岩谷産業、新コンセプトによる静電気除去システム開発「エリア除電システム」でクリーンルームの消費電力を大幅低減
岩谷産業は、電場(電界)を利用したエリア除電システムを開発し、販売を開始した。この技術は、これまでのワーク(製品)に帯びる静電気を除去するという概念を払拭、作業空間自体を、静電気を発生させない空間にするという画期的なもの。空間に漂うほこり(パーティクル)に帯電する電荷を中和除去し、半導体、太陽光パネル、液晶ディスプレイなどの製造工程でのウエハーやガラス基板上に静電付着するほこりを大幅に低減できるとともに、クリーンルームのランニングコストも大きく低減することが可能になる。
空気中に漂うほこり(パーティクル)は、通常静電気を帯びて(正負のどちらかに帯電して)いるが、種々の製造現場では、ワーク(製品)の帯電状態と相まって、このほこりが電気的に吸着(静電吸着)しやすくなっており、どの現場でもその対策に苦慮している。
従来は、イオナイザーと呼ばれるようなコロナ放電にて大量のイオンを作り、送風してワーク(製品)に吹き付けることによって、ワーク(製品)自体の帯電を中和除去する「局部除電」が主流だった。
岩谷産業が開発した除電技術は、ワーク(製品)を対象にするのではなく、作業空間に着目したもの。強い電場(電界)を発生させて空気中に大量のイオンを生成し、そのイオンにより空間を漂うほこり自体の静電気を除去する「エリア除電」という発想に基づいた極めて斬新で業界初の技術となる。
システムとしては、電場(電界)を発生させるワイヤー電極、ワイヤー電極に電圧を印加する電圧印加器を基本構成とする。正負の極性をもつワイヤー電極を一対として、除電する部屋の上部(天井部)に複数組を配設して電場(電界)を発生させることで、ワイヤー直下の空間を除電することが可能になる。
具体的には、交流100Vを直流10kVに昇圧し、電場(電界)を放出する+/-の高電圧ワイヤーをそれぞれ室内に張る。そして、数秒から数十秒間隔で+/-を交互に切り替えることにより、正負のイオンを空間に満遍なく大量に発生させることができる。10kVという高圧ですが、電流はほとんど流れないため安全で、また、電場(電界)は人体にも影響は与えないとされている(WHOの公式見解)。
この除電空間において、滞留する帯電した空中浮遊ほこり(パーティクル)を中性化する。その結果、沈降しやすくなり浮遊粉塵量の低減効果をもたらす。この粉塵がワーク(Siウェハー、ガラス基板など)に落下しても静電吸着しない。また、低湿度でも除電が可能なため、クリーンルームなどで過大なエネルギーを投じて行われている湿度コントロールが不要になることも大きなメリットとなる。
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