岩谷産業、常温常圧下でグリセリンをDHAに変換する触媒開発に成功

 岩谷産業は、大阪大学(工学研究科・今中信人教授、布谷直義助教)と共同で、グリセリンをジヒドロキシアセトン(以下、DHAと記載)に常温常圧下、短時間で変換することができる無機触媒の開発に成功し、特許を共同出願した。グリセリンから、温和な条件下、短時間で DHA を合成することが可能となることで、DHA 製造にかかる時間およびコストの大幅な削減が可能となる。

グリセリン→DHA への転換プロセス
グリセリン→DHA への転換プロセス

 近年、化石燃料の代替エネルギーとしてバイオディーゼルが注目されており、バイオディーゼル製造の際にはグリセリンが副生されるため、グリセリンが供給過剰となっている。その多くは、有効な用途がなく廃棄されているのが現状であり、グリセリンの有効活用化や高付加価値化が求められていた。

バイオディーゼルの製造プロセス
バイオディーゼルの製造プロセス

 通常グリセリンを DHA に変換するには、微生物による長時間の発酵プロセス、あるいは高温高圧下での反応といった特別な環境が必要となる。しかし、今回開発した、レアアースを含有する無機触媒を使用することにより、温和な条件下での反応で、高い DHA 生成能(グリセリン転化率 84%、DHA 収率 74%、DHA 選択率 88% 〔30℃、4 時間、大気開放下〕)と DHA 製造コストの削減が可能となった。

 グリセリンの 2 位ヒドロキシ基の酸化により得られる DHA は、サンレスタンニング(太陽光なしで日焼けしたような肌を作ること)をはじめとした化粧品や、医農薬中間原料として需要がある。
 岩谷産業は今回の触媒に使用されているレアアース等のレアメタル原料を広く取り扱っており、それら原料のアプリケーション開発を進める中で、大阪大学の持つ技術に着目した。
 今後、商業スケールでの生産に向けて、触媒製造メーカーや DHA 製造メーカーなどのパートナー企業を募り、事業化に向けて取り組む。