大陽日酸、新中期経営計画『Ortus Stage 1』策定

 大陽日酸は、2014年度を初年度とする3ヵ年を対象とする新中期経営計画『Ortus Stage 1』を策定した。大陽日酸はグループの総力を挙げて、低成長下での国内事業の収益改善と海外成長機会に対する経営資源の重点投入を図り、企業価値の向上に努める。

 大陽日酸は2011年度を初年度とする3ヵ年の中期経営計画『Gear Up 10』に取り組んでいたが、エレクトロニクスを中心とした国内市場環境の激変にみまわれ、中期経営計画『Gear Up 10』を棚上げとした。その後、早期の収益改善を実現するため、「産業ガスの価格改定」「特約店との連携強力」「エレクトロニクス関連事業の収益改善」「北米事業の収益改善」「アジア地域の事業拡大」に取り組んだ結果、一定の成果を得た。
 こうした状況下、今後の成長戦略を支える組織体制を整備するとともに、長期ビジョンとして、2022年度までに売上高1兆円、営業利益率10%、ROCE10%以上、海外売上高比率50%以上を目標に定めた。
 長期ビジョン達成に向けた第一ステージの位置づけで、組織体制の強化に向けた構造改革と新たな収益基盤の基礎作りを図るため、新中期経営計画『Ortus Stage 1』を策定。
※ Ortus とは、ラテン語で『誕生、始まり』を意味する。

【新中期経営計画の概要】

(1)数値目標

  2016 年度計画 2013 年度実績
売上高 6,000 億円 5,227 億円
営業利益 450 億円 314 億円
営業利益率 7.5 % 6.0 %
海外売上高比率 40 %以上 31 %
純有利子負債残高 2,410 億円 2,197 億円
ネット D/E レシオ 0.74 倍 0.80 倍
ROCE 8.0 %以上 6.2 %

(2)環境認識

◆国内市場
 円安・株高による緩やかな回復傾向がみられるものの、低成長時代が継続。産業界はエネルギーコストの高止まり等により、生産拠点の海外移転が止まらない厳しい状況が続くものと予想。
◆海外市場
 シェールガス革命による産業回帰の進む米国や、高い経済成長が期待される新興国では、産業ガスマーケットの拡大が期待できる。

(3)戦略方針

◆構造改革
・早期退職者特別優遇措置の実施
・組織体制の見直しと人員再配置による営業力及び収益力の強化
・国内ガスエンジニアリング機能の見直し
・シェアードサービス化推進による間接業務の効率化
・国内サプライチェーンの強化
・国内関係会社の再編
・人事及び賃金制度の見直し
◆イノベーション
・三菱ケミカルホールディングスグループとの連携強化による新規シナジー創出
・ベンチャー投資、M&Aを通じた高付加価値製商品の取り込み及び開発
・エネルギーを巡る環境変化にあわせた、全社横断組織による新規事業の開発推進
(米国シェールガス関連需要、アジア経済成長の取り込み)
・成長市場への新規戦略製商品の投入
(水素ステーション、超電導冷却システム、PSA式窒素発生装置、酸素安定同位体標識水(水-18O)、ヘリウムコンテナ、新素材、他)
◆グローバリゼーション
・海外経営体制の現地化推進
・国内グループ会社のグローバル展開強化
・グローバル人財の育成
・国際財務報告基準(IFRS)導入
・グローバル規模での技術リスク管理の強化
◆M&A
・グローバル規模でのM&A推進
(北米・アジア・オセアニア・中東・南米・欧州等で検討)

(4)新中期計画における投資計画

 国内外での事業会社M&A、ベンチャー投資、大型設備投資、合理化投資など3年間で2,000億円の戦略的投資を計画。

地域区分:設備投資・投融資

日本: 580 億円
米国 :770 億円
アジア他: 650 億円
合計 :2,000 億円

戦略区分: 設備投資・投融資

通常投資: 750 億円
M&A :400 億円
大型設備・合理化投資: 820 億円
ベンチャー投資 :30 億円
合計: 2,000 億円

① 通常投資
 国内及び海外での事業において、設備の維持等で定常的に発生する通常投資分として750億円を計画。新規中期経営計画ではこの通常投資分とは別に、次に掲げる1,250億円の特別枠を計画。
② M&A
 グローバル規模でM&Aを積極的に推進。米国・アジアなど大陽日酸が既に進出している地域に加えて、未進出国(オセアニア・中東・南米・欧州)に対しても積極的に市場参入を図り、事業規模拡大を加速。
③ 大型設備・合理化投資
 米国アリゾナ州での空気分離装置新設や、国内での酸素安定同位体標識水(水-18O)製造プラントの増設等、大型設備・合理化投資を推進し、国内外における生産能力の増強を通して、事業の更なる拡大と一層の効率化を図り、強固な収益基盤を構築。
④ ベンチャー投資
 付加価値の高い技術・製商品・ビジネスモデルをベンチャー投資によって積極的に取り込み、既存事業とのシナジー効果による収益力向上や、次世代コアビジネスを開拓。

【今後の株主還元方針】

 大陽日酸は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして位置づけており、安定的な配当を維持しつつ、業績に連動した配当政策を進める。今後は新中期経営計画に掲げた戦略方針に基づき、業績の更なる向上に努め、当中期経営計画期間(2014年~2016年度)において連結配当性向の引き上げをめざす。