エア・ウォーターがインドのバイオエネルギーサプライチェーン構築でNEDO事業に採択
メタン発酵技術でバイオメタン製造と発酵残渣利活用の実現性や普及可能性を検証
エア・ウォーターは、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が公募する2023年度「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業(実証要件適合性等調査)」に応募し、2023年10月13日付で実施予定先として採択された。
調査事業の名称は「バイオエネルギーローカルサプライチェーンを実現するための未利用資源からのバイオメタン製造システム実証研究(インド)」で、期間は2023年10月13日~2024年9月末まで(実証要件適合性等調査)。
実証の実現性や普及可能性の検証を行う「実証要件適合性等調査」にあたり、今後、インド政府や同国の民間企業や酪農家等と意見交換を行い、実施に向けた検討を進める。ステージゲート審査を経て実証研究対象として有望であると認められた際は、実証前調査へ移行する。
本実証事業では、世界最大級の牛の飼育頭数※1であり、世界有数のバイオメタン製造のポテンシャルを有するインドにおいて、地産地消型のカーボンニュートラルエネルギーのサプライチェーンモデルの構築を目指す。未利用資源である家畜ふん尿や農業廃棄物等を原料に、エア・ウォーターが強みを有するメタン発酵技術を用いて、バイオメタン製造と発酵残渣の利活用に取り組む計画。
本調査事業を通じて、全社的な注力エリアと位置付けるインドにおいても、未利用資源の活用を通じたカーボンニュートラルエネルギーのサプライチェーンモデルの構築に取り組むとしている。
エア・ウォーターは、家畜ふん尿由来のバイオガスに含まれるメタンを精製し、LNGの代替燃料となるバイオメタンとして、工場の稼働燃料や船舶・ロケット燃料等として供給するサプライチェーンモデルの構築に取り組んでいる。本取り組みは、国内有数の酪農地帯である北海道十勝地方で展開しており、地域の酪農家や自治体、企業関係者と協力しながら、2024年度の事業化を目指している。
また一方で、同社グループは、今後も高い経済成長率が見込まれるインドを注力エリアと捉え、将来的には、産業ガスメーカーとして確固たるポジションを獲得しながら、グループが保有する医療、環境・エネルギー、食品等の多様な事業や技術力を展開することで、さらなる成長を目指す。
インドは中国、米国に次ぐ世界第3位のエネルギー起源CO2排出国であり、環境対応を考慮した再生可能エネルギーの導入が進むことが見込まれる。現在、家畜ふん尿は堆肥や固形燃料として活用されているが、メタン発酵技術の導入により、堆肥化と比較して温室効果ガスを約80%削減できる※2と同時に、発酵残渣を肥料として活用することが可能となる。また、メタン発酵は農業・食品廃棄物を原料とすることも可能。こうした取り組みは、大気汚染や水質汚濁の低減に寄与するほか、原料となる家畜ふん尿等を酪農家から購入することで、農村部へ副収入をもたらすことができるなど、脱炭素化・エネルギー転換に留まらない副次的な社会貢献も期待できる。
※1 国際連合食糧農業機関(FAO)「2021年 牛飼育数」及び「2021年 水牛・バイソンの飼育数」を参照
※2 小野貴弘,古市徹,谷川昇,石井一英;家畜ふん尿の堆肥化・バイオガス化に伴う臭気及び温室効果ガス低減に関する考察,第17回廃棄物学会研究発表会講演論文集2006,北海道大学,p.376,2006.を参照