アエラスバイオが歯の「象牙質の再生技術」を確立
2023年6月から国内で初めて実用化
エア・ウォーターのグループ会社で、歯髄幹細胞の研究開発を行うアエラスバイオ株式会社(代表取締役:菊地 耕三 以下、アエラスバイオ社)は、同社が開発に取り組む歯髄再生治療において、「象牙質(ぞうげしつ)」と呼ばれる歯中の硬組織の再生技術を確立した。また、2023年6月より、同社と連携するRD歯科クリニックにおいて、歯髄・象牙質再生治療を国内で初めて実用化する。
象牙質再生治療の概要
歯髄再生治療は、不用歯と呼ばれる噛み合わせに無関係な智歯(親知らず)や抜けてしまう乳歯から歯髄幹細胞を採取し、神経を失った歯に移植して再生させる治療方法。今回、確立した象牙質再生治療は、歯髄再生治療と同時に実施する治療であり、採取・培養した歯髄幹細胞に、抜歯した歯の粉砕加工物をあわせて移植することで、「歯髄とあわせて象牙質まで再生する」治療になる。粉砕物を用いない歯髄再生治療と比べて、再生された歯髄をより堅固な象牙質で覆うことができる点が特長であり、歯全体の強度向上のほか、間隙の封鎖、再感染防止等の治療メリットが見込まれる。
アエラスバイオ社と連携するRD歯科クリニックは、2023年3月に特定認定再生医療等委員会において治療計画が承認され、同年4月に厚生労働省にて受理された。これに伴い、2023年6月より、同クリニックにおいて、歯髄・象牙質再生治療を実用化する。
※象牙質は、歯の神経である歯髄を守るように取り巻く硬組織。エナメル質のすぐ下の層にある組織で歯の主成分になる。歯の神経である歯髄を守るように取り巻く比較的柔らかい組織で、硬いエナメル質の内側を柔らかい象牙質が支え、クッション的な役割を担い破折(歯が割れたり、折れたりすること)を防ぐ。
歯髄再生・象牙質再生治療の流れ
- アエラスバイオ社の提携歯科医院にて、親知らずなどの不用歯を抜歯。
- 不用歯をアエラスバイオ社の歯髄培養センターへ輸送し、歯から歯髄を取り出し、その中に含まれる歯髄幹細胞を培養増殖。
- 歯髄を取り出した歯を適切な大きさに粉砕し、独自の加工プロセスによる表面処理や滅菌等を施し、保管。
- 第二種再生医療の取扱いに関する計画の届け出施設※にて、歯髄幹細胞を薬剤とあわせて、歯の粉砕加工物を抜髄した歯の根管内に移植。(※該当施設:RD歯科クリニック(2023年5月現在))
- 歯髄幹細胞が分泌する物質のはたらきにより、歯の周囲組織にある幹細胞が歯の内部に集まり、血管や神経が伸びてきて、1か月ほどで歯髄が再生され、歯の感覚が戻る。
- 6か月~1年ほどで歯髄の周辺組織である象牙質も再生され、最終的に冠や詰め物を入れて歯の上部を修復し、自分の歯で噛めるようになる。
(参考:市中歯科クリニックへの歯髄再生治療の普及と今後の取り組みについて)
アエラスバイオ社は、歯髄再生治療を開始した2020年より、国内の歯科クリニックを中心に歯髄再生治療の普及活動を進めている。また、将来の歯髄再生治療に備え、不用歯および乳歯の歯髄幹細胞を保管する「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」についても、市中の歯科医院との提携が進んでいる。今後も、全国で治療が受けられるような体制を整えるとともに、他人(主として近親者)の歯から採取した幹細胞による治療の研究などを進める。
- 歯髄再生治療ができる歯科クリニック:14施設(関東4、中部1、関西6、中国1、九州2)
- 抜歯ができる提携歯科クリニック:165施設