AW防災が国内で拡大する半導体産業に向け、ロータリー式無停電電源装置「DRUPS」を本格展開

バッテリーレスで設置面積とトータルコストを大幅に削減

 昨年12月に東京ビッグサイトで「SEMICON Japan 2025」を開催した半導体製造装置の業界団体SEMIによると、世界の半導体産業は前例のない成長を続けており、2025年から2030年までの年平均成長率が8%、2029年には半導体の売上高が1兆ドルの大台を超えると予測している。このうちAI(人工知能)関連の半導体の売上高は、年率16%のさらに高い成長率が見込まれ、生成AIやフィジカルAI向けに半導体デバイスの市場が拡大する。
 これにともない、世界では2028年までに新たに107件の半導体デバイス製造拠点が稼働を開始する計画で、そのうちアジア地域に82件のファブが集中する。また、日本国内でも先端半導体製造工場が進出した北海道や九州など、地域一丸となって半導体産業による産業振興が活発化、AIの頭脳にあたるデータセンター(DC)の新設・増設も急がれるなど、マーケットの規模拡大は続いている。こうした巨大な設備投資に対し、製造装置や材料メーカーはもちろんのこと、ユーティリティのひとつとしての電力需要の増加が注目を集めている。

 「SEMICON Japan 2025」にグループ14社と共同ブースで出展したエア・ウォーターは、半導体市場における製造から物流までのトータルソリューションとして、半導体製造向けの産業ガス供給を筆頭に、設備・機器や素材、サービスに至る様々な技術・製品をグループ内で提供している。このうちエレクトロニクス業界における停電対策や高品質な電力需要向けに、ロータリー式無停電電源装置「DRUPS」を「SEMICON Japan 2025」で紹介、落雷などの瞬時の電圧低下や停電による電源の途絶が許されない半導体工場やDC向けにシームレスな電力供給を実現することで、電力不安の解消や安定操業の継続をサポートする提案を行った。

ロータリー式無停電電源装置「DRUPS」
ロータリー式無停電電源装置「DRUPS」

災害時にも操業を止めない防災ソリューション

 「DRUPS(Dynamic Rotary Uninterruptable Power Supply)」は、2019年にエア・ウォーターが買収したオランダに本社があるHITEC社製の非常用電源装置で、UPS(無停電電源装置)とディーゼル発電機が一体化した構造を持つ。1台で無停電電源+非常用発電機の機能を併せ持ち、停電や落雷などの緊急時に大出力の電力が必要な半導体製造装置など、幅広い設備機器に常に高品質な電力を供給し続けることができる。
 その動作原理は、1500kVAを超える大容量のバックアップ電源に対応する、ロータリー式と呼ばれるフライホイール(回転体)に平時から運動エネルギーを蓄積し、停電などで電力供給が途絶えると、この回転体が惰性で回り続けることで一定時間(8~10秒間)の電力供給を維持する。さらに、その間にディーゼル発電機が立ち上がり、定格回転数に達するとクラッチがつながってディーゼル発電機による電力供給に切り替わる。その後は系統電源が復旧するまでの間、ディーゼル発電機から電力を供給することで、連続給電を維持できることがシステムの特長となる。

 「DRUPS」は2025年4月時点で、世界60ヶ国、2300台以上の導入実績を誇る。HITEC社は、ロータリー式無停電電源装置市場ではトップクラスのシェアを持ち、その用途別納入先の内訳はDCが約38.0%、半導体工場が約15.3%と、この2つで全体の半分以上を占める。もともと本社のあるヨーロッパや北米での実績が多かったものの、近年の半導体工場やDCの増設によりシンガポールや台湾を中心にアジアでの需要が拡大した。日本では、高圧ガス制御技術をベースとして医療・防災分野で事業を行うエア・ウォーター防災が、「DRUPS」のシステム設計や現地工事などのエンジニアリングおよびアフターサービスを担当しており、エア・ウォーターグループとの協働によるワンストップのターンキーソリューションを提供している。

エア・ウォーター防災 防災事業部 パワーシステム部の伊藤 太一ソリューショングループ長

 国内で「DRUPS」事業を担当するエア・ウォーター防災 防災事業部 パワーシステム部の伊藤 太一ソリューショングループ長は、ロータリー式の無停電電源装置について「UPS部分にバッテリー(蓄電池)を使用せず、ロータリー式を採用したことが最大の特長になります。発電機とUPSが一体構造のオールインワンのため制御がシンプルで、省スペース化を実現できる。また、経年劣化で7~8年ごとに多数のモジュールの廃棄・交換が必要となるバッテリー式に対して、ロータリー式ではフライホイール(1モジュール)の10年ごとの交換で済みます。また、システム全体として約25年間の稼働が可能な高耐久性を持つため、初期投資からランニングコストに至るトータルのライフサイクルコストを削減でき、バッテリーレスで環境にも優しいためカーボンニュートラル対策にも効果的」だと指摘する。
 これまで国内の大型非常用電源装置市場は、バッテリー式UPSとディーゼル発電機を組み合わせた無停電システムが主に採用されている。しかしながら、バッテリータイプは高出力化に伴い、大量のバッテリーと広大なバッテリー保管スペースが必要となる。さらに、バッテリーの性能を維持し安定運用するためには、常に適切な温度帯(20~25℃)を保つことが求められ、発電機と連動させるための複雑な制御も必要となるなど課題も多い。
 「DRUPS」は、従来の同出力のバッテリー式UPSとディーゼル発電機に対して、設置面積を約25~45%削減、バッテリーやエネルギー変換装置が不要なためメンテナンスを含めたトータルコストを約20~60%削減することができるとしている。また、半導体工場のような大容量のバックアップ電源が必要な施設に対応する500kVA/台から最大3600kVA/台の製品ラインナップがあり、顧客の要望に合わせたディーゼル発電機の容量や、コンテナパッケージの設計・製造、据付を行う一貫体制を整えている。

 日本国内で供給されている産業用の電力は、海外と比較して品質が高く、停電等の発生も比較的少ないため、従来の無停電電源装置の市場は限定的な場合も多かった。また、すでに導入されている設備を踏襲する傾向が強く、海外製でロータリー式の無停電電源装置が欧州や北米ほど普及しなかった経緯がある。しかしながら今後、国内でもDCや半導体工場の新設・増設が見込まれ、そうした大量の電力を必要とする事業所での瞬時の電圧低下や電源の喪失は、莫大な損失を伴う致命的なリスクとなるため、安定供給に向けた対策は必須となる。また、半導体産業においてもカーボンニュートラルの流れは強く意識されており、サステナブルな観点からも環境インパクトの少ないロータリー式無停電電源装置の導入が進む可能性は高いとみている。
 エア・ウォーターはシンガポールで最も多く「DRUPS」を販売するパワーパートナーズ社を2018年に買収しており、同社に出向して海外で「DRUPS」の事業展開の経験がある伊藤ソリューショングループ長は、今後の国内事業戦略について「すでに都内のDCでは13台の「DRUPS」が10年以上継続稼働しており、装置のさらなる販売に向けてエア・ウォーター防災では、2025年10月1日に専属のパワーシステム部を新設して、現在、積極的なPR活動を展開しています。
 日本特有の事情として、もともと落雷による瞬低が多く、台風の大型化や豪雨など自然災害が苛烈化する中で、事業所の安定的な操業継続をアピールポイントにして導入を目指します。日本国内には、海外の事業所で「DRUPS」導入実績を持つ半導体工場やDCも進出しており、そうしたところから実績を積み重ね、国内ユーザー向けに「DRUPS」による安定操業の価値を訴求したい。また、産業ガスの安定供給や半導体製造産業向けにエア・ウォーターグループが展開しているネットワークを有効活用した拡販活動も合わせて実施していきます」としている。