在宅レンタル事業好調で目標達成、経営環境の変化に左右されない持続的成長を目指す

フクダ電子「2025年3月期決算概要と中期経営計画ローリング」

 フクダ電子は2025年5月22日、2025年3月期(2024年度)の決算概要と中期経営計画ローリングについて発表を行った。当期は、感染症対策に関連する補正予算がなくなり、CPAPに関連する診療報酬改定という逆風があったものの、在宅レンタル事業、消耗品や保守などランニングビジネスが順調に推移し、売上高、各利益において目標を達成した。サプライチェーンの最適化に向け、部品の共通化や内製化を加速し、コスト抑制やコストダウンを推進。安定供給を前提とした効率的な在庫管理やリードタイム短縮などのプロセス改善も実施した。組織力向上のため、優秀な人材の維持・確保や社員育成のための人的投資も継続した。売上高は1,390億円で、前期の1,403億円に対し0.9%減、営業利益は258億円で、同265億円に対して2.4%減だった。

 2026年3月期(2025年度)の業績予想では、売上高1,370億円(前期比-1.4%)、営業利益240億円(同-7.2%)と減少が見込まれている。自律的成長と投資の好循環サイクルを加速させることで、コロナ禍後の外部環境の変化に左右されない体質を築くとしている。この期間の設備投資(CFベース)は165億円と、前期の129億円から28.5%の大幅増を予想。この設備投資の主な使途としては、白井工場の生産設備等に加え、在宅レンタル事業の拡大が挙げられる。減価償却費も前期比33%増の140億円が予想され、これも在宅レンタル事業の拡大が要因となる。研究開発費も46億円と前年度の42億円から9.9%増加する。今後の成長ドライバーとして在宅医療事業を強く意識し、必要な機器の確保やサービス提供体制の拡充に向けて積極的な投資を行うとしている。

中期経営計画の要となる在宅事業強化とICT連携

 同社の中期経営計画においては、日本の医療を取り巻く環境として、高齢化の進展による医療需要の増加と医療費抑制への動きが進む一方、医師を含む医療従事者不足が深刻な問題となっていることが指摘されている。こうした背景を踏まえ、「持続可能な全世代型社会保障の構築」に向け、医療分野におけるDX推進や地域医療構想、地域包括ケアシステム推進などが重要視された。

 フクダ電子では、こうした変化に対応し「地域医療を支える当社の取組み」として、HOT(在宅酸素療法)、CPAP(持続陽圧呼吸療法)、人工呼吸器など在宅事業の強化「f’no」「f’Rens」「フクダレスキューWeb」などITソリューションの展開、医療従事者の業務負担軽減や効率化に貢献する新製品の開発を行う。

 中期経営ビジョンでは「グループの特徴を活かした事業展開」や「モノづくり改革推進」などを掲げ、フクダ電子・フクダライフテック・フクダコーリンの全国に業界最多規模となる合計224カ所(2025年4月現在)の国内拠点ネットワークによる協業を強化、地域密着を目指したサービス網の拡充を行い、地域医療を支える一貫した医療環境を提供する。

グループの特徴を活かした事業展開とモノづくり改革推進

 「グループの特徴を活かした事業展開」として、予防・検査から治療、経過観察・リハビリを経て在宅・介護までを一貫して支える医療機器の提供を行っており、その内の在宅医療・介護分野ではHOTの酸素濃縮装置やパルスオキシメーター、在宅用人工呼吸器、ASV、CPAP機器、睡眠評価装置などが主要製品となる。また、これらの機器を医療DXでつなぐICT・クラウドソリューションとして、フクダクラウドサービスの「f’no(検査データ管理システム)」「f’Rens(在宅医療診療支援システム)」「f’Rep(レセプト分析サービス)」「f’iLis(生理検査データ管理システム)」「フクダレスキューWeb(災害時業務支援システム)」によるトータル提案を展開する。

 さらに、持続的な成長の基盤として、「モノづくり改革」を推進し、サプライチェーンマネジメント(SCM)の最適化や内製化などを通じたコストアップ防止とコストダウン、安定供給体制の構築を進める。モノづくり改革の中核となる白井工場新棟が完成し本格稼働の予定で、生産面積が倍増、BCP(事業継続計画)に加え災害対策の拠点としても活用される。フクダ電子ファインテック仙台でも、カテーテル・心電図用電極などの内製化を推進する。

経営環境の変化に左右されない持続的成長

 中期業績目標として、2028年3月期には連結売上高1,470億円、連結営業利益280億円を目指し、経営環境の変化に左右されない持続的成長を目指す方針。収益力、モノづくり力、財務の各テーマで取り組みを進めており、白井工場新棟稼働によるサプライチェーン最適化や在庫の適正化などが進捗している。