エア・ウォーター、高純度一酸化炭素発生装置を開発

 エア・ウォーターは、都市ガス等の炭化水素と二酸化炭素を原料として高純度の一酸化炭素(CO)を発生させることができる一酸化炭素発生装置を開発した。

1.開発の経緯

 エア・ウォーターは炭化水素のCO2改質による一酸化炭素発生装置を開発し、保有するガス発生装置のラインナップに高純度一酸化炭素を新たに加えた。同社は、独自開発した熱中和型改質による水素発生装置を 2006 年に開発して以降、炭化水素の CO2改質に関連する技術を蓄積してきた。2011 年には水素・一酸化炭素併産装置(H2:CO = 1:1)を開発し、熱処理メーカー等に水素・一酸化炭素の混合ガスを供給している。

 エア・ウォーター総合開発研究所では、これらのガス発生装置の開発過程で獲得した CO2改質技術とガス精製技術を応用し、2015 年より高純度一酸化炭素発生装置の開発に取り組んできた。その結果、熱中和方式によるCO2改質と特殊吸着剤を採用したガス精製プロセスを組み合わせることで、長期間安定的に高純度の一酸化炭素を製造する技術を確立し、一酸化炭素発生装置を開発したもの。

2.一酸化炭素について

 一酸化炭素は、常温・常圧において無色・無臭・可燃性の気体で、有機物が不完全燃焼を起こすと発生し、強い毒性があることで知られているが、産業分野においては重要な化合物であり、化学原料や還元剤として用いられている。

 一酸化炭素の製造には、コークスのガス化による大規模なものから、メタノールの分解反応や、小規模ながら高純度化が可能なギ酸の分解によるものなど、規模や用途に応じた複数の製造手法がある。各種手法により発生したガスを深冷分離(沸点の差)や吸着分離などの方法で精製することで、高純度の一酸化炭素が製造される。国内では、ポリウレタンなど化学原料の製造や金属の熱処理用途において、一酸化炭素が使用されており、今後も堅調な需要が期待される。

3.基本仕様
  • 名 称:一酸化炭素発生装置
  • 純 度:~99%
  • 発生量:10~数百Nm3/h
4.一酸化炭素発生装置のフロー図と発生原理
一酸化炭素発生装置のフロー図
  • 原 料:天然ガス・LPG 等の炭化水素、二酸化炭素、酸素
  • 原 理: 燃焼反応 CH4+ O2 → CO2 + 2H2 O
        改質反応 CH4+ CO2 → 2CO + 2H2 (CO2 改質)
5.技術的な特長
  1. 自社開発の触媒と独自プロセスの採用により長期間の安定運転を実現
    • 一酸化炭素発生装置は、天然ガス等の炭化水素と二酸化炭素、酸素を原料とし、前述したエア・ウォーター独自開発の熱中和型改質触媒でCO2改質反応を行うことで一酸化炭素を発生させる。本触媒と独自プロセスを採用することで、CO2改質反応における従来の課題であったカーボン析出を克服し、長期間の安定運転が可能となった。
  2. 高い一酸化炭素回収率を実現する精製プロセスの採用
    • 一酸化炭素の精製プロセスとして、特殊吸着剤を用いた精製技術(PVSA 方式※)を採用し、一酸化炭素の高純度化を高効率で実現した。※PVSA(Pressure Vacuum Swing Adsorption)方式:真空再生型圧力変動吸着方式
  3. 副生成する二酸化炭素と水素の再利用が可能
    • 一酸化炭素発生装置では2 段階のPVSA 方式によって一酸化炭素を精製するが、各段階の副生ガスを有効利用できることが特長の一つ。1 段目のPVSA 部において副生成する二酸化炭素を原料として再利用する機構を設けることで、二酸化炭素の排出を防ぐことが可能となった。また、2段目のPVSA 部における副生ガスは高濃度の水素を含んでおり、所定の純度まで精製することで水素を併産し、有効利用することが可能。
6.環境負荷低減について

一酸化炭素発生装置は、二酸化炭素を有用な化学原料である一酸化炭素に変換可能な装置であり、産業分野における環境負荷の低減に貢献する。また、金属熱処理業界において一般的に使用されている吸熱型変性ガス(商標:RX ガス)を原料とした一酸化炭素発生プロセスと比較して、二酸化炭素排出量を約50%削減することができる。

7.10Nm3 /h 型初号機 装置外観

規 模:幅9.3m、奥行き4.3m、高さ6.2m (発生量に応じて異なる)