エア・ウォーターと北里大学が、みかんの皮を用いた老犬の認知症症状改善に関する共同研究成果を発表
未利用資源の有効活用による機能性ドッグフードの製品化へ歯愛メディカルと連携しモニター募集を開始
北里大学(砂塚 敏明 学長)獣医学部の岩井聡美准教授らの研究グループとエア・ウォーターは、みかんの皮を用いた老犬の認知症症状改善に関する共同研究成果を発表した。未利用資源であるみかんの皮に含まれるフラボノイド※¹成分の分析と老犬の認知症症状の改善効果を検証し、実験用ビーグル犬の腸内細菌叢※²に抗アルツハイマー変化が認められた。
近年では犬猫の飼育数が15歳以下の子供の数を上回り、伴侶動物やセラピー効果として社会活動の観点からもペットの位置づけの重要性が増している。一方で、ペットの平均寿命の延伸に伴い、老犬の認知症による夜鳴き等の症状が室内飼いの増加とともに新たな社会問題となっている。
こうした問題解決に向け、小林英司博士(小林再生研究所合同会社・CEO)の指導の下、エア・ウォーターが収穫時期の異なるみかんの皮を粉末化し、ターゲットとなるフラボノイド(特にヘスペリジンとノビレチン)の含有量を分析。また、北里大学が実験用ビーグル犬にフラボノイド成分を経口投与し、体内に摂取された成分がどのように吸収されるかの検証と連続投与による腸内細菌叢の変化の解析を行った結果、細菌叢に抗アルツハイマー変化を認めた。
さらに、夜鳴きなどの認知症症状が強い老犬3例でも試験を実施し、症状の改善が確認されたとしている。この成果は、2024年12月25日にスイスの科学雑誌『Metabolites』オンライン版に掲載された。
本研究は、ペットと飼い主の双方のWell-being(ウェルビーイング)を目指し、伴侶動物とヒトの疾患を同等に研究する観点から認知症治療への応用の可能性も示唆する。現在、エア・ウォーターでは機能性ドッグフードの製品化を進めており、関連会社である(株)歯愛メディカルと連携して全国の動物病院・クリニック経由で2025年3月中旬から一般モニターの募集を開始し、認知症の老犬に対する効果検証を行う予定。
また、同社グループの株式会社プラスが運営する、和歌山県を中心に展開している農産物直売所「産直市場よってって」の契約農家で廃棄されている摘果みかんの活用も含め、畑にあるものを全て有効活用することで生産者の所得向上も目指す。
※1 ポリフェノールの一種で天然に存在する有機化合物群の植物色素の総称。植物自身が紫外線による活性酸素から身を守る抗酸化作用や種子を害虫から守るために抗菌作用や殺菌作用など、多くの自己防衛機能のためにつくり出している物質で、野菜や果物などの色素や苦み成分にもなっている。
※2 腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)とは、腸内に生息する細菌の集団全体のこと。細菌が種類ごとの塊となって腸壁に隙間なくびっしりと張り付いている状態がお花畑に見えることから腸内フローラとも呼ばれている。また、近年では脳と腸の相関に関する研究開発も盛んに行われている。
科学雑誌 掲載論文について
(1)雑誌:Metabolites (MDPI)
(2)題名:Exploring the Pharmacokinetics and Gut Microbiota Modulation of Hesperidin and Nobiletin from Mandarin Orange Peel in Experimental Dogs: A Pilot Study
(3)著者:Jun Nakahigashi, Makoto Kurikami, Satomi Iwai, Sadahiko Iwamoto, Shou Kobayashi, and Eiji Kobayashi
(4)DOI:10.3390/metabo15010003
Website: https://www.mdpi.com/2218-1989/15/1/3
PDF Version: https://www.mdpi.com/2218-1989/15/1/3/pdf