020年2月にエネルギー貯蔵技術の取得を目的に出資した英国のハイビューエンタープライズリミテッド社(以下ハイビュー社※1)が先導する、LAES※2(Liquid Air Energy Storage)技術を活用した国内初の商用実証プラントとなる。

 LAESとは、液体空気の形で電力エネルギーを貯蔵し、必要な時に取り出す技術で、オフピーク時の電力や余剰電力を利用し圧縮・冷却して液化した空気をタンクに貯蔵、必要に応じて再気化させ、膨張エネルギーを利用してタービン発電機により電力を供給する。

 実証では、空気を液化する際の冷却プロセスに廿日市工場のLNG(液化天然ガス)の冷熱を活用する。

 広島ガスは、廿日市工場において、LNGの気化に必要な温水をボイラ等で供給しており、LNGの冷熱を本設備に供給することで、本設備の充電効率の向上に貢献すると同時に、ボイラの省エネ・省CO2など、LNG冷熱の有効利用を図る。

 なお、国内では送配電会社との個別契約に加え、卸電力市場、需給調整市場、さらには容量市場での電力市場で運用してLAESの活用を実施する。両社は、今後需要の見込まれる蓄電市場を追求し、資源の有効活用と環境負荷の低減に貢献するエネルギー貯蔵設備を提供することで、電力とユーティリティの安定供給と脱炭素社会の実現に貢献するとしている。

商用実証の目的

  1. 設計・建設における法令・規格への対応
  2. 日本の系統運営や電力需給市場への対応と合理化
  3. 未利用冷熱の相互利用による効率改善・省エネ効果検証

 本目的にそって、太陽光や風力等の再生可能エネルギーの余剰電力を活用して充電し、電力必要時に放電することで、脱炭素および系統安定化に寄与する。

設備の概要

LAESシステムクライオバッテリーTM
容量4.99MW x 4時間貯蔵(充電4MW)
電力市場① 卸電力市場 :2MW(最低負荷想定)
② 需給調整市場:3MW
③ 容量市場  :4.99MW
建設予定地広島県廿日市市木材港南12番20号
運転開始予定2024年(予定)
※1 ハイビュー社の概要
会社名Highview Enterprises Limited
設立2005年
本社所在地英国 ロンドン
事業内容液化空気エネルギー貯蔵システムの技術開発設計
※2 LAESシステムの構成
  1. 充電:オフピーク時の電力または余剰電力を利用し空気液化設備を作動させ、液体空気を生成。
  2. エネルギー貯蔵:液体空気は低圧で断熱されたタンクに貯蔵。
  3. 放電:発生した高圧ガスがタービンと発電機を稼働し、電力を生成。
液化空気エネルギー貯蔵システム
液化空気エネルギー貯蔵システム