可搬形の燃料電池発電機と複合材料圧力容器「ウルトレッサ」で静かなクリーン電力供給の提案

複合容器の軽量・高圧充填で水素ガスの配送コスト削減

 発電機事業を展開するデンヨーは2025年2月、帝人が代理店販売を行う英国Intelligent Energy Limited(IE 社)製の燃料電池モジュールを採用した3kVA 級の水素燃料電池発電装置を開発した。2025年2月19日~21日に東京ビッグサイトで開催された水素・燃料電池の展示会「H2&FC EXPO」で、この燃料電池式可搬形発電装置「FCTP‐3100」と帝人エンジニアリングが展開する炭素繊維を用いた複合材料圧力容器「ウルトレッサ」の大型可搬式水素用搬送容器を出品、空冷式燃料電池モジュールによる3kVA の発電を容器1本で長時間連続運転する、水素利用の新しいアプリケーション提案を行った。

水素・燃料電池の展示会「H2&FC EXPO」の帝人ブース

 燃料電池式可搬形発電装置「FCTP‐3100」には、IE 社製の空冷式燃料電池モジュール「IE-LIFT804」を搭載した。燃料電池モジュールは、水素燃料電池発電装置のコアとなる部品で、外部から取り込んだ水素と空気中の酸素を化学反応させて発電する。「FCTP‐3100」の出力は3.1kVA、単相3線式(周波数50/60Hz)と屋外での工事現場やイベント会場、災害現場などで必要になる発電能力に対応し、電圧200Vと100Vでの使用も可能。空冷式としたことでコンパクトな全長1020×全幅700×全高1000ミリの外形と質量200kgを実現し、稼働現場への移動がスムーズになるキャスターを付属する。

IE 社製 空冷式燃料電池モジュール「IE-LIFT804」

 発電の燃料となる水素供給に「ウルトレッサ」の大型水素搬送・貯蔵容器「ALT 1096」を使用した場合、容量130リットル/充填圧力45MPaで約13.6時間の定格出力での長時間連続運転が可能となる。「ALT 1096」は高圧ガス保安法のKHK認可を取得済、容器重量87kgと大人ひとりで容器の移動が可能になるなどハンドリング性に優れるため「FCTP‐3100」との組み合わせで、どこへでも運搬可能な水素燃料電池による電力供給システムが実現できる。軽油やガソリンを使用する発電機と比べ、静粛性が高く排ガスの臭いもない、またCO2など温室効果ガスも排出しないというメリットを活かし、夜間の工事現場や災害時の非常用電源として高い需要が見込まれる。

 「ウルトレッサ」は帝人が1987年から販売を開始した日本初の複合容器で、高い軽量性から防災用の空気呼吸器や在宅酸素療法(HOT)の携帯用ボンベなどで利用されており、国内累計出荷本数は40万本を超える。継目無しのアルミ合金ライナー(円筒)の外側にエポキシ樹脂を含侵したカーボン繊維を多層に巻き付けた構造の圧力容器で、スチール製容器の3分の1の重量、ガス漏洩でも破裂しない安全性、超高圧力対応などの特徴がある。そうした特徴から近年では、水素の運搬(トレーラ容器)・貯蔵(蓄圧器)から、燃料電池ドローンや燃料電池自動車の水素容器へと、その利用が拡がっている。

 ウルトレッサ「ALT 1096」は大容量の水素搬送・貯蔵用に開発されたもので、一般複合容器としては最大の内容積130リットル、45MPaの超高圧に対応し、35MPa用途への差圧充填も可能。「ALT 1096」1本で、既存の一般的な47リットル水素容器(14.7MPa充填)の8.4本分を充填することができる。容器に専用プロテクターを装着しハンドリング性を向上し、トラックでの縦積み搬送が可能なため、長時間の水素利用や場所を選ばない可搬性など幅広い用途に対応できるとしている。容器は販売だけでなくレンタル対応も可能。

「ウルトレッサ」の軽量・高圧充填を活かした可搬性や貯蔵量をPR

 帝人エンジニアリングでは、ウルトレッサの軽量・高圧充填を活かしたガス配送のコスト低減として、「ALT 1096」を複数使用した水素用カードルの提案も行う。「ALT 1096」を4本搭載するカードルで、従来の鉄製容器のカードルと比較してトラックへの水素積載量は約5.6倍に増加し、ガスの配送時に巡回する供給先を増やすことで輸送効率を改善する。カードルの想定重量800kgと軽量化したことで1トンフォークリフトでの荷役が可能としている。