水素利活用の社会実装とサプライチェーン構築に向け「神戸・関西圏水素利活用協議会」を設立
岩谷産業、大林組、川崎汽船、川崎重工業、関西電力、神戸製鋼所、シェルジャパン、電源開発、丸紅、三菱パワー、ENEOSの計11社
岩谷産業は9月4日、水素の利活用の推進に取り組む事業者と共に、神戸・関西圏における水素利活用の社会実装と水素サプライチェーン構築を目的とする「神戸・関西圏水素利活用協議会」を設立した。設立時の会員は岩谷産業のほか、株式会社大林組、川崎汽船株式会社、川崎重工業株式会社、関西電力株式会社、株式会社神戸製鋼所、シェルジャパン株式会社、電源開発株式会社、丸紅株式会社、三菱パワー株式会社、ENEOS 株式会社の計11社。岩谷産業と丸紅が事務局/幹事を務める。
協議会設立の背景及び目的
関西圏は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業として実施されている、技術研究組合 CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)による水素サプライチェーン実証事業(神戸空港島の貯蔵・揚荷設備)や、神戸ポートアイランドにおける水素コージェネレーションシステム(水素CGS)実証プラント、 関西地区における水素発電導入可能性調査の実施に加え、民間各社が取り組む水素関連の事業拠点など、従来から世界に先駆けた水素供給及び水素利活用に関する取り組みを実施している最先端の地区となる。
社会実装に向けたそれらの取り組みを一層加速させ、国の示す『水素基本戦略』、『水素・燃料電池戦略ロードマップ』の実現を目指すため、関西圏で水素関連事業に取り組む事業者が集まり、本協議会を設立した。既存の実証事業で得た知見と本地域で活動する事業者が保有するリソースを融合させ、2030年の大規模水素利活用を見据えた事業モデルの検討を実施する。経済産業省資源エネルギー庁及びNEDO、水素CGSに協力団体として参画する神戸市は、オブザーバーとして本協議会に参加する。
本協議会の活動内容
協議会では、2030年の商用化に向けた大規模実装実現への道筋策定及び2025年頃の水素利活用商用化実証に関する具体的なスキーム構築を目指して、次の活動に取り組む。
- 大規模水素サプライチェーン構築の為に需給一体となって、関西圏における水素利活用の事業モデル検討を実施する。
- 関西圏における水素利活用モデルの社会実装に向けたロードマップを作成する。
- 社会実装における課題を明確にし、国や自治体へ政策提言を行う。
水素社会の実現には、事業者による技術の確立と水素調達コストの低減に加え、制度設計・規制改革も必要不可欠となる。事業者と国・行政が連携しながら、本協議会の活動を通じて各種課題を明確化し、政策提言を行うことで、2030年の大規模水素利活用を見据えた事業モデル検討を進める。
水素エネルギー社会実現への取り組み
岩谷産業は、1941年に水素の取り扱いを開始して以来、製造から輸送・貯蔵・供給・保 安まで一貫した全国ネットワークを築いてきた。また、水素のクリーンエネルギーとしての可能性にいち早く着目し、様々な技術やノウハウを蓄積するとともに、水素エネルギー社会の実現に向けた取り組みを進めてきた。
水素の大量消費時代を見据え、2006年に大阪府堺市に国内初めての液化水素製造プラン トを建設した事を皮切りに、現在では3拠点・6プラントを稼働させ、年間1億2000万㎥の液化水素製造能力を有する。2014年には、水素エネルギー社会の実現に向け、兵庫県尼崎市に国内初の商用水素ステーションを開所。現在では、国内37ヵ所、米国4ヵ所で運営を行っている。
また、製造段階から CO2を排出しない CO2フリー水素のサプライチェーン構築に向け て、複数の企業と様々なプロジェクトに参画する。豪州の褐炭を活用して水素を製造し、輸送、貯蔵、利用する仕組みを構築することを目的に設立された技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構「HySTRA」では、今年6月、神戸空港島に実証用の液化水素輸入基地が完成し、今秋より液化水素運搬船を用いた本格的な実証試験を開始する。また、福島県浪江町に建設した「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」では、今年2月より再生可能エネルギーを利用した水素製造を開始している。
岩谷産業では、本協議会への参画を通じ、これまで培ってきた知見やノウハウを活かし、水素エネルギー社会の早期実現に向けて、積極的に役割を果たすとしている。