三菱化工機と次世代型膜モジュール技術研究組合の共同提案、NEDOの助成事業に採択

CO2分離用分子ゲート膜を利用したCO2分離回収型水素製造装置の実用化

 三菱化工機と次世代型膜モジュール技術研究組合(所在地:京都府木津川市、以下「MGM組合」)の共同提案「高圧用CO2分離膜の水素製造システムへの適用性検討」が、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」)が公募した「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2分離・回収技術の研究開発/二酸化炭素分離膜システム実用化研究開発」の助成事業として採択され、事業を開始した。

 両者はCO2分離回収型水素製造の実証試験を共同で実施する。MGM組合が開発したCO2分離用分子ゲート膜を三菱化工機が保有する水素製造装置へ組み込んだCO2分離回収型水素製造装置の開発を進め、2028年度中の商業利用開始を目指す。

 CO2の排出を大幅に削減していくために、各種産業の排ガスからCO2を分離・回収し、多様な炭素化合物として再利用するカーボンリサイクル技術の取り組みが進められる中、CO2分離・回収に係る設備・運転コストおよび所要エネルギーの削減が重要となっている。2023年6月に策定された「カーボンリサイクルロードマップ」では、膜分離法はCO2分離・回収技術のコスト低減に向けた開発の一つとされる。

 今回NEDOが公募を実施した膜分離法に関する取り組みは、火力発電・化学産業・セメント産業・鉄鋼産業等においてCO2濃度が10%を超える工程ガス・排気ガスのCO2膜分離技術について研究開発を行い、省エネルギー・低コストとなる膜分離システムの構築を目指す。特に膜分離の特徴を活かした小型・分散型にも適用可能な膜分離システムの実現が期待されている。

実証の概要

*1 PSA:圧力スイング吸着法、Pressure Swing Adsorptionの略称。吸着剤を充填した吸着塔内に、水蒸気改質・シフト反応後の混合ガスを供給し、加圧(吸着工程)と減圧(脱着工程)を繰り返すことで、水素以外の不純物を吸着除去して、高純度水素を精製。

 脱炭素社会の実現に向けて、現在、製造時に排出するCO2を低減した低炭素水素が求められている。今回、三菱化工機とMGM組合は、MGM組合がこれまで高圧ガス(二酸化炭素(CO2)/水素(H2))源であるIGCC、水素製造プラントを適用先として想定し開発してきた高圧向けCO2分離用分子ゲート膜の中圧水素製造システムへの適用性の検討を進める。

 MGM組合は、CO2分圧・濃度が低い中圧水素製造工程ガスからでも安定的に高効率(高CO2透過流束、高CO2選択性)にCO2を分離・回収できるよう分子ゲート膜をチューニングし、商用サイズの膜エレメントを提供する。

 三菱化工機は、水素製造装置にCO2分離膜を組み込んで、高純度水素製造とCO2回収機能を有する実証機を設計・製作し、実証試験を行う。

 両者は、実証試験の結果をもとにCO2分離回収コスト、低炭素水素製造コストの評価を行い、2030年に予想される低炭素水素市場価格やCO2ガス市場価格に経済的に見合った製造コストとするための課題を洗い出し、早期の社会実装を目指す。