世界で初めて民間プラントに三相同軸超電導ケーブルを敷設、送電時の電力損失を95%以上抑制

NEDO・昭和電線ケーブルシステム・BASFジャパンの3者、液体窒素でのケーブル冷却の検証

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、昭和電線ケーブルシステム(CS)、BASFジャパン(BASF)(以下3者)は、BASFジャパン戸塚工場(横浜市戸塚区)に全長約200mの三相同軸超電導ケーブルを敷設し、2020年11月8日から工場の省エネルギー化を目指す実証試験を開始した。実証試験は2021年9月末まで行い、液体窒素でのケーブル冷却の検証のほか運用コストの算出や安全性の確認を実施する。

BASFジャパン戸塚工場における超電導ケーブル敷設ルート (出典:国土交通省 国土地理院)

 この超電導ケーブルを30MW以上の大規模電力を使うプラントのケーブルに採用すると、従来のケーブルに比べ送電時の電力損失を95%以上抑制できる。これにより、年間2,000万円以上の電気料金の削減効果が見込める。民間工場の実系統に三相同軸超電導ケーブルを導入して行う実証試験は、世界初。

 金属を導体として用いる電線は、電気抵抗による発熱で送電ロスが発生する。これに対し”抵抗ゼロ”の超電導体は大幅な省エネルギー効果が期待できるが、超電導状態を維持するためには液体窒素などで冷却し続ける必要があり、実用化には低コストで運用する技術の確立が求められていた。
 3者は超電導ケーブルシステムの実用化に向けた実証事業※1に取り組み、その最終段階として、今回BASF戸塚工場に全長約200mの三相同軸超電導ケーブルの敷設を完了し、実証試験を開始した。実証試験にはCSが2017年にNEDOの助成事業で開発した三相同軸型の超電導ケーブルシステムを使用する。

※1 実用化に向けた実証事業

  • 事業: 戦略的省エネルギー技術革新プログラム/プラント内利用のための低コスト型三相同軸超電導ケーブルシステムの開発【助成事業】
  • 期間: 2017~2021年度(予定)
  • 助成先: 昭和電線ケーブルシステム株式会社
  • 助成先の委託先:エア・ウォーター株式会社、BASFジャパン株式会社、国立大学法人九州大学、国立大学法人東北大学
  • 参考:NEDOニュースリリース 2019年6月12日「世界初、民間プラントでの三相同軸超電導ケーブルの実証試験開始へ」https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101132.html

実証試験の特徴

【1】超電導ケーブルをシステムとして一体的に開発

(1)三相同軸超電導ケーブルの終端
 三相同軸型ケーブルは電気を流す超電導層を一本のケーブルの中に絶縁層を挟みつつ、同軸上にU相、V相、W相を流す三層を配置した構造。この各層に個別に電気を流すため、長手方向に3つの電流端子が配置される。従来型ケーブルの終端に比べて非常にコンパクトになった。

(2)中間接続
 超電導線材は銅やアルミニウムの線材に比べて長いものを安定して作ることが難しいため、長いケーブルが必要な場合には、中間接続を使って延長する。新たに開発した中間接続はコンパクトな形状に収め、プラント内の狭い場所に敷設する場合にも邪魔にならないよう配慮する。

中間接続

(3)冷却システム
 今回採用したサブクール式冷却システムは、エア・ウォーターとCSが共同開発した、超電導ケーブルシステムの構成機器の一つ。密閉容器に貯めた液体窒素を減圧する事によって、液体が気体に変わる際の蒸発熱を利用して、-200℃まで冷却するシステムとなる。プラントで大量に保有している液体窒素を冷媒として利用し、減圧するために排気した窒素ガスは回収してプラントに戻して利用するというコンセプトで設計されている。新規に開発した液体窒素ポンプは連続10,000時間稼働できるよう設計。

冷却システム

(4)データ検証のための監視盤
 超電導ケーブルは冷却して使うケーブルなので、冷却に使う液体窒素の状態を管理する必要がある。終端部分に圧力、温度、流量、液面レベルを計測するセンサーを配置し、これらのデータを一元的に監視するシステムが必要になり、緊急時には送電回路を切り替える機能も付加する。

データ検証のための監視盤

【2】屋外にあるケーブルと高低差がある環境での敷設形態は世界初

 試験を実施するBASFの工場は塗料を扱う化学プラントで、超電導ケーブルは配電変電所横の終端から高さ6mの専用ラックを通り、約200m先の受電設備近傍の終端まで敷設した。工場内の配管は、構内を走行するトラックに干渉しないように高さ5mのラック上に設置されている。工場の既設レイアウトを有効活用することによって、ケーブルを納める建物の建設、または地面を掘りケーブルを地下に通す工程を不要とした。
 超電導ケーブルを冷却する液体窒素は、超電導導体の中央のフォーマ内部を使った内部流路、超電導導体外側と内部コルゲート管の空間を使った外側流路を往路、復路として流れる。送電側終端から出ると直に6mの高さ(高低差5m)まで急角度で立ち上がり、200m先までケーブルの内部流路を流れる。その後、受電側終端(地上高1m)まで流れ落ちた後、終端内部の先端で折り返して外側流路内を使って冷却装置まで戻り、冷却されて送電側終端に戻る循環経路を流れる。屋外でこのような高低差を2度にわたり上下して、2カ所で曲がりが入る超電導ケーブルの敷設形態も民間プラントで行う実証試験と合わせて世界初となる。今回の実証試験の結果、複雑な工場レイアウトでもケーブルを敷設、液体窒素を流すめどが立ち、今後は屋外に敷設した超電導ケーブルの耐候性についても検証する。

敷設した超電導ケーブル 専用ラックへの立ち上がり水平部分

今後の予定

 NEDO、CS、BASFは本実証試験を通じて、民間のプラントでの敷設工法、運用管理方法、省エネルギー効果などを検証し、プラントインフラの更新時や再生可能エネルギー活用時の電力損失削減に向けた超電導ケーブルの早期の実用化を行い、超電導技術の社会普及につなげる。(プロジェクト期間:2017年6月~2021年9月予定)