大陽日酸がALDプロセス向け高濃度過酸化水素ガス供給装置を販売

 大陽日酸とグループ会社のRASIRC Inc.(CEO:Jeffery SPIEGELMAN、本社:米国カリフォルニア州)は、高速で高品質な酸化膜ALD(Atomic Layer Deposition)プロセスを提供できる高濃度H2O2ガス供給装置(Peroxidizer®)を販売する。 

高濃度H2O2ガス供給装置「Peroxidizer®」
高濃度H2O2ガス供給装置
「Peroxidizer®」

 近年、半導体デバイスの微細化・構造複雑化に伴い、膜厚制御性や段差被覆性の良い原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)が広く活用され、例えば、High-k絶縁膜用Al2O3層やダブルパターニング用TiO2層は、水蒸気やオゾンガスを酸化剤とするALD法で形成されている。しかし、これらのプロセスでは、成膜速度(GPC:Growth Per Cycle)が遅い、成膜温度を下げると膜質が劣化する、という課題があった。

 この課題を解決するために、より効率的な酸化剤を使用することが考えられるが、酸化力が強い化合物として知られる過酸化水素は、一般的に30%水溶液の過酸化水素水として流通しているものの、一定濃度の過酸化水素蒸気として利用することは困難だった。

 大陽日酸が2012年に米国の子会社Matheson Tri-Gas, Inc.を通じて過半数の株式を取得したRASIRC社は、膜分離を基盤とした超高純度精製技術を応用して独自開発した、高濃度H2O2ガス供給装置(Peroxidizer®)を製造・販売している。本製品は、薬液エッチング等で使用される過酸化水素水溶液(30wt%)を原料とし、膜分離技術によって安全に気化・精製することで、最大50,000ppmの高濃度かつ高純度な過酸化水素ガスを供給できる装置。過酸化水素ガス50,000ppmを供給する際のキャリアガス流量は最大5L/minで、共存する水蒸気濃度は20%。

 今回、大陽日酸のALD実験設備で、Peroxidizer®を使用し、既存酸化剤(水蒸気およびオゾンガス)を使用する場合よりも、良質なAl2O3薄膜およびTiO2薄膜を高速成長させられることを実証した。TiO2-ALDについては、基板温度175℃の場合において、成膜速度約0.1nm/cycle(O3使用時比2倍)、フッ酸溶液によるエッチング速度0.1nm/min(O3使用時比1/20倍)だった。

 大陽日酸グループでは今後、酸化膜ALD向けにPeroxidizer®の拡販を進める。Al2O3-ALDの成果に関しては、2020年6月28日(日)~7月1日(水)にベルギーで開催される『20th International Conference on Atomic Layer Deposition (ALD 2020)』において発表される予定。