エア・ウォーター、加古川工場にレアガスの製造設備の新設

 エア・ウォーターは、レアガス(キセノン・クリプトン)の安定供給と事業の拡大を目的に、加古川工場にレアガスを製造する設備を新設する。同社は、神戸製鋼所加古川製鉄所内に深冷空気分離プラントを設置し、製鉄プロセスで必要となる酸素・窒素・アルゴンの供給を行っているが、2017 年10 月に設置したプラントにレアガスの製造設備を新たに設置する。2019 年 3 月末までに製造設備の設置を完了し、4月より製造を開始する予定。


 キセノン・クリプトンは、空気中に極めて微量にしか存在しないガス種であり、どちらのガスも酸素より沸点が高いため、深冷空気分離の過程で液化酸素の中に凝縮されていく。そこから精製装置によって余分な成分を精製・精留したのち、製品としての純粋なキセノンとクリプトンを採取することができる。
 現在、エア・ウォーターでは、鹿島工場でキセノンの製造を行っているが、国内供給における不足分については海外から輸入している。需給面においては、近年、エレクトロニクス関連の生産プロセスや宇宙関連産業において世界的に需要が増加傾向にある一方、供給のタイト化により、輸入品の価格が上昇している。こうした需給環境を踏まえ、エア・ウォーターは、国内に安定したレアガス製造拠点を確保すべく製造設備の新設を決定した。

 ネオン、クリプトン、キセノンは一般的にレアガス3 種と呼ばれる。その名の通り、空気中に極めて微量にしか存在しないレアー(稀)なガスであり、アルゴンやヘリウムと並び希ガスの一種に数えられる。いずれのガスも不燃性・不活性という点で共通しているが、それぞれ他のガスにはない特性を持っており、エレクトロニクスを中心とした工業用から医療用まで幅広い分野で利用されている。
 レアガスの主な用途は、照明・ランプの分野で、原子量が重く熱伝導率が低いため、封入ガスとして使用することで照明効率が向上する。レアガス3 種の中で空気中の組成割合が最も小さいキセノンは、宇宙空間における衛星等の軌道制御用イオンエンジンの推進剤(原子を荷電・加速しその反発力で衛星を推進)として使用されるほか、エキシマレーザー発振用ガスとして半導体製造におけるエッチング工程などで使用される。
 また、クリプトンは、エキシマレーザー発振用ガスのほか、寒冷地の住宅や飛行機、一部車両等の複層ガラスに封入することによって、材料の断熱性を向上させる用途で使用される。

【設備概要】
所在地 :兵庫県加古川市金沢町1 (エア・ウォーター加古川工場)
製造能力:キセノン 113.6 千L/年 クリプトン 880.9 千L/年
製造方法:空気分離装置で製造される液化酸素を利用した深冷分離方式
運転開始:2019 年4 月(予定)